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2019インディカー開幕戦はチーム・ペンスキーが席巻!

予選トップはウィル・パワー、レースでの優勝はジョセフ・ニューガーデン

去年までアメリカの電話会社ベライゾンが冠スポンサーだったインディカーシリーズだが、今年からは日本のNTTが取って代わった。NTTデータというアメリカの会社がチップ・ガナッシ・レーシングのスポンサーをして来ているが、シリーズには本体のNTTが乗り出した。ファン、メディア、チームに向けてどんなサポートを今後展開して行くのか、期待したい。

今年もシリーズは全17戦で争われ、開幕戦の舞台はもう恒例となっているセントピーターズバーグだ。半島状のフロリダ州の西側、海沿いの小さなリゾートシティの空港とストリートがサーキットになる。

今シーズンは新しいチームがひとつ加わり(昨年出場していた中から1チームが開幕戦は欠席したが)、合計24台のインディカーがエントリーした。今年もシャシーはダラーラのワンメイク。エンジンはホンダとシボレーの2種があり、ユーザーはホンダ14台、シボレー10台だ。

昨シーズンはホンダが11勝、シボレーが6勝でホンダがマニュファクチャラー・タイトルを獲得した。ホンダはストリートレースの5レースすべてで勝っており、2年連続優勝中のセントピーターズバーグで優位にあると思われていた。しかし、予選最速となってポールポジションからスタートする権利を手に入れたのは2014年チャンピオンのウィル・パワー(チーム・ペンスキー/シボレー)だった。

続く予選2位も、彼のチームメイトで2017年チャンピオンのジョセフ・ニューガーデン。しかし、予選のファイナルラウンドに進んだ6人のうち4人はホンダユーザー。トップ10を見てもホンダ勢が8人いた。

2019年の開幕戦でポールポジションを獲得したウィル・パワー(チーム・ペンスキー)

予選1-2位を獲得したチーム・ペンスキーのドライバーたちは、「シボレーがオフの間に頑張ってエンジンが扱い易くなっている」と話していた。しかし、実際に彼らの予選での速さを支えていたのはソフトコンパウンドのレッドタイヤでのマシンセッティングにあった。

ホンダチームは暑いコンディションでレッドタイヤから性能をフルに出すことで苦労しており、5回チャンピオンになっているスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)は予選4位となったが、「予選中に3度もセッティングを変えたが、まだ納得の行くレベルに到達していない」と不満を漏らし、予選で5位となった2012年チャンピオンのライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポート/ホンダ)も「レッドタイヤ、特にユーズド(数周で使用した)での走りがうまく行かいなかった」と悔しがった。

開幕戦を制したのはジョセフ・ニューガーデン。2位にはスコット・ディクソン。ウィル・パワーは3位でフィニッシュした

レースでも勝敗を分けたのはタイヤマネジメントだった。勝ったのはニューガーデンで、彼はライバル全員が新品レッドでスターティンググリッドに着く中、ただ一人ユーズドレッドでスタート。レースの中盤以降にトップに立つと新品レッドを投入し、そのグリップ力を生かしてリードを広げ、連続周回でのペースダウンも小さく抑えてゴールへと逃げ切った。2人のチームメイトたちさえも出し抜いての見事な勝利だった。

レースが進めばタイヤのラバーが乗って路面のグリップが高まること、時間の経過とともに路面温度が若干だが下がることで、スマートに走らせれば・・・という条件はつくが、レッドはレース中でも問題ないレベルの耐久性を発揮すると彼らは読み、それは的中していた。チーム・ペンスキーはレッドのパフォーマンスを引き出すセッティングや走りで何かライバルたちがまだ知らない何かを掴んでいる。そのアドバンテージが今回は予選、決勝で生きていた。

ホンダ勢で最上位となる2位表彰台を獲得したスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ)

それでも、ポールスタートだったパワーが作戦ミスで3位に下がったのに対し、ディクソンは4位スタートから2ポジションアップの2位フィニッシュ。今年も開幕戦からさすがの戦いぶりを見せた。

そして、4位にはルーキーのフェリックス・ローゼンクビスト(チップ・ガナッシ・レーシング/ホンダ)が入った。スウェーデン出身の27歳は、ビッグチームからのデビューでもプレッシャーを感じさせず予選3位に食い込み、レースでも見事なパスを見せてトップを走るなど目覚ましいパフォーマンスを披露した。彼のマシンをスポンサーしているのがNTTデータだ。

ハーディング・スタインブレナー・レーシングからデビュー戦に挑んだコルトン・ハータ

ローゼンクビストの他にも、コルトン・ハータ(ハーディング・スタインブレナー・レーシング)、サンティーノ・フェルッチ(デイル・コイン・レーシング/ホンダ)、次戦から出場予定のパト・オーワード(カーリン/シボレー)など、今年は大活躍が期待できる新人が多くいる。

インディカー10年目を迎える佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング/ホンダ)は、予選は速いラップを記録した直後にイエローを出したためにベストラップが抹消になって予選20位。そこから8番手までポジションを上げ、そのままゴールできるかと思われたが、ギヤボックスにトラブルが発生したリタイアを喫した。結果は19位。何かが冷却ダクトを塞ぎ、ギヤボックスをコントロールする油圧システムがオーバーヒートしてしまったようだ。

「何台かをパスして8番手まで大きくポジションアップすることができた。チームの戦い方は良かった。セッティングのレベルも悪くなかった。トラブルによるリタイアは本当に残念だ」と琢磨は話した。

第2戦の舞台は、F1アメリカGPが開催されるコースでもある、サーキット・オブ・ジ・アメリカス(COTA)。セントピーターズバーグとはまったく異なるキャラクターのロードコースではどんな戦いが繰り広げられるのか、楽しみだ。

(text:Hiko AMANO 天野雅彦)
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