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【名車図鑑】車中泊時代を先取り!? S-MXは全席フルフラットを可能にしたシートアレンジが特徴の独創ミニバン

「登場するのが早すぎた」という枕詞が似合うホンダ車は数多くあるが、世界各国のメーカーが多様なクロスオーバーモデルを販売している現在の状況を考えると、このS-MXはその筆頭と言ってもいい。形状こそトールワゴンだが、車両コンセプトは若者層にターゲットを絞ったクーペライクな新世代ピープルムーバーであった。

大ヒットとなった初代ステップワゴンの全長を大胆に切り詰め、3950mmという全長に収めたコンパクトバンがS-MXだ。兄貴分のステップワゴンと同様、右側にひとつ・左側にふたつという左右非対称ドアを備え、室内には前後ともベンチタイプの2列シートが組み合わされていた。

右1枚、左2枚のドアを持つ。兄貴分のステップワゴンがリアスライドドアを採用するのに対し、S-MXではヒンジ式を採用。リアはプライバシーガラスとなっており、外部から内側が見えにくい構造となっていた

現行モデルでもっとも近い存在なのはフリードだが、フリードの全長は4265mmだから、S-MXは315mmも短い。そのためラゲッジスペースははっきりと狭いが、リアシートはフラットにするだけでなく前方に折り畳むこともできるため、広大な荷室空間を作り出すことが可能だった。

遊びだけでなく、しっかりとした実用性も兼ね備えていたS-MXだが、特徴的なのは前後2列のベンチシートはフルフラットにすることも可能だったこと。近年はアウトドアブームもあり「車中泊」に注目が集まっているが、S-MXが発売された当時は今ほどメジャーではなかった。

S-MXのキャラクターを決定づけたフルフラットシート。これが想起させるものは男女カップルがイチャイチャすることであり、ヤング層にターゲットを絞ったキャッチコピーが踊った広告ビジュアルも、その印象を強めていた

前後シートそれぞれにスライド機構が備わっており、バックレストを倒すとほぼフラットな空間を作り出すことができた。またリアシートは2名乗員で、さらに右側ドアが存在しないため、室内に大型アームレストが備わる。まるでBOXティッシュを置くことを求めているかのようなスペース設計も話題となった。

コックピットまわりはステアリングコラムからシフトレバーが伸びるコラム式ATを採用。そのため前席乗員のひざ周りスペースなどにも余裕がある。機能的にレイアウトされたインパネは、純正ナビを装着しなければ小物入れスペースが用意される。グローブボックスの蓋を開ければ軽食などに便利なトレイが出現する。

エンジンは2リッター直列4気筒DOHCを搭載。中低速域での力強さを重視した仕様となっており、短いボディ全長も相まって走りは軽快

1996年の登場以来、細かなマイナーチェンジが毎年行われていたS-MXだが、1999年にはヘッドライトが涙目型に変更される。同時に標準仕様車はフロントのベンチシートが一般的な左右セパレートタイプに、リアシートは3人乗員となり一般的なミニバンに近づいた。その後も特別仕様車の設定などが行われ、2002年8月に販売を終了した。

1999年のマイナーチェンジでヘッドライト形状を変更。インテリアではセパレートシートを採用するなど独自性が薄れてしまった

現行モデルでいえばフリードが近い存在ではあるけれど、「若さゆえのチャンチャさ」を許容するようなS-MXのコンセプトは唯一無二。残念ながら1代限りでモデルライフは終了してしまったが、ホンダのミニバン創世記における独創的なモデルとして、記憶に残り続ける1台といえる。

(text:Kentaro SABASHI 佐橋健太郎)