Honda好きが堪能できる、Hondaスピリッツ溢れる情報誌
  1. TOP
  2. NEW CAR
  3. Honda Access
  4. 【Modulo X 10周年】ホンダアクセスのコンプリートカー、Modulo Xオーナーだけのミーティングは大盛況!【前編】

【Modulo X 10周年】ホンダアクセスのコンプリートカー、Modulo Xオーナーだけのミーティングは大盛況!【前編】

「しまった、やっぱり普通にエントリーすればよかった!」

イベント会場である群馬サイクルスポーツセンターのメインエリアに足を踏み入れた瞬間、思わず大きな声でひとりごとを呟いてしまった。

2023年9月18日、ホンダアクセスが開発を手がけるコンプリートカー、Modulo Xの誕生10周年を記念して「Modulo X 10周年記念オーナーズミーティング in 群サイ」が、群馬サイクルスポーツセンターで開催された。このイベントでは、会場内に駐車できるのは参加者のModulo X車両のみ。目の前には全175台ものModulo Xシリーズ全車がきれいに並んでいる。

各モデルごとに駐車エリアが区切られ、整然と並んだModulo X各車の前でオーナーさんたちはとっても楽しそうにクルマ談義に花を咲かせている。まだ開会式まで30分近くあるというのに、オーナーさんたちは皆とっても楽しそう。やっぱり取材メディアとしてではなく、ひとりのN-ONE Modulo Xオーナーとして、相棒の384号車で参加すればよかった……。

…などと、朝から個人的な後悔のテンションで始まったこの日、群馬サイクルスポーツセンターにて「Modulo X 10周年記念オーナーズミーティング in 群サイ」が開催された。

Modulo Xの揺るがぬ信念が支持され続けて10周年

ホンダアクセスが開発を手がけるコンプリートカー・シリーズ、Modulo Xは今年で誕生10周年を迎えた。2013年に発売されたN-BOX Modulo Xに始まり、N-ONE、フリード、ステップワゴン、ヴェゼル、S660、そしてフィットe:HEVの全7モデル。いずれも「実効空力」をコンセプトに掲げたエアロパーツや、「四輪で舵を切る」ハンドリングを実現した専用サスペンションや専用ホイールによって独自の走りを実現したクルマたちである。

イベントではホンダアクセスの開発メンバーがずらりと揃い、全国から集まったModulo Xのオーナーさんたちをお出迎え。開催告知およびイベントエントリーについては、ホンダスタイルWebでも紹介したようにModulo X公式サイトにて行われたが、「限定200台」という参加枠は1ヶ月もたたずに満員御礼となったという。会場に並んでいるModulo X各車のナンバープレートを見ると、本州の北から南はもちろん、なんと北海道から参加したと思われる車両もいた。

イベント開始時刻を迎え、会場内に用意されたメインステージにはホンダアクセスでModulo X開発統括を務める福田正剛さん、Modulo X完成車性能担当の湯沢峰司さん、そしてModulo X開発アドバイザーの土屋圭市さん。そして前日にSUPER GT第6戦を終えたばかりのレーシングドライバー・大津弘樹選手が登壇。レースアナウンサーのピエール北川さん、カーライフ・ジャーナリストのまるも亜希子さんの司会によるトークショーが開催された。

約1時間にわたって開催されたトークショーでは、これまでも語られていたModulo Xシリーズ各車の開発エピソードに加えて「なぜ群サイがModulo X開発の舞台として選ばれたのか」、「群サイでしか感じられないものはなにか」といった内容でもハナシが進行していった。

ここ群サイは、路面がかなりバンピー&スリッピーで実際の峠に近く、テストコースのように一定したキレイな路面ではない。穴が開いていたり、季節によっては落ち葉ですべったり、ときには野生のサルなど動物がコースを横切ることもある。つまり一般ユーザーが走る環境にもっとも近い走行テストが可能なのだ。

「ブラインドコーナーも多くて、とにかく走るのは大変。テストコースはもちろん一般道で試乗して良いと思ったクルマでも、群サイに持ち込むと印象が一変したりする。つまりアラが隠せないんだ。もちろん、そんな高い速度域で走れるテクニックを持つ人は多くない。それでもModulo Xの開発陣は拘るんだよ。そのぶん開発には時間がかかってしまうんだけれど、それほど徹底してクルマを煮詰めているから、絶対にModulo Xオーナーには納得してもらえる自信がある」

こう語ってくれたのは、Modulo開発アドバイザーを務める土屋圭市さんである。誰よりも「群サイ」を知り尽くしている土屋さんだからこそ、その奥深さや過酷さを痛感しており、そして絶対に信念はブレることがない。ついのめり込みがちな開発メンバーに、良い意味で気持ちを落ち着かせることもあるという。

「Modulo X開発メンバーで方向性を定め、ある段階まで仕上げたところで土屋さんに乗ってもらおうとしたとき、なかなか運転席に座ってくれないんです。最初にリアシートに乗って、乗り心地に納得してくれないとステアリングを握ってくれない。『Modulo Xはどこに向かっているの? 俺たちはタイプRを作るんじゅないだろ。Modulo Xの舞台はサーキットじゃない、一般道でありワインディングだろ』と何度も言われました」

Modulo Xの完成車性能を担当する湯沢峰司さんは、開発段階における土屋さんとの印象的な出来事としてこのような話を聞かせてくれた。自分たちとは異なる角度で見てくれる立場からの言葉に、ハッとさせられたことがあるという。こだわりが強すぎるがゆえに、Modulo Xとしての目指す場所、ユーザーの求めるものから離れてはいけないと、あらためて思い直すことができたそうだ。

そして前日のSUPER GT第6戦を終えてイベントに参加した大津弘樹選手は、フリードハイブリッドModulo Xを実際に所有されているオーナーでもある。

じつは2023年6月にお子様が生まれたばかりで、夜泣きがおさまらないときもフリードハイブリッドModulo Xの2列目シートに乗せてドライブすると、ぐっすり眠ってくれるそう。上質な走りを追求するModulo Xは、決して「締め上げた脚まわり」ではなく、すべての乗員にとって快適な乗り心地を提供するというコンセプトを証明するようなというエピソードを披露してくれた。

ボディサイドに「実効空力”感”」と大きく記されたこの車両は、実際にエアロパーツの開発車両として使われているもの。デザイナーやクレイモデラーも実際にステアリングを握って走行し、エアロパーツのデザインがもたらす機能を体感するのがModulo流だが、この開発車両の各部にはパープルに塗装された補強パーツが装着されている。これらはベース車両では装着されていない部品で、開発メンバーたちは様々な箇所に装着したり外したりを繰り返しながら走り込むという。

なお室内をよく見ると、運転席にはフルバケットシートが装着されているが、助手席はちょっとヒストリックな形状をしている。当然ながらフィット純正ではないよな…と聞いてみると、なんとW124世代のメルセデス・ベンツの純正シートを溶接して固定しているのだとか。今なお評価の高いシートの実力を身体で感じることで、今後の開発に活かす狙いがあるという。

時代や国産・輸入車の垣根を越え、様々な「クルマの声」を聞きながらModulo Xの開発は進められているということを示している展示車両だ。

後編では、イベント内で開催されたModulo X「実効空力」体感試乗イベントの模様や、参加したModulo Xオーナーの声をレポートする。

(photo&text:Kentaro SABASHI 佐橋健太郎)