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学生フォーミュラ・タイ国内大会、Moduloと共に挑んだプリンス・オブ・ソンクラー大学は3位入賞!

タイ・バンコク北部にあるパトゥムターニー・スピードウェイにおいて、1月18日(金)から20日(日)までの3日間、タイ国内の学生フォーミュラ大会「TSAE Auto Challenge 2019 Student Formula」が開催された。

学生自作のフォーミュラタイプのレーシングカーによる競技会である学生フォーミュラは、アメリカ、イギリス、オーストラリアなど世界各国でほぼ同一レギュレーションのもと開催されている。その審査内容は、車両の設計・製作技術はもちろんのこと、その車両製作の企画から、出来上がったレーシングカーの実際の走行評価まで、数多くの審査によって評価される。

そんな学生フォーミュラのタイ国内大会は、毎年1月に開催されている。2019年は15回目の開催となり、今回もICV(ガソリンエンジンクラス)31チーム、EV(電気自動車クラス)6チームの全37台が参戦した。

初代NSXの元テストドライバーであり、その後はホンダアクセスにてModuloブランドの走りを磨き上げた玉村 誠氏が技術的アドバイザーとして協力、Moduloもサポートを行うタイの「Prince of Songkla University(プリンス・オブ・ソンクラー大学)」は、カーナンバー8 Lookprabida Xのチーム名で参戦。悲願の優勝を目指して大会に挑んだ。

現在つけているカーナンバー8は、昨年の同大会の順位によって割り当てられるもの。つまり自車のカーナンバーを上回る成績は最低限の必達目標であり、一気に頂点を目指してチームは車両を仕上げてきた。

プリンス・オブ・ソンクラー大学の車両「No.8 Lookprabida X」は、アドバイザーである玉村氏の「クルマに対する考え方」が反映された車両に大きく進化してきた。そしてそれは、Moduloブランドのサスペンションとも同じだという。

指導教員のワチャリー先生はエンジン制御のスペシャリスト。マシンには奥様がデザインした自身の似顔絵が貼られる

じつは玉村氏が参画する以前は、チームが目標とするターゲットも、教えてくれる人も限られたなかで試行錯誤をしていた。もちろん大学のチームであるため、指導を担当する教員が存在する。その指導教員がワチャリー先生で、専門はエンジンのマネージメントである。

そこでエンジン全般や学校との交渉、学生たちを束ねてのチームビルディングはワチャリー先生が担当し、玉村氏はマシンのハンドリングやドライビング技術といった分野からサポートを行ってきた。

初代NSXの開発ドライバーを務め、その後はModuloサスの立ち上げに尽力した玉村 誠氏がアドバイザーとして参画している

そして、その丁寧なアドバイスや論理的な思考を備える訓練、何よりワチャリー先生と玉村氏の『このチームを強くしたい、勝たせてあげたい』という気持ちが生徒たちの情熱を加速させ、また様々な外部サポートも呼ぶこととなり、チームは着実に上昇カーブを描いてきた。

今回の大会に向けて目指してきたのは、初代NSXやModuloで展開されてきたような、フロントがしっかりしていて、リアが多少不安定になってもコントロールできる、乗りやすいクルマとのこと。

「マシンを仕上げていくにあたり、大切なのは必ずデータ取りをすること」

学生たちに根付くまで何度も指導してきたこともあり、学生が入れ替わってもその思想は車両データとともに受け継がれ、マシンは年々進化してきた。すでにハードウェアは一定の水準にまで仕上がってきており、これからはソフト、つまりドライバー(の技術)をどう育てていくか、という段階だという。

もちろんマシン製作だけでなく、参画当初は学生たちの気持ちがバラバラだったチームはまとまりを持ち、挨拶やピットまわりの掃除など気配りができるようになってきたと、ワチャリー先生と玉村氏は口を揃える。チームスタッフが一緒になって、苦労しながらも困難を克服するという経験は、のちのち彼らの人生のどこかで活きてくるだろう、とも話してくれた。

エンデュランス走行中、チームメンバーがフェンスから大きな声援を送る

今回の大会には、このプリンス・オブ・ソンクラー大学を卒業したOBOGが何人も駆けつけていた。今大会に参加している大学のなかで、一番多いのではというほど。これはチームに良い伝統が生まれつつある証拠だろう。『卒業していった生徒たちが、ゆくゆくは日本の自動車関連企業に入ってエンジニアとして活躍してくれるのが夢だよね』と玉村氏は語る。

さてプリンス・オブ・ソンクラー大学は、本大会においては大きなトラブルもなく、順調に各審査をクリア。そして最終日の午前中にはすべての審査を終え、あとは結果を待つのみという状況だった。

デザイン(設計)審査は上位5チームのみによって争われるファイナルに進出、全体2位となった

その各審査の結果は? というと、コストは2位(48点)、上位5チームのファイナルに進出したデザイン(設計)審査も2位、プレゼンテーションは13位(66.284点)と点数が伸びなかったものの、静的部門全体ではトップとなった。

動的審査でも、0→75mの加速性能を競う「アクセラレーション」は3位(68.46点)、8の字コースのコーナリング性能を競う「スキッドパッド」は8位(45.40点)、直線・ターン・スラロームのコース走行性能を競う「オートクロス」は2位(123.74点)と安定して上位の成績を記録。

そして最終日に行なわれた、コースを約20Km(11周)走行して走行性能や耐久性を競う「エンデュランス」が3位となり、総合で2位にあと1ポイント足りず、僅差の3位で今年の大会を終えた。

2018−2019年の活動は終了。また、2019−2020年の活動があらたにスタートすることとなる。彼らの次の目標は、今年9月の日本大会での過去最高位、そして2020年1月に行われるタイ国内大会の優勝となるだろう。Moduloのフィロソフィを受け継ぐ、若きエンジニア候補生たちの活躍に期待したい。

チームを支える女性メンバー。彼女たちのサポートなくして今回の成績は考えられないほど貢献度は高かった

(photo&text:Yoshiaki AOYAMA 青山義明、Edit:Kentaro SABASHI 佐橋健太郎)