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ホンダに今季初勝利をもたらしたコルトン・ハータ。未来のスーパースターが誕生か?

アメリカにF1グランプリを呼ぶためのコースとして、テキサス州オースティンにサーキット・オブ・ジ・アメリカス(COTA)が完成したのが2012年。F1とインディカーが同じコースを走ることは許されない……なんて時代もあったが、2019年、インディカーはCOTAでのレースを初開催することになった。

そのレースで、ルーキーのコルトン・ハータ(ハーディング・スタインブレナー・レーシング/Honda)が勝ってしまった!

「…しまった」という表現は失礼に聞こえるだろうが、昨シーズン最終戦ソノマでデビューをしたばかりの、それも18歳のドライバーが勝ったのだから、これはかなりの事件で、そういう表現の方がぴったりくる。正確にハータの年齢を記すと、18歳11ヶ月と25日。これまでの記録=グレアム・レイホールの19歳と93日を塗り替え、新たな最年少ウィナー誕生となった。

インディカー・シリーズで4勝しているブライアン・ハータの息子である、コルトン・ハータ。彼はカリフォルニア州で生まれ、10歳でレーシングカートに乗り始めた。

環境だけでなく才能にも恵まれていたことで、13歳でF2000地方シリーズ、14歳でF2000ナショナル・シリーズ及びアジアのフォーミュラBMW、15〜16歳の時はイギリスでF4やF3……とコルトンはかなりの英才教育を受け、どのカテゴリーでもチャンピオンになるか、なれなくとも1勝以上は必ず挙げて期待に応え続けた。

インディカー・シリーズ第2戦がスタート。特例でコース外走行が認められたため、ほとんどのマシンがワイドなラインを採る

2017年、母国に戻ったコルトンはインディライツに挑戦。2シーズンをそこで戦った後、インディカー・シリーズにステップアップした。これはかなりのスピード進級だ。しかし、年齢にそぐわないほどの経験を積み、キャリアもキッチリ築き上げて来ているのがコルトンなのだ。だからこそ、インディカー・シリーズでの勝利もアッという間に記録することになった。

アレクサンダー・ロッシ、ライアン・ハンターレイといった実力派ドライバーを追い回すコルトン・ハータ

では、このまま勢いに乗って次々勝利を重ねることになるんだろうか? ……というと、それはあんまり現実的じゃない。さらなる大化けだって有り得るが、今回の優勝は運が彼に大きく味方して成し遂げられたものだった。

もちろん、予選で4位に食い込んだ通り、コルトンにはトップグループを走れるだけの速さが備わっていた。COTAとのマッチングがバッチリだった。デビュー3戦目の18歳とは思えない実力を発揮してトップ3を走り続けた結果、最後のピットストップを終えた直後にフルコースコーションが発生し、前を走っていた1位と2位のドライバーたちがピット作業を受けるタイミングを失って14、15番手に後退。コルトンに勝利のチャンスが転がり込んだ。

最後の試練はゴールまで10周でのリスタート。ここで背後に強豪二人が迫っいたが、コルトンはプレッシャーなど感じていなかったかのように見事なスタートダッシュで差をつけ、そのままゴールまで逃げ切った。細身でシャイだが、実は大した強心臓の持ち主ってことのようだ。

表彰台の中央に立ったコルトン・ハータ。向かって右手に立っているのがジョージ・マイケル・スタインブレナーIVだ

コルトンが走るチームには、ジョージ・マイケル・スタインブレナーIVという共同オーナーがいる。彼も22歳の若さである。メジャーリーグの名門ニューヨーク・ヤンキースのオーナーである有名な一家に生まれたジョージIVは、「モータースポーツの世界のトップでチームを持ちたい」との夢を持っていた。

そしてコルトン・ハータと知り合い、「一緒に頂点を目指そう!」と少年時代に約束。インディライツでコンビを組み始め、インディカー・シリーズへの出場を始めるや、瞬く間にオーナーとしての初優勝に手を届かせた。

史上最年少ウィナーと史上最年少ウィニングオーナー。このコンビは今後、次々と記録を塗り替える大活躍を見せてくれることになるのかもしれない。

(text:Hiko AMANO 天野雅彦)
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