Honda好きが堪能できる、Hondaスピリッツ溢れる情報誌
  1. TOP
  2. NEW CAR
  3. ARCHIVE
  4. 【ヴィンテージホンダ】平成生まれの若きオーナーが「永遠の相棒」として選んだ1974年式ライフ・スーパーデラックス

【ヴィンテージホンダ】平成生まれの若きオーナーが「永遠の相棒」として選んだ1974年式ライフ・スーパーデラックス

「まだまだ色々な車種を楽しみたい」という気持ちは、平成3年生まれというオーナーの年齢を考えれば、それが一般的な欲求だろう。今回紹介する島 大介さんは、多くのクルマと触れ合いたいという想いを持ちつつも、現在の相棒とずっと一緒にいたいと決心した。その相棒こそ、水冷エンジンを搭載し当時のホンダ4輪における道標となったライフである。平成生まれの若者と昭和世代ホンダ車の付き合いは、まだまだ始まったばかりだ。

(Honda Style 99号にて掲載)

人生初の愛車は軽のトゥデイ

少々の経年劣化はあるもの、まだまだ十分なツヤもあり、年式を考えるとコンディションは良好といえる

今回紹介するヴィンテージ・ホンダのオーナーは、幼少期よりクルマに興味を持っていたという島 大介さん。平成3年生まれ、取材当時は29歳という島さんが、念願の「自分のクルマ」を手に入れたのは20歳の大学生の時だった。

約30年前に購入した、E30のBMWを現在も維持し続けているという父親の隆さんと相談した島さんは、人生初の愛車をホンダ・トゥデイに決める。当時の中古車価格や維持費を考えると、大学生である島さんの経済力でも維持しやすいだろうというのが理由だった。

外観はノーマル然とした佇まい。オーナーの好みで取り付けたリアウィンドウのカーテンが、昭和感を増している

やがて見つけた車両は『価格30万円以下』という条件に合致する、’93年式の5速MT、ポシェットというグレードだった。ノッチバックスタイルというデザインも気に入り、現車確認もせずにメールのやり取りだけで購入を決めたという。

モデル的には本来シングルキャブなのだが、現車は購入時からツインキャブ仕様になっていた。点火系はセミトラ化されているが調子はイマイチで、今回の初期化プログラムでしっかりと修理する予定

初めての愛車を入手した島さんは、大学への通学にもトゥデイを使用し、様々なモディファイを楽しんだ。学生時代はソーラーカー部に所属しており、大学の敷地内でトゥデイのモディファイをこっそり(?)行ったこともある。ソーラーカー部の部員は皆クルマ好きであり、先輩たちもその光景を楽しんでいたそうだ。

トゥデイに乗っていた時に知り合った山本さん(左)は、島さんのクルマに対する考え方にも影響を与えた友人。主催する『ホンダリアン』オフ会は10年目を迎えた

同じトゥデイを楽しむ盟友・山本さんとの出会いがあったのも、ちょうどこの頃である。山本さんの愛車は「ノーマル主義」であったこともあり、島さんも『自動車メーカーが製品として販売したノーマル状態の車両を味わってみたい』という想いが次第に強くなっていく。

車両の購入時は社外製アルミホイールが装着されていたが、ネットオークションで純正ホイールをゲット。購入後に自身でペイントして装着している

さらに中学生の頃、国産軽自動車をクローズアップした『プロジェクトX』を観てからというもの、免許を取ったら旧いクルマに乗りたいという目標があったことから、乗り換えを決意。5年半楽しんだトゥデイは手放すことにした。

旧車に乗りたいという気持ち

シンプルなインパネは、非常に良好なコンディションを保ちオリジナル状態を維持している。同年代のJECOの置き時計を設置している

社会人となった島さんは、次は普通車に乗りたいと考えていたところ、中古車販売サイトで見つけたのが810型ブルーバードだった。予算内で購入できるし、旧車入門には良さそうと即購入。しかし納車からの帰り道、室内に充満した排気ガスの臭いや、異様に大きな振動を体感した。しかし、ようやく旧車を購入できた喜びのほうが大きく、さして気に留めなかったそうだ。

オドメーターは一周しているというので、総走行距離は約12万キロということのようだ

購入後最初の週末に「ピットハウス長浜」という琵琶湖近くのショップまでドライブがてら出かけると、燃料ホースのクラックやキャブのオーバーフロー、各部ネジの緩みといった様々なトラブルが発見される。おそらく購入した店舗の納車整備が至らなかったということだったが、気落ちする島さんを励ますかのように「ピットハウス長浜」ではリーズナブルな料金で修理をしてくれたそうだ。

フロアマットの新品は見つからず困っていたところ、マットメーカー『N CUSTOM』に勤めている友人が、きちんと採寸して特注で作ってくれた

本来の調子を取り戻した愛車で念願の旧車ライフを楽しもうという島さんに、急遽、長期間の海外赴任が決まる。ブルーバードは、地元京都のイベント『高雄サンデーミーティング(TSM)』に参加した際、このクルマはナイスカーだと絶賛してくれたオーストラリア人メカニック、ジェイミーさんへと譲ることになる。購入からわずか4ヶ月でのお別れであった。

島さんの海外赴任は、当初は3年だった予定が半年で終了となり、日本へ帰国する。そんなある日、島さんは通勤途中にある中古車屋さんにて『88京』という当時のナンバープレートを掲げたライフと出会う。

旧いクルマに乗りたいという欲求と、トゥディで経験した軽自動車ならではの軽快さを併せ持つライフこそ理想のクルマだと、島さんは即座に購入を決める。手に入れたのは昭和49年製のスーパーデラックス。雨風に晒したくないと、ライフのために賃貸ガレージも借りた。

外装は比較的キレイだが、機関系は年式相応に痛みはあり、アッパーマウントはひび割れ、ショックアブソーバーは機能しているとは思えない状態だった。しかも純正部品の入手は困難。そこで頼ったのが、前述のブルーバードを引き取ってくれたジェイミーさんである。

本職のメカニックである彼に相談すると、ノーマルの減衰力を参考にしてワンオフで最適なサスペンションを作ってくれた。おかげでハンドリングは向上したが、今度は動力系の状態が気になり始めた。

特に不調というわけではないもの、本来のライフの性能はこんなはずではないと、いずれしっかりとした修理が必要だと考え始め4年近くが経過した。その間、ライフに関するカタログや書籍、新車販売時のノベルティグッズなども集めることを楽しんでいた島さんだが、ホンダZ用5速ミッションなどの機能部品が揃ったことや、ちょうど車検満了のタイミングも重なり、ライフの大掛かりなリフレッシュに着手する。

様々なタイミングと、同じヒストリックカー好きな人々の縁によって走り続けている島さんのライフ。ほぼ4年間に渡って楽しんだライフをこれからも長く乗り続けるために、現在は地元のショップとリフレッシュ作業について相談を重ねているという。

平成3年生まれだが、昭和のホンダ車にどっぷりとハマっている島 大介さん。ライフの後席にはラジカセを置き、ライフと同じ1974年の音楽を納めたカセットテープを聴くという。「最近のお気に入りは山口百恵です」と語る29歳(取材時)は、アシグルマにN-WGNも所有している

関西圏のヒストリックカー好きを中心に、多くの人々が集まる高雄サンデーミーティング(TSM)。本記事をご覧の方々のなかには、TSMの会場である高雄パークウェイを快走する、若いドライバーが運転するライフの姿を見たことがある人もいるかもしれない。

平成生まれのオーナーが愛する昭和生まれのホンダ車は、令和の時代も変わらぬ蜜月の日々を重ねていくことだろう。

(photo&text:Junichi OKUMURA 奥村純一)