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【ホンダアクセス】フィットe:HEV Modulo Xが教えてくれる、次世代スポーツコンパクトのドライビング像【試乗記】

 ホットハッチ・ファン待望の「フィット e:HEV Modulo X」が登場した。市街地と高速道路、そしてワインディングを模した群馬サイクルスポーツセンターでの試乗記は、すでに別記事にて掲載済みだが、その印象を一言でまとめれば“電動化時代にあるべきスポーツドライビング像が見えてきた”というものだった。あらためて2021年に「フィット e:HEV Modulo X」が生まれたことの意義を考察していくこととしよう。

(Honda Style 103号/2021年9月発売号に掲載)

 第四世代となる現行フィットでは、第二&第三世代に設定されてきたスポーティグレード「RS」の設定が見送られた。いっぽうでそれは、将来的にホンダアクセスの手によるコンプリートカー「Modulo X」が生まれることも予想させたが、ベースモデルの発表から約1年4ヶ月後となる2021年6月、ついにフィット初のModulo Xとなる「フィット e:HEV Modulo X」が発売された。

 Modulo X専用形状のバンパーにより、ベースモデルに比べて全長は5mm長くなった。全幅と全高に変化はない

パワートレインは新たに「e:HEV」と呼ばれる2モーターハイブリッドのみで、他モデルと同様にModulo Xの流儀に則り、パワートレイン自体にはまったく手が入れられていない。内外装のデザインや素材の変更、さらに専用の脚まわりを装着することで質感の高い走りを実現している。

フロントバンパーのコーナー形状は直進安定性を求めたもの。サイドに設置された特徴的なエアロフィンは、タイヤ周辺の乱流を抑制することで旋回性能アップに貢献する

あらためてフィット e:HEV Modulo Xのトピックスを整理してみよう。前後バンパーは当然のように専用品となり、フロントグリルもオリジナルデザインのものが与えられた。さらにエアロスロープ、エアロボトムフィン、テールゲートスポイラーに象徴されるエアロパーツは、Modulo Xシリーズに共通する「実効空力」を体現したものとなっている。

脚まわりではダンパーやホイールがModulo X専用品となるものの、スプリングやタイヤはベースモデルから変更はない。 車高も下げられていないのは、安全運転支援技術「ホンダセンシング」との関係とのこと。車高ダウンを行うことで、カメラやセンサー位置を変えるわけにはいかないためだ。

そのほか外観では、ダーククロームメッキエンブレムなどの装着により精悍さを強調している。

ドリンクホルダーやステアリングリモコン部には、グレーメタリックのアクセントカラーが配される。Modulo Xのロゴが入ったパワースイッチはシリーズ初の装備で、オーナーの所有満足度を高めてくれる

インテリアはブラック&ボルドーレッドとブラックの2色を設定。本革とラックススェードを組み合わせたシート、レザーステアリング、レザーセレクトノブなども専用品となる。アルミ調でModulo Xロゴの入ったフロアカーペットも備わっている。

形状はそのままに表皮を本革(サイドの赤い部分)とラックススェードに変更した専用シート。ラックススェードのグリップ性が高く、想像以上にワインディングで体をホールドしてくれる。後席も同様の素材で統一されているのも嬉しい

もっとも気になる走りについてはどうだろうか。パワートレインは変わっておらず、脚まわりで変更されたのはダンパーとホイールのみ。そう聞くと走りは変化していないと思うかもしれないが、実際に乗った印象はベースモデルとはまったく異なるものだった。

中央部で前後のリフトバランスを整えつつ、左右の形状によりリアタイヤの接地荷重を最適化する形状のテールゲートスポイラー。Modulo Xの専用品で、直進性と旋回性をバランスさせている

日常的な速度域でも効果を感じられる「実効空力」で狙ったのは、前後の接地荷重バランスをとること。標準車ではフロントが沈み、リアが浮き気味となるが、フィット e:HEV Modulo Xは前後とも均等にリフトすることが風洞実験で確認されている。相対的にリアの接地感が高まっているのだ。

さらに四輪接地感を高めるようダンパーはセッティングされた。最優先されたのは快適性だが、路面の凹凸を滑らかにトレースしていくハンドリング性能は、結果的に接地感の高さに繋がり、ステアリングを通してドライバーが抱く信頼感が大きく向上している。

しなやかな走りを支える最大のポイントが、専用設計のアルミホイールである。SUPER GTに参戦中のNSX-GTにも通じるデザインを踏襲した専用ホイールは、軽さと強さを目指したことは当然だが、そのうえで重視したのは「しなやかさ」とのこと。具体的にはインナーリム付近の肉厚を調整することで、ホイール自体の「しなり」を実現している。これによって軽量性と高剛性に加え、しなやかな乗り味を手に入れたという。

そのメリットはワインディングで強く感じられた。ギャップの収まりがよく、安心していられる。霧で視界の悪い群馬サイクルスポーツセンターでも、アクセル全開で3ケタの速度で走ることができたといえば、どれほどの信頼性を感じたか伝わるだろうか。

このように高められたハンドリング特性にマイルドさを兼ね備えたフィーリングは、レスポンスに優れたモーター駆動と非常に相性が良かった。マニュアルトランスミッションではなく、通常の速度域ではほとんどモーターで走るというフィット e:HEV Modulo Xだからこそ、リニアな駆動力はハンドリングに集中したスポーツドライビングが楽しめることを教えてくれた。

ホンダは2040年にすべての新車を電動化することを宣言している。しかし、そのときホンダ車からスポーツ性は失われると考える必要はない。どんなパワートレインになってもスポーツドライビングは消えることはない。そう実感できたことが最大の収穫だ。

(photo:Yoshiaki AOYAMA 青山義明、text:Shinya YAMAMOTO 山本晋也) 

[wc_box color=”inverse” text_align=”left”]SPECIFICATION
2021 FIT e:HEV Modulo X
□全長×全幅×全高:4000×1695×1540mm
□ホイールベース:2530mm
□トレッド(F/R):1485/1475mm
□車両重量:1190kg
□乗車定員:5名
□原動機形式:LEB-H5
□エンジン型式:LEB型水冷直列4気筒
□総排気量:1496cc
□ボア×ストローク:73.0×89.4mm
□モーター型式:H5型交流同期電動機
□エンジン最高出力:98PS/5600-6400r.p.m.
□エンジン最大トルク:13.0kg-m/4500-5000r.p.m.
□モーター最高出力:109PS/3500-8000r.p.m.
□モーター最大トルク:25.8kg-m/0-3000r.p.m.
□サスペンション型式(F/R):マクファーソン式/車軸式
□ブレーキ型式(F/R):ベンチレーテッドディスク/リーディング・トレーディング
□タイヤサイズ(F&R):185/55R16
□新車時車両価格:286万6600円[/wc_box]

FIT e:HEV Modulo X 製品サイト
https://www.honda.co.jp/Fit/modulox