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電動モデルが加わって、PCXシリーズのラインナップ完成!

2018年4月に「PCX」が3代目へと進化を果たし、9月に量産2輪車世界初となるハイブリッドシステムを搭載した「PCX HYBRID」が登場。そして11月30日(金)、このPCXシリーズにピュアEVモデルの「PCX ELECTRIC」が追加された。これにより、3つの駆動方式によるPCXシリーズのラインナップが完成となる。

PCXは125ccスクーターでありながら、ひとクラス上の上質さを持った「パーソナルコンフォートサルーン」というコンセプトで2010年に誕生。おもに”通勤快速”マシンとして、人気を博してきている。そして今年、3世代めへとフルモデルチェンジされたPCXは、基本骨格を見直しスタイリングも刷新して生まれ変わった。

当初から125cc/150ccという2つの排気量に加え、PCX HYBRID、PCX ELECTRICがラインナップに加わることは発表されていたが、その最後のモデルが登場だ。PCX ELECTRICは、ホンダにとって1994年3月に発表した「CUV-ES」、2010年4月に発表した「EV-neo」に続く3台目の電動スクーターだが、今回初めて原付二種EVとなる(先の2台は原付一種)。

EVシステムは、シート下にバッテリー、そしてスイングアームの後端にモーターを置く形となる。バッテリースペースの確保とリアタイヤの稼働スペースを確保するために、ホイールベースは標準車およびハイブリッド車の1315mmに対し、1380mmと65mm延長されている。バッテリースペースとなっているため、シート下にヘルメットの収納はできず、ヘルメットハンガーで対応。ただし小物の収納スペースは確保されている。

バッテリーは可搬型のもので「Honda Mobile Power Pack」と名付けられている。このパワーパックは1本あたり約1kWhの容量を持ち、その質量は約10kg。これを2本搭載して走行する。2本のパワーパックは1個ずつ使用していくのではなく、2個を直列で接続、1本の電圧は48Vだが、96Vで走行する(モーター出力は最大4.2kWを発揮)。つまり、2個ともに車体に装備しなければ走行はできない。

そしてバッテリーは可搬式だが、車載充電器も搭載している。駐車スペース近くに100Vのコンセントがあれば、車体にバッテリーパックを入れたまま、装備してある充電プラグ(コード長2m)で充電が可能。近くにコンセントが無ければ、パワーパックを下ろして、オプションの専用充電器で室内でも充電ができるということになる。


充電時間は、全くのゼロの状態から満充電まで、車載充電器で充電した場合で約6時間、専用充電器の場合は約4時間/本となる。ちなみに車載充電器からの充電なら2つのバッテリーパックを並列に最適充電を行うが、取り外して充電する場合は、1本だけ充電して使用することはお勧めできない。

駆動するIPMモーターは減速機を介さないダイレクト駆動。冷却対策等への付加物をなくし自然冷却としているシンプルな構造となる。走り出しはEVらしい出足の良さで、回生エネルギーの回収もないので、アクセルの微妙な操作ということとも無縁。アクセルを開ければ開けた分だけ加速していくし、都心部での通勤のような使用用途にぴったりのキビキビ感がある。

もちろん音と振動がない分、走りの上質さはPCXシリーズの中でトップとなる。PCX ELECTRICのコンセプトは「e-Comfort Saloon」。PCX全体のコンセプトが「Personal Comfort Saloon」であるがその延長線上で、快適な移動体をイメージしているのだ。

EVとしての性能だが、1充電あたりの航続距離は、41km(60km/h定地燃費走行)となる。少々物足りない数値のようにも見えるが、走行性能はPCXの他のモデルにも引けを取らないきびきびした走行が可能。また、発進・加速・停止といったパターンも取り込み使用実態に近い燃費表示測定値であるWMTCモードでは航続距離は50km以上であるという。

外装では、PCX ELECTRIC専用となるハガータイプのリアフェンダーを採用。ボディカラーはエレクトリック専用色「パールグレアホワイト」のみの設定となる。

アクセントカラーにはキャンディブルーが用いられているほか、シグネチャーランプの裏側のブラケットやテールランプのインナーレンズをブルーとしている。灯火類はすべてLEDを採用。ABS(フロントのみ)は標準装備となる。

このPCX ELECTRIC、残念ながら法人企業、個人事業主、官公庁に限定したリース専用車。その走行性能や利便性、もちろん優れた環境性能は次世代の主流となることを強く感じさせるもので、ひとりでも多くの人が体験できることを願ってやまない。

(photo&text:Yoshiaki AOYAMA 青山義明)