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【EK4】大阪環状から「KANJO」スタイルへ。日米ストリートチューンの融合が導く、次世代JDMストリートレーサー

 かつて1990年代に隆盛を誇った”大阪環状族”の印象は、その後も漫画の影響などもあって幅広い世代を魅了し続けている。その時代のチューニングスタイルを再現した「環状仕様」は、当然ながら関西・大阪で根強い人気を誇っているが、このスタイルが北米の日本車好きのアンテナに触れ、“KANJO”の名で世界に知られる存在となった。今回紹介するEK4は、そんな最新KANJOスタイルを具現化した1台だ。

(Honda Style 99号に掲載)

2020年代を迎えてのホンダカスタムシーンは、日米双方がお互いに影響をし合っているところに面白さがある。’90年代半ばに「スポーツコンパクト」というジャンルで、アメリカにおけるHONDA TUNINGが盛り上がり始めたときは、どちらかといえば走り重視、日本のチューニングシーンを輸入しているという印象が強かった。

やがてアメリカでFF車でのドラッグレースが盛んになると、ターボチューンやナイトロガスを中心とした、北米ならではのチューニング手法が独自に進化。同時にストリートではエアロパーツで外観を武装するトレンドも巻き起こった。それにトドメをさしたのが、映画『Fast and Furious(邦題:ワイルドスピード)』シリーズのメガヒットだ。

タクティカルアート流のファブリケーションが冴え渡るエンジンルーム

この流れから、アメリカのホンダ車チューンは日本からも注目を集めることとなり、ネットの発達とともに日米双方がお互いのトレンドに刺激される状況が続く。そして「スポーツコンパクト」以降、海外にもっとも大きなインパクトを与えたのが”大阪環状族”の存在だ。

日本においても、関西圏に住んでいなければリアルな存在ではなかった大阪環状族だが、インターネットや動画サイトの発達により一気にブレイク。アメリカのシビックオーナーたちにも大きな影響を与えた。しかし彼らは、「環状」文化をただ輸入するだけでなく、独自のエッセンスを加えて「KANJO」カルチャーへと昇華した。

そのマッシュアップ感覚を、さらに日本側の視点で逆輸入したのが、この1995年式シビックSiR(EK4)といえる。

ファーストモールディング製のエアダクト付きボンネットを装着

大阪のスペシャルショップ『タクティカルアート』が手がけた、この1995年式シビックSiR(EK4)は、同社の代表である坪内厚樹氏のファブリケーションが冴え渡る、ショーカーレベルで仕上げられた1台だ。

以前はCCWホイールやロールケージを入れただけの仕様だったが、ハイレベルなカーショーとして知られる『WEKFEST』出展を目指すプロジェクトカーとすることをオーナーが決断。USパーツを多用したサーキット仕様、いわゆる“TRACK”スタイルへと仕上げられた。

外観ではTRACKスタイルを強調するために、SPOON製リップスポイラーやエアロミラー、ルーフスポイラーを装着。さらにカナードを追加。エアロパーツはカーボン地で統一しており、メーカー不明のサイドステップとTRACKLIFE製のカットアウトフェンダーは、FRP製の表面に坪内氏が自らカーボンを張り込んだ。

ボディカラーにはレクサスのソニックチタニウムをチョイスし、丁寧なペイントワークを施すことで『WEKFEST』でトロフィーを狙える艶やかなボディを手に入れている。

B16A型エンジンはヘッドカバーを赤結晶へとアレンジペイント。インテークやフューエルデリバリーなど、各部にSKUNK2のパーツを投入してUS流儀のチューンを敢行。

エンジンマウントはHASPORT製に交換し、純正よりもダイレクト感をアップしている。

脚まわりは『タクティカルアート』オリジナル車高調をセット。足元はレイズ製TE37ホイールに、ADVANネオバAD08Rの組み合わせ。サイドウォールにホワイトレターを吹く仕上げは、環状シビックによく見られるディテールだ。

さらにこのシビックには、海外ゲストに絶対バカウケするであろうギミックも仕込まれている。前述のように、このクルマはUS流儀のTRACKスタイルで仕上がっているが、マフラーだけは小径カチ上げというヤンチャ仕様。

S2000(AP1)用のデジタルメーターが、丁寧なファブリケーションで綺麗に収められている

ここだけはJDMなアウトローシビックを感じる部分だが、オーナーがこのマフラーに拘っているヒントは、運転席に用意されている。

K-tunedよりコンバーターハーネスがリリースされており、カプラーオンでホンダ系の他車種に装着が可能

このシビックはインパネにS2000のデジタルメーターを流用するなど、インテリアも『タクティカルアート』流のモダンな仕上がりなのだが、ステアリングコラムの脇に、何か不穏な物が見えている。なんとこのクルマ、バイク用のアクセルが付けられているのだ。

これはショップではなく、オーナーが独自に施した改造で、「コールを切る」ためにバイクのアクセルを追加したのだそう。スロットルには2本のワイヤーが伸びており、足元のペダルも手元のバイクのアクセルも両方実働する。日本の夜に響き渡る、あふれんばかりの若さとエネルギーの象徴ともいえる「あのサウンド」だ。

VTECの鋭い吹け上がりを利用したコールはさぞ斬新かと思われるが、日本のカスタムシーンに注目するアメリカ人にとっては、これぞJDMといった面白いギミックとして映ることだろう。

(photo:Akio HIRANO 平野 陽、text:Takayoshi SUZUKI 鈴木貴義)

タクティカルアート(TEL:072-628-8806)
www.tactical-art.jp