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【ホンダアクセス】待望のフィットe:HEV Modulo Xを公道試乗。実効空力が生み出したスタイリングにも注目【前編】

2021年6月4日に発売開始となった「フィットe:HEV Modulo X」がナンバーをつけた状態で目の前にある。現行モデルになってスポーティグレード「RS」が消滅しているフィットだけに、Modulo Xへ期待を高めていたファンも多いことだろう。

あらためて説明すると、”Modulo X”というのはホンダ車用純正アクセサリーの開発・販売を担当するホンダアクセスが、そのパーツ開発において磨き上げた走りのDNAを注入した、量産ラインで作られるコンプリートカー。パワートレインに手を入れることなく、主にサスペンションと空力によってModuloらしい質感の高い走りを実現している。

実車を目前にすると、標準系フィットのグリルレスデザインとも、クロスターのグリルとも異なるModulo X独自のフロントマスクに目が留まる。これまでModulo Xがこだわってきた「X型」のモチーフは薄れているように見えるが、だからこそ、フィットのスポーツグレードとしてのキャラクターが際立っているように感じられる佇まいだ。

ベース車両のフィットでは、グリル部分までバンパーと一体形状となっている。それはModulo Xでも同様で、単にグリルを追加したわけではなく、グリル上の部分からアンダーグリルまでをひとつのパーツとして設計されている。Moduloを冠するにふさわしい、走りを実現するための空力を考えたスタイルとなっている。

そのキーワードとなるのが、「実効空力」である。フィット e:HEV Modulo Xでは、空力デバイスとしてフロントエアロバンパー、リアエアロバンパー、テールゲートスポイラーの3点を追加。フットワークチューンとしてはダンパーとアルミホイールをオリジナルの専用品としている。たったこれだけのパーツと思うかもしれないが、その開発には長い時間をかけている。

実効空力を実現するエアロデバイスの目標は、4輪の接地荷重を均等配分すること。標準のフィットはフロントに対してリアがリフトする空力バランスとなっている。サスペンションストロークでいうと速度を上げていくほどにフロントが沈みこむ傾向にある。

しかしModulo Xでは、あえてフロントを空力によって抑え込まないようにセッティングした。これにより、空力による前後の荷重バランスが等しくなった。ホンダアクセスでは、これを「等価リフト」と呼んでいるが、どんな速度でも姿勢が変わらず、常に安定したフィーリングを味わえるというわけだ。

ディテールを見ていくと、フロントエアロバンパーではエンジンフード前方部分、グリルの上にあたりところの形状を最適化して、ボディ上面の整流効果とラジエターへしっかりと空気を取りいれることを狙っている。

ボトムには、Modulo Xではお馴染みのエアロスロープを配し、リアのディフューザー形状とあわせて床下の流速を稼ぎ、直進時のスタビリティを高めている。

さらに、等価リフトに貢献しているのがテールゲートスポイラーだ。一見するとオーソドックスな形状に見えるかもしれないが、左右が盛り上がって形状になっているのはタイヤ荷重を稼ぐため。そして中央が凹んでいるのは、ノーズで整えた空気をスムースに後方へ流すためだという。非常に凝った空力特性を与えられているのだ。

エアロデバイスの役割は、これだけではない。実効空力の本領発揮といえるのがハンドリングに貢献する要素だ。フロントエアロバンパーの下面左右に置かれた小さなつぶつぶ状の「エアロボトムフィン」は、ホイールハウスの内圧を下げ、ステアリングフィールの上質さを生み出している。

そしてバンパー脇に設けられた「エアロフィン」は、直進安定性を向上させると同時に、タイヤ周辺の乱流を抑制することで旋回性能アップにつなげている。

リアエアロバンパーのエッジが効いたコーナー形状は、フラットな面を大きくすれば直進安定性向上につながるのはわかっているが、旋回性とのバランスを考え、この形状が導き出されたという。これらがハンドリングにつながる実効空力に内容となっている。

そしてModulo Xのハンドリングを実現するのに欠かせないサスペンションのセッティングだが、今回はダンパーだけで対応している。フィットにはホンダセンシングが標準装備で、Modulo Xでもそれは変わりない。

ホンダセンシングは単眼カメラによって衝突被害軽減ブレーキや追従クルーズコントロール、車線中央維持などを実現する運転支援機能だが、その制御を考えると車高を変えることはNGであり、スプリングはベース車両と同一にする必要があったからだ。

だからといってノーマル+αのような走りでは、Modulo Xへの期待にはそぐわない。はたして、その乗り味はどうなっているのか。次回の記事では、高速道路からワインディングを模したコース(群馬サイクルスポーツセンター)における試乗にて感じた、フィット e:HEV Modulo Xのドライビングフィールについてたっぷりとお届けする。

ひとつだけ言っておきたいのは、かつてのホンダらしい味つけになっていたということだ。フィット e:HEV Modulo Xのメーカー希望小売価格は286万6600円。コンパクトカーとして考えると高価に思えるが、この価格が納得できるだけの走り味を実現していたことは間違いない。

ホンダに期待するスポーツ性が、しっかりと最新のシャシーやパワートレインに合わせてセットアップされているのだ。

(text:Shinya YAMAMOTO 山本晋也)

FIT e:HEV Modulo X 製品サイト
https://www.honda.co.jp/Fit/modulox/