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青山一丁目に全長8メートルのボートが登場。ホンダのVTECは船外機にも使われる

2019年6月14日、青山一丁目交差点にあるホンダ青山ビル前にフランスのパワーボート・ビルダー「ベネトウ」社の作ったクルーザー「アンタレス8」が飾られた。全長8.23m、定員10名というクルーザーのキャビンを覗けば、ウッドテーブルやスマートなコクピットなど、いかにもセレブな雰囲気。その価格は2000万円を超えるという。

ちょうど同じ時期に、ウェルカムプラザ青山では『CB60周年記念展』が開催されており、そちらの無骨なオトコ臭い雰囲気とは対照的かつ洗練された雰囲気を感じさせ、ホンダの幅広い製品展開を感じさせる空間となっていた。

なぜホンダ青山ビルにクルーザーが飾られたのか。その理由は、船の後方に回ればすぐにわかる。このアンタレス8の日本国内販売において、ホンダの最新鋭船外機「BF250」がパッケージされているのだ。クルーザーやボートに使われる船外機というのは、その船体が許容できる最高出力のユニットを組み合わせることが多いというが、BF250はホンダ船外機のフラッグシップといえるもの。ラグジュアリーなクルーザーにふさわしいパワーユニットといえよう。

その最高出力は、名前が示すように250馬力。エンジン本体はV6で、総排気量は3583ccとなっている。エンジンにこだわるホンダだが、さすがに船外機専用にエンジンを設計しているわけではない。ボア×ストローク89.0mm×96.0mm、SOHC24バルブのヘッドにはVTEC機構が組み込まれ、バンク角60度というプロフィールを聞けば、レジェンドなどでおなじみのJ35A型エンジンのストロークアップ版であると理解できる。

それにしても、船外機の筐体にも「VTEC」のロゴがさん然と輝いているのは、いかにもホンダらしい。また、このシリーズでは初代NSXやS2000でも使われた「グランプリホワイト」のボディカラーも選べるという。ホンダのスピリットは船外機にも注入されているのだ。

ちなみに、船外機シリーズの「BF」というアルファベットは「ボートエンジン・フォーストローク」の略称。1964年に初めてホンダが手掛けた船外機「GB30」のときから海や川を汚さない4ストロークエンジンにこだわってきた本田宗一郎氏の想いが、いまに受け継がれていることを示している。

また「BF250」をはじめとした最新のV6エンジン船外機では、さらにDBW(電子スロットル)を採用した新タイプがラインナップに加わったこともトピックスのひとつ。これにより電子リモコンタイプの操作系とマッチングするほか、2基~4基掛けといった用途でのシンクロ性などに強みを発揮するという。

低出力の単気筒エンジンを除き、ホンダの船外機は静岡県、浜名湖畔の細江船外機工場にて作られ、世界中にデリバリーされている。まさにメイド・イン・ジャパンのホンダ船外機は、その信頼性と経済性から世界中で支持されているという。どんな船体に組み合わせるかで燃料消費率も変わってくるが、ホンダの社内テストでは他社の同等製品と比べて5~15%のアドバンテージを持っているというから明確な差だ。

本田技研工業 執行役員 ライフクリエーション事業本部長の奥田克久さん(左)の愛車は、BF250と同じ系統のエンジンを心臓部とするレジェンドとのこと。右はライフクリエーション事業本部 マリン事業部長の佐藤公亮さん

ホンダ車のエンジンが持つ優れた熱効率を、実際のユーザーとして実感しているオーナーであれば、船外機であってもホンダ・エンジンの優れた経済性に納得することはあっても、驚きはない。ホンダ・エンジンの特徴は、水上であっても健在というわけだ。

(photo&text:Shinya YAMAMOTO 山本晋也)