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【SPOON】シビック伝統のスポーティグレード「Si」最新モデルの潜在能力をサーキットで試す!【FE1】

シビックのスポーティグレードといえば、もちろん「タイプR」だが、北米市場にはセダンをベースとした「Si」が存在する。タイプRのようにサーキットベストを追求するのではなく、ワインディングやストリートを舞台とするそのスペックは、かつてのSiRを思わせる。ホンダ車チューンの第一人者であるSPOONでは、このシビックSiを輸入しオリジナルパーツの開発をスタート。そのシェイクダウンの様子をお伝えしよう。

(ホンダスタイル シビック50周年記念号に掲載)

2022 CIVIC Si(北米仕様)SPECIFICATION □全長×全幅×全高:4673×1800×1410mm□ホイールベース:2736mm□トレッド(F/R):1537/1568mm□車両重量:1340kg□乗車定員:5名□エンジン型式:L15C型直列4気筒DOHCターボ□ボア×ストローク:73.0×89.5mm□総排気量:1498cc□最高出力:200hp/6000r.p.m. □最大トルク:192lb-ft /1800-5000r.p.m. □圧縮比:10.3 □サスペンション型式(F/R):マクファーソン式/マルチリンク式□タイヤサイズ(F&R):235/40ZR18  

北米仕様の4ドア・セダンに設定されるスポーティグレード「Si」。北米市場でしか販売されていないモデルを日本国内へ持ち込んだのは、ホンダ車オーナーにはお馴染みの存在であるSPOON(スプーン)だ。

すでに日本国内市場からは姿を消してしまったシビック・セダンだが、2021年12月にアメリカで行われたサンダーヒル25時間耐久レースにスプーンが出場した際、隣のガレージにいたアメリカンホンダの研究所チームが走らせていたのがシビックSiだったそう。

耐久レース仕様の車両はかなりのペースで周回を重ねており、その走りっぷりがベース車両のSiに興味を持つきっかけとなったという。

なだらかなルーフラインを持つセダンは、一見するとハッチバックとの違いがわかりづらいが、独立したトランク部分やテールレンズ形状で区別することができる。ブラック塗装されたサイドミラー、リアスポイラー、トランクに備わるエンブレムはSiの専用装備だ

「Si」というグレード名は、日本のシビックファンにとっては懐かしささえ感じさせるが、北米市場においてはスポーツグレードの名称として長らく使用され続けている。

セダンSiのエンジンルーム。搭載される1.5リッター・ターボはSi専用チューンが施されているが、タイプRのように化粧カバーが施されるなどのドレスアップはなされていない。現在はSPOON製エアクリーナー(1万7050円)を装着する

現行モデルのSiはセダンのみとなるが、エンジンは日本仕様の5ドアにも搭載される1.5リッター・ターボをベースに、過給圧を高めるなどして最高出力200hpを達成。日本仕様が182PSであることを考えれば、それだけでも十分にスポーツグレードと言える。

さらにヘリカルLSDは標準装備されているし、脚まわりはフロントのナックルまで変更し、日本仕様よりもひとまわり大きい径のショックアブソーバーをセット。ノーマルの時点で車高は15~20mmほど低くセットされ、スプリングレートも引き上げられているという。

北米仕様のため左ハンドルとなるが、コックピットまわりは日本仕様ハッチバックを鏡に写したよう。ステアリングやシフトノブはSPOONオリジナルのものに交換され、純正ステアリングに備わるスイッチ類も移設される

ここまで違うなら買ってみようと、2022年の6月に日本へ上陸。まずはノーマルでのポテンシャルをチェックした後に、ライトチューニングを施したのが現状の仕様だ。

現在の脚まわりは、スプーンが日本仕様シビック向けに販売しているプログレッシブスプリングをセット。車高はノーマル状態の10ミリダウンに落ち着いている。

ホイールはスプーンオリジナルのSW388で、サイズは18×8.5J、インセット+45。組み合わせるタイヤはブリヂストン製RE71RSの235/40R18となっている。その内側には、大径ブレーキと対向キャリパーをセット。機関系に関しては、エアクリーナーとマフラーといった吸排気のみのチューニングとなっている。

ホイールはSW388、タイヤはブリヂストンRE71RSを装着。対向6ポッドのフロントブレーキキャリパー(27万2800円)およびブレーキパッド(F/2万4200円~2万6400円)はFL1型用を流用して装着

サーキットを走る前に街乗りをしてみると、走り出しからかなり骨太な乗り味であることが窺える。乗り心地がかなり良く、ロールスピードがゆっくりなイメージで、かなり懐の深さを感じるのだ。これはハコの強さなのか、それともダンパー径が太いせいなのか定かではないが、リアがかなりドッシリとした感覚だ。

現在は日本仕様FL1型用プログレッシブスプリング(4万6200円)を装着。スプリングレートは前後とも3. 4kgf/mmだが、どうやら純正Siのリアスプリングはこれよりレートが高いようだ。今後もっとリアを締めたセッティングで走ってみたい。

ちなみに同じスプリングを組んだ5ドアに乗ると、ロールスピードが速くヒラヒラとした動きが顕著だった。ワインディングではそれを利用してクルマの向きを変えやすい感覚だが、ハイスピードで走ると少し減衰不足にも感じてくる。現行FL1型となりボディ剛性が向上したが、それだけにサスペンションはもう少し拘って欲しいと、Siへ乗った後だけに強く感じられる。

舞台を袖ヶ浦フォレストレースウェイに移して走り出すと、Siのエンジンは爽快感がかなり増しているように感じる。日本仕様の5ドアと比較すると、特に違うと思えたのは高回転に向けた吹け上がりで、シフトアップ後の回転上昇がかなり心地良い。それはギアが高まれば高まるほどで、4速に入れた後の吹け上がりは驚かされる。

フットワーク系はワインディングで感じた通りの仕上がりで、ロールスピードがゆっくりで急な動きがなく扱いやすい。ただ、現状では前後のレートが完全にはマッチしておらず、リアに荷重が乗りすぎている。

というのも、Siの純正サスはリアのスプリングレートが高めに設定されており、スプーンが日本仕様5ドア向けに用意しているプログレッシブスプリングを装着すると、Siの純正よりも柔らかくなってしまうそう。結果として全体的にアンダーステアな傾向になっており、ヘリカルLSDの旨味も活かしきれていない。やはり5ドアとは異なるセッティングが理想のようだ。

サーキットでも同じように日本仕様5ドアを走らせると、軽快にクルマの向きを変えられる面白みが感じられる。しかしヒラヒラとしたクルマの動きは時として高速コーナーからのターンインなどで若干唐突な動きを見せるときもあり、このあたりの安定感が高まるとさらに良いクルマに成長しそうだとも思えた。

ブレーキについては両車共に大径化されていたが、走行風が当たらずに周回を重ねるとベーパーロック現象を起こすことが確認できた。タイプRのようにサーキット走行を重視していないグレードだから、エアロパーツの装着などで積極的に走行風を取り入れる工夫も今後は検討するべきかもしれない。

スプーンによるシビックSiチューンは、まだまだ始まったばかり。なにより世界各地のシビックに手を入れて走らせることで、様々な知見が蓄えられていくことが最大の財産でもある。スプーンでは今後も様々な検討を重ね、Siを含めたFL世代のシビック全モデルで「もっと気持ちよい走りを実現したい」という。日本が世界に誇るホンダ・チューナーが紡ぎ出す、理想のシビックの姿に期待したい。

(photo:Kiyoshi WADA 和田清志、 text:Yohei HASHIMOTO 橋本洋平)

スプーンスポーツ(TEL:0120-122-095)
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