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【S耐】97号車Modulo CIVIC TCRの開幕戦は波乱の展開に

3月も後半となり、国内主要レースが次々と開幕を迎えるなか、2019年のスーパー耐久シリーズ・第1戦が鈴鹿サーキットにて行われた。

「SUZUKA“S耐”春の陣」と名付けられた本レースは、全8クラスに53台がエントリー。サーキットによっては、クラスごとにグループを分けてレースが行われるのもスーパー耐久の特徴だが、この第1戦では全クラスのマシンが同時に5時間の耐久レースとして開催された。

ST-X、ST-Z、ST-TCR、ST-1、ST-2、ST-3、ST-4、ST-5の8クラスのうち、ホンダ車が参戦しているのはST-TCR(シビックTCR)、ST-2(シビック・タイプR)、ST-4(S2000)、ST-5(フィット)の5クラス。ただし今回はST-2クラスのシビック・タイプRがエントリーしなかったため、4つのクラスでホンダ車が走った。

なかでも注目は、これまで2年連続でTCRクラスチャンピオンとなっているシビックTCRだろう。初年度の2017年には98号車CIVIC TCR(FK2型)、2018年には97号車CIVIC TCR(FK8型)がそれぞれ圧倒的な強さでチャンピオンを獲得。残念ながら98号車は今年のエントリーリストに姿を見ることはできないが、97号車Modulo CIVIC TCRは2年連続での王座獲得に挑む。

その97号車は、ドライバー・ラインナップを一部変更。昨年から継続となる中野信治選手、植松忠雄選手、大津弘樹選手に加え、遠藤光博選手が新加入。以前はST-5クラスにてフィットを走らせていたドライバーだ。

3月30日に行われた予選は、AドライバーとBドライバーの記録したタイムを合算してグリッドが決められる。97号車Modulo CIVIC TCRは、植松忠雄選手と中野信治選手が予選に挑み、ふたりとも昨年のコースレコードを上回るタイムを記録するも、ライバル19号車はさらに上を行き、TCRクラス2位(総合13位)となる。

予選結果には反映されないものの、Cドライバーの遠藤選手、Dドライバーの大津選手もTCRクラス上位のラップタイムを記録しており、昨年と同様に決勝レースに強い97号車の姿に期待が集まった。

そして迎えた決勝。風はやや冷たいものの、空は青く晴れ渡り、雨の心配もなさそうな天候のもとで5時間のレースがスタート。第1スティントを担当したのは、チームのエースドライバーといってもいい大津弘樹選手。最大のライバルである19号車をピタリとマークし、じりじるとその差を詰めていく。

クラストップを走る97号車Modulo CIVIC TCR。リアウィンドウにLEDでクラス順位が表示される

そして19号車を見事に攻略し、レースが1時間を経過するころにはTCRクラストップを快走。しかしこの開幕戦は全53台ものマシンが同時に走行しているため、このころからコースの各所で接触などのアクシデントが発生し始める。そしてスタートから1時間を経過したすぐ、最初のフルコースイエロー(FCY)が提示された。

FCY中はコース全域で最高速度が制限されるため、セーフティカーと比べて各マシンの差が縮まらないという特徴がある。またピットロードは常に解放されているので、給油は自由に行うことができる。今回はスタートからほぼ1時間というタイミングでFCYとなったため、ほぼすべてのマシンがピットに向かうこととなった。

そしてここで、97号車を最初のアクシデントが遅う。多くのマシンが一斉にピットインを行ったため、前後のマシンに挟まれるかたちとなった97号車は自チームのピットに入ることができず、そのままピットアウト。翌週にあらためてピット作業を行ったが、大きく順位を落としてしまった。

その後にマシンを託された中野信治選手、植松忠雄選手は懸命の走りで前を行くライバルを猛追。途中、4度のFCYと1度のセーフティカー導入がなされたサバイバルレースにおいて着実に順位を挽回し、4時間を経過するころには再びTCRクラス2位となる。

そして最後のスティントを担当したのは、2度目の乗車となる大津弘樹選手。この時点での順位はクラス3位で、1位が65号車、2位は19号車、そして3位に97号車の順。しかし大津選手は猛然とアタックし、ついに19号車とテール・トゥ・ノーズにまで追いつきます。

そして残り8分30秒となった第1コーナーで、前を行く19号車とのブレーキング勝負となったものの、なんと2台ともオーバーランしてしまうという熱いバトルを展開。その後にみごと19号車を攻略し、TCRクラス2位に。このバトルの模様は場内のオーロラビジョンにも映し出され、来場した大勢のファンから拍手が送られていた。

そしてグランドスタンドの上半分を、夕日が赤く染め始めた17時37分にチェッカーフラッグが振り下ろされ、5時間の長い戦いに幕が下ろされた。97号車はTCRクラス2位でチェッカーを受けたものの、表彰台では3位に。

じつは97号車は、レース終盤に他車のアクシデントにより黄旗区間となっていた場所で追い越しをしてしまい、レースタイムに30秒が加算されることとなってしまったため。表彰式の時点では暫定での結果であったが、その後の正式結果では3位に3秒差の4位となった。

2019年のスーパー耐久シリーズ開幕戦は、計4回のFCYと1度のセーフティカー導入に表されるように、波乱の展開となった。昨年度シリーズチャンピオンの97号車にとっても、マシントラブル以外で表彰台を逃したのは久しぶりのこと。今シーズンのTCRクラスには4台のシビックTCRが参戦しており、これからライバルたちの成熟が進めば、アウディだけでなくシビック同士による熱いバトルになることは必至だ。

ますます目が話せない2019年のスーパー耐久シリーズ。次戦第2戦は、4月27日-28日に宮城県・スポーツランドSUGOにて開催される。逆襲のチャンピオン・97号車Modulo CIVIC TCRの走りに期待したい。

(text:Kentaro SABASHI 佐橋健太郎)