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インディカー第11戦アイオワ、佐藤琢磨が今季初の表彰台!

2018年インディカー・シリーズ第11戦、アイオワ・コーン300は見応えある300周となった。今年は暑さもほどほどとなった週末、アイオワ・スピードウェイに集まった多くのファンの前で、22台のインディカーは抜きつ抜かれつのバトルを延々と繰り広げた。

同じショートオーバルの範疇に入るコースでも、第2戦が行われたフェニックスが全長1マイルでかなりフラットなのに対し、アイオワは、シリーズ最短となる全長0.894マイルで、バンクは最大14度もつけられている。

今年もインディカーシリーズにはショートオーバルが3戦スケジュールされている。今年もその最後はゲイトウェイ ・モータースポーツ・パーク。全長1.25マイルでバンクは最大11度。こちらでのレースもお楽しみに。

さらにアイオワは、『そろそろ再舗装した方が……』と言いたくなるような路面のバンピーさも特徴。常にマシンをコントロールし続ける必要があるため、ドライバーは休むヒマがない。

ポールポジションを獲得したのはウィル・パワー(チーム・ペンスキー)

そんなアイオワの予選では、チーム・ペンスキーが3戦連続となるフロントロウ独占。今回はウィル・パワーがポールポジションを獲得し、ジョセフ・ニューガーデンが予選2位を獲得。

しかし決勝レースでは同じチーム・ペンスキーのジョセフ・ニューガーデンが他を寄せ付けない速さでレース前半は逃げまくり、ペンスキー勢では対照的にウィル・パワーもシモン・パジェノーもハンドリングが悪く苦戦した。

ジョセフ・ニューガーデンを追ったのは、予選11位だったジェイムズ・ヒンチクリフ(シュミット・ピーターソン・モータースポーツ)、スペンサー・ピゴット(エド・カーペンター・レーシング)、佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)だった。

#6 ロバート・ウィッケンズと、#30 佐藤琢磨が前を行くジョセフ・ニューガーデンを追う

ヒンチクリフはスタートからの40周で2番手まで浮上。ピゴットは予選は18位だったが、レースの中盤に次々とライバルをパスしてポジションアップした。予選10位だった琢磨は、1回目のピットストップを終えた後の80周経過時点で6番手まで順位をゲイン。210周を超えたところではヒンチクリフもパスして2番手となり、ニューガーデンを追った。

225周目、琢磨はトップに立った。しかしこれはピットタイミングを誰よりも遅らせた作戦によるもの3周前にヒンチクリフとピゴットはピット。1周前にはニューガーデンはピットしたことで琢磨にトップの座が転がり込んで来た。

琢磨はリードラップを1周記録した直後にピット。そしてコースに戻ると……5番手に順位が下がってしまった。摩耗したタイヤで走り続け、トラフィックに捕まって大きなタイムロスをしたためだ。ヒンチクリフたちと同じタイミングでピットしていたら、2番手を維持できていたかもしれない。

ヒンチクリフがニューガーデンを捉えたのは256周目。レース前半にトップ5以外はすべて周回遅れにした圧倒的スピードはゴールを前にしたニューガーデンにはなくなっていた。逆に、最後のピットストップの後に一番速いマシンを手にしていたのがヒンチクリフだった。

ヒンチクリフ、ニューガーデン、ピゴット、ロバート・ウィッケンズ(シュミット・ピーターソン・モータースポーツ)、そして琢磨という順で最後のバトルは行われ、ウィッケンズがピゴットをパスして3位へ浮上。琢磨はそのピゴットの背後にジワリジワリと迫って行った。

エド・カーペンター・レーシングの#20 エド・カーペンターと#21 スペンサー・ピゴット

しかし、ピゴットのチームメイト、エド・カーペンター(エド・カーペンター・レーシング)が琢磨の目の前でスピン! ギリギリでクラッシュは避けた琢磨だったが、小さな接触はあり、カーペンターのフロント・ウィングの一部が吹き飛んだ。もちろん、これでフルコースコーションが発生。

ゴールまで残り6周。コースの清掃が急がれ、残り3周でピットがオープンに。ここで2番手、3番手のニューガーデンとウィッケンズがタイヤ交換のためピットイン。ヒンチクリフはトップをキープし、4、5番手だったピゴットと琢磨がそれぞれ2、3番手にポジションを上げた。

新品タイヤのグリップの高さを武器に、リスタート後に大逆転を目論んだニューガーデンとウィッケンズだったが、その作戦は大失敗。レースが再開されることはなく、イエローフラッグとチェッカーフラッグが一緒に振られ、ジェイムズ・ヒンチクリフが今季初優勝を飾った。

表彰台ではスポンサーのピザをパクリ。これもアイオワの恒例だ

スペンサー・ピゴットは2位となり、インディカー・シリーズにおけるキャリア初の表彰台。佐藤琢磨は今季初の表彰台となる3位という結果になった。最後のピットインにより順位を下げたニューガーデンは4位、ウィッケンズは5位。 

今年のインディ500ではまさかの予選落ちとなったヒンチクリフだったが、シュミット・ピーターソン・モータースポーツは彼を信頼し続け、ヒンチクリフはアイオワでそれに応える最高の結果を掴んだ。キャリア6勝目、アイオワでの2勝目だ。

「スタートからマシンには素晴らしい速さがあった。しかし、1回目のピットストップでの調整が大き過ぎ、次のピットではセッティングを戻し過ぎた。ようやく最後のピットで施した調整でマシンをコースコンディションに合わせることができ、誰にも負けないスピードを手に入れた」とヒンチクリフは満足気だった。 

ピゴットは、「トラフィックをうまく処理し、周回を重ねる毎に強くなるレースを戦うことができて嬉しい。レースを通して多くの接近バトルを楽しむここともできた」と語った。そして琢磨は、ようやく実現した表彰台フィニッシュに笑顔を輝かせていた。

「昨日の夜にかなりのセッティング変更をしました。何度もガレージに出て行って、速いクルマをチェック。ロール・センターなど、見てわかる情報は全部揃えて、自分たちのセッティングと見比べました。そうして自分たちが考え出したセッティングが正しかった。今日のレースで僕らはスティント後半で速かった。タイヤが摩耗してアクセルを大きく戻すようになったライバルたちをたくさんパスできました。エンジニアのエディ・ジョーンズたちが素晴らしいマシンを作ってくれましたね。シーズンも後半になって、やっと自分とチームとがお互いのやり方や、考え方を深く理解し、目指す戦いができるようになって来ました」

佐藤琢磨は、手応えを掴んでいることをそう語った。

今シーズンは、これまでの11戦で7人のウィナーが誕生。ホンダ・エンジンは6勝目をマークした。残るは6戦。ポイントリーダーは今回は12位と大苦戦だったスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)。33点差の2番手はニューガーデン。3番手は今回9位だったアレクサンダー・ロッシ(アンドレッティ・オートスポート)で、4番手はライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポート)、5番手はパワーと続いている。

(text:Hiko AMANO 天野雅彦)
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