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【現地レポート】ジョセフ・ニューガーデンが今季4勝目、シリーズチャンピオンに一直線

開幕戦のセントピーターズバーグ、第7戦デトロイト(ダブルヘッダーの1戦目)、そして第9戦テキサスと今シーズン3勝を挙げ、この第12戦アイオワにポイントリーダーとして臨んだのがジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)だ。

安定した強さを見せたジョセフ・ニューガーデン。ゴール後にはスタンドの前でドーナツターンを披露した

アメリカの南部テネシー州出身の28歳、現在もっとも脂がノっているドライバーである彼は、8分の7マイルのショートオーバルであるアイオワ・スピードウェイでも優勝を果たした。予選3位から序盤にしてトップに立つと、そのまま逃げ切り。他を寄せ付けない強さを見せて今シーズン4勝目を挙げ、小さくなっていたポイントリードを再び広げた。

雨でスタートが4時間半以上も遅れ、陽のある夕方から行われるはずだったレースは、完全なナイトレースになった。プラクティスも予選も土曜日の日中だったから、出場22台は暑いコンディションでしか走っていなかった。それが一転、レースは涼しい中で行われることに。

大気も路面も温度が下がり、空気の密度は高まってマシンを路面に押し付けるダウンフォースは増大。エンジンはパワフルになり、タイヤのグリップは少し長持ちするようになっていた。これらの要素に合わせて、各チームはマシンセッティングを変えなければならず、エンジニアたちの能力が試された。

ニューガーデンはペンスキー入りする直前の2016年、エド・カーペンター・レーシング時代にアイオワで勝っている。それに対してチーム・ペンスキーの先輩2人、ウィル・パワーとシモン・パジェノーはアイオワで未勝利。彼らはニューガーデンより前の1、2番グリッドを予選で確保していたけれど、ショートオーバルが3人の中で最も得意なのはニューガーデン……と見えた。

4勝といったら、もうチャンピオンの資格十分の勝星数である。ペンスキーで走り出した2017年、ニューガーデンがチャンピオンになった時も4勝だった。チーム入り3年目の今年、ニューガーデンは2度目のタイトル獲得を達成する可能性がまた高まった。先輩二人はまだ1回ずつのタイトルだというのに……。

タイトル争いでニューガーデンがもっとも強く意識するのは、アレクサンダー・ロッシ(アンドレッティ・オートスポート)だろう。ポイント2番手につけているから……ということもあるが、それより、ひとつ年下のカリフォルニアンはとてつもない爆発力の持ち主で、2連勝、3連勝をして来る怖さがあるからだ。アイオワでは苦戦したが、予選は6位から辛抱強くレースを戦い抜いて、予選と同じ6位でゴール。年齢に似合わぬ成熟ぶりを発揮していた。

ニューガーデンのロッシに対するポイントリードは4点から36点に、対パジェノーは39点が58点に広がった。

「最後までレースを見てくれたファンの皆さん、ありがとう! 僕のマシンは単独走行でも集団の中でも速かった。この勢いを保ち続けたい。まだまだシーズンは長く、今日の勝利は勿論大きいが、タイトル獲得に十分なわけじゃない」とビクトリーレーンでのインタビューにニューガーデンは応えていた。

アイオワで2位フィニッシュしたのは、ポイントスタンディング4番手のスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)。序盤はマシンセッティングが悪く順位を下げる一方だったが、ピットストップでマシンに調整を加え、涼しくなったレース終盤にスピードを手に入れた。

燃費セーブの作戦を絡めたのも大正解で、終盤にライバル勢より磨耗していないタイヤで戦う状況を与えらえると次々に前車をパスし、ニューガーデンに迫った。「2周遅れになっても不思議はなかった。自分でもどうやって2位フィニッシュできたかのか、まだハッキリ分かっていないよ」とディクソンは笑っていた。ディクソンとチップ・ガナッシ・レーシングというコンビネーションも、まだまだタイトル候補から外すことはできない。

3位でゴールしたのは陽気なカナディアン、ジェイムズ・ヒンチクリフ(アロウ・シュミット・ピーターソン・モータースポーツ)。彼は去年のアイオワ・ウィナー。今年初めての表彰台フィニッシュを遅ればせながら達成した。

佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)は予選でペンスキー勢の真後ろの4位となったが、レースはアクシデントによるマシントラブルでリタイアを喫した。スタートでダッシュを決めて2番手に浮上。しかし、1回目のピットまでで大きくポジションダウン。これでロングランは苦しいと判明、セオリーより1回多いピットストップで戦うよう作戦を切り替えた。

フレッシュタイヤを履いた琢磨は右から、左からライバルたちを次々にパス。このまま行ったらもしかして……との期待が持たれたころ、競い合う2台のマシンの後ろで乱気流を浴び、ラインが一瞬アウトに流れて減速したところにセイジ・カラム(カーリン)が追突。琢磨のマシンはアンダートレイが壊れ、走り続けるのが不可能になった。

インディ500で3位、デトロイトのレース1でも3位、テキサスではPP……とシーズン中盤戦もずっと上位を走っている琢磨だが、好結果が得らず、「フラストレーションが溜まる。やれることは証明できてるのに」と彼は話していた。

次はオハイオ州での「Hondaインディ200アット・ミッドオハイオ」。適度なアップダウンのあるツィスティなロードコースが舞台だ。去年のウィナーはアレクサンダー・ロッシ。今年も優勝を果たせばチャンピオン争いがまた混沌として来るが、はたしてどうなるだろうか?

(text:Hiko AMANO 天野雅彦)
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