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【18SEMA】CORVETTE×S2000、日米のFRスポーツを合体させると…

タマゴが先かニワトリが先か、あるいは、あちらを立てればこちらが立たず、なんて言葉を連想してしまいそうなR1 CONCEPTSのS2000。ド迫力のオーバーフェンダーによるワイドボディ化もインパクト大だが、なんといっても注目はエンジンルーム。本来は2リッター4気筒のF20Cが収まるべきスペースには、5.7リッターV型8気筒のLS1が搭載されている。

このS2000を出展したR1 CONCEPTSは、本来ブレーキシステムを手がけるメーカー。強力なエンジンパワーを手に入れたらウチのような強力なブレーキを組み合わせるべき…なのか、あるいは、ウチのブレーキならこれだけのエンジンを積んでも大丈夫…というメッセージなのかはわからないが、ボディよりもブレーキよりも、エンジンに注目が集まっていた1台だ。

V8とはいえエンジン全長がコンパクトなLS1ユニットは、F20Cと同様にフロント車軸の後方にマウントできる

アメリカンマッスルの象徴でもあるV8エンジンだが、年代やメーカーによって様々な種類が存在しており、LS1はゼネラルモータースが開発した第三世代のスモールブロック・ユニット。同社初のオールアルミ製OHV・V8で、1997年に登場したシボレー・コルベット(C5)に搭載されてデビューした。

OHV・V8の特徴はエンジン全長が短く、そのうえヘッドまわりも部品点数が少ないため非常にコンパクトなこと。もちろん非常にタフなユニットでもあり、アメリカではエンジンスワップ・チューンの際には人気が高い。S2000だけでなくRX-7(FD3S)など、縦置きエンジン搭載車に換装されるケースが多い。

エンジンルーム前方に備わるシリアルプレート。初期型AP1-100ということがわかる。プレートが示すように右ハンドルの日本仕様がベースだ

他車両から中古ユニットを移植するだけでなく、メーカーが新品のクレートモーターとして販売されているなど、エンジンの入手が容易ということも、エンジンスワップ・チューンが珍しくない理由だろう。搭載にあたっては車種ごとにキット化されているケースも多く、S2000へのLS1スワップキットはImport Muscleというメーカーから発売されている。エンジン&トランスミッションは別だが、1649.99ドル(約19万円)という価格は意外にも現実的だ。

C5コルベットが搭載するLS1ユニットは最高出力350PS/5200rpm、最大トルク49.7kg-m/4500rpmを発揮。初期型S2000のF20Cは最高出力250PS/8300rpm、最大トルク22.2kg-m/7500rpmであり、比べれば違いは歴然。

なおC5コルベットにもZ51やZ06などMTモデルは存在したが、トランスミッションを車体後方に配置する”トランスアクスル”方式を採用していたため、エンジン換装の際はシボレー・カマロなどに搭載されたT-56型6速マニュアルミッションと組み合わせるのが一般的だ。

ハードトップは純正形状タイプを装着。通りがかる人の多くが写真を撮っていたのは、その迫力あるボディだけが理由ではないだろう

LS1ユニットは、その後LS2そしてLS3へと進化を遂げるが、基本的にエンジンブロックは共通。そのためエンジンスワップもほぼ同様に行えるが、このR1 CONCEPTSのS2000はあえてLS1をチョイス。それはベース車両のS2000が初期モデルのAP1-100(1999年式)とあって、同時代のV8ユニットを組み合わせたのかもしれない。

そのほか興味深いのは、右ハンドル・日本仕様のS2000をベース車両としていることだ。左右対称のV8エンジンとはいえ、C5コルベットには左ハンドル車しか存在していない。そのためステアリングロッドやブレーキマスターシリンダーなどの配置を考えれば、左ハンドルのS2000をベース車としたほうが効率は良さそうだが、あえて右ハンドルを選択しているのは日本仕様への憧れゆえだろうか。

(photo&text:Kentaro SABASHI 佐橋健太郎)