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【リア’s レポート】SUPER GT Rd.6(鈴鹿)決勝

いよいよ決勝日を迎えた鈴鹿1000km。その朝は早く、チームスタッフだけでなく多くの観客が朝早くから鈴鹿サーキットを訪れ、夏のクライマックスとなる鈴鹿1000kmらしい夏空が広がりました。この日は4万5000人が来場するなど、例年よりはるかに多いSUPER GTファンに見守られての開催となりました。

午前中に行われたのは、恒例のピットウォーク。ロングレースを前に緊張の表情を見せるチームもいたなか、64号車EPSON Modulo NSX-GTのピットはリラックスしつつもほど良い緊張感を漂わせていました。前日、時間の許すかぎり作業に徹したチームメカニックは、賑わうピットウォークを横目に最後の戦いに向かうマシンを心なしかいつもより入念にチェックする姿も。ピットウォークはサイン会・撮影に夢中になりがちですが、その背後のチームスタッフのふとした真剣な表情を間近で見ることができる時間でもあり、モータースポーツがチームスポーツである事を改めて感じる事ができます。

そして10時55分より、決勝前の唯一の走行時間である20分間のウォームアップ走行が開始。64号車EPSON Modulo NSX-GTを駆るベルトラン・バゲット選手はセッション中盤に5番手のタイムを記録すると、数周後にはトップタイムを叩き出すなど、仕上がりの良さを感じさせます。セッション終了直前に、予選トップの24号車GT-Rにタイムを更新されてしまいますが、総合2番手で走行時間を終えました。いっぽう100号車RAYBRIG NSX-GTは14番手でセッション終了となりました。

気温30度、路温は47度。夏らしい陽気にサーキットが包まれ、観客の興奮も最高潮に高まった12時30分、1000kmにわたる173周のレースがスタートしました。スタート直後の1コーナーでホールショットを奪ったのは、ポールポジションからスタートした24号車GT-R。4番グリッドからスタートした64号車EPSON Modulo NSX-GTのベルトラン・バゲット選手は、前方を行くマシンを見事にオーバーテイク、3番手に浮上します。

鈴鹿1000kmは5回のドライバー交代が義務付けられており、最低6スティントとなります。バゲット選手はペースを緩めず、激しい2番手争いを繰り広げるも惜しくも届かず、3位で松浦選手へ最初のドライバー交代が行われました。100号車の伊沢選手も、スタートポジションの6番手をキープし、山本尚貴選手へとステアリングを託します。

GT300の車両クラッシュにより、途中セーフティカーが導入されるなどアクシデントも見られましたが、64号車EPSON Modulo NSX-GT、100号車共に無事に2スティント目を完了。64号車EPSON Modulo NSX-GTは2度目のスティントなるバゲット選手が、ピットアウトの際に前方チームより早くコースへ復帰する事に成功。NAKAJIMA RACINGの優れたチームワークが順位を上げる大きな一手となりました。

レースも半分を過ぎた4スティント目、2度目のセーフティカーが導入されるクラッシュが発生。再スタートとなった後、サーキットの目を釘付けにする走りを見せたのは、100号車の山本尚貴選手でした。8番手から4番手までポジションを上げ、ついには3位の64号車の背後まで迫ってきます。そして両チームともにピットイン。どちらもスタートドライバーが3度目の走行に挑みます。このときも素早いピットワークを見せたのは64号車でした。チームはピットワークでベルトラン・バゲット選手を先行させることに成功し、2番手でコースへ復帰。100号車は5番手で走行を重ねました。

順調にこのままチェッカーに向かうと思われたレース終盤の147周目、トップを走行していた17号車KEIHIN NSX-GTがマシントラブルによりコース上にマシンを止めてしまいます。それにより64号車EPSON Modulo NSX-GTがトップに浮上。100号車RAYBRIG NSX-GTは5番手でマシンを受け取った山本選手の猛プッシュにより、3番手争いする位置までポジションアップ。1号車LC500と長いバトルを繰り広げ、根気強くプッシュし続けた100号車が3番手へと順位を上げます。

2度にわたってセーフティカーが導入されたことより、レース規定周回数よりも先に終了時間が迫った鈴鹿1000kmレース。18:28にファイナルラップが宣言され、約6時間に渡る接戦がチェッカーを迎えました。最後の鈴鹿1000kmで最初にチェッカーフラッグを受けたのは、完璧なチームワークを見せた64号車EPSON Modulo NSX-GT! 3位は猛追撃でサーキットを魅了した100号車RAYBRIG NSX-GTとなりました。

EPSON Modulo NSX-GTを走らせるNAKAJIMA RACINGとしては、なんと10年ぶりの優勝。日本でのキャリア4シーズン目を迎えたバゲット選手はSUPER GT初優勝となり、今季よりチームに加入した松浦孝亮選手にとっては、自身2度目のSUPER GT優勝を飾りました。

 

表彰台をホンダ2チームが飾り、チームスタッフやファンが笑顔と涙で見上げた表彰台。100号車の山本選手はレース中の猛追撃により、チェッカー後に体調不良に見舞われてしまい、最初はその姿を見ることができませんでした。しかし「最後の鈴鹿1000kmの表彰台、ファンと共に喜びたい」と表彰台に姿を表すと、サーキット中が山本選手を祝福・歓迎する拍手でいっぱいになりました。

 

「今季からNAKAJIMA RACINGに移籍になると決まった時、責任のあるポジションである事に緊張と不安を感じていました。」と松浦選手。しかし、久しぶりの優勝をチームに、そして伝統の鈴鹿1000kmでの表彰台をNAKAJIMA RACINGとして上がれた事に誇りを感じると、涙と笑顔の混じる表情で語る姿を見せました。

「NAKAJIMA RACINGのスタッフは、僕にとって日本の家族でもある」と語るベルトラン・バゲット選手は、自身初となる日本での優勝を喜ぶと共に「チームは短い間にトラブルを解決してくれるなど、レース中もベストなチームワークを見せて戦ってくれたので、とても感謝しています」と、モータースポーツがチームワークである事を改めて伝えてくれました。さらに「このレースはラッキーな結果ではなく、チームが勝ち取るべくして勝ち取った優勝。これからもベストなレースをしていきたい」と、今後に向けての意欲を語ってくれました。

46度目の開催で幕を閉じた「鈴鹿1000kmレース」。数々のドラマ、笑顔や涙、そしてなによりモータースポーツの楽しさを伝えてくれた伝統のレースは、2台のNSX-GTが表彰台を飾り幕を閉じました。そして最後のウィナーとして、今後のモータースポーツの歴史に大きく刻まれる事となった64号車Epson Modulo NSX-GTとNAKAJIMA RACING。これからも中嶋 悟監督を筆頭に、レースの楽しさや面白さ、そして時には厳しさを世に伝えてくれる素晴らしいチームとして活躍してくれることでしょう。

今年のSUPER GTシリーズも、残すは唯一の海外レースとなるタイ、そして最終戦のもてぎ大会のみ。国内モータースポーツ一の動員数を誇る、日本を代表するレース「SUPER GT」。 残り2戦もファンを魅了する数々のバトルや、モータースポーツの魅力を届けてくれるレースとなるでしょう。次戦、灼熱のタイの表彰台で一番太陽に近い所に上るのは、一体どのチームなのでしょうか。

2017 SUPER GT 第6戦(鈴鹿サーキット)決勝結果
順位 No. マシン ドライバー 周回数 タイム/差
1位 #64 Epson Modulo NSX-GT ベルトラン・バゲット/松浦孝亮
2位 #23 MOTUL AUTECH GT-R 松田次生/R.クインタレッリ
3位 #100 RAYBRIG NSX-GT 山本尚貴/伊沢拓也
4位 #19 WedsSport ADVAN LC500 関口雄飛/国本雄資/小林可夢偉
5位 #24 フォーラムエンジニアリングADVAN GT-R 佐々木大樹/J.P.デ・オリベイラ
6位 #37 KeePer TOM’S LC500 平川亮/N.キャシディ
8位 #8 ARTA NSX-GT 野尻智紀/小林崇志
12位 #16 MOTUL MUGEN NSX-GT 武藤英紀/中嶋大祐/ジェンソン・バトン
15位 #17 KEIHIN NSX-GT 塚越広大/小暮卓史

(TEXT:Leah MIZUMURA 水村リア)