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ホンダ、待望のフル電気自動車「Honda e(日本仕様)」を公開。開発キーワードは「街なかベスト」だ!

いま欧州ではEVブームが起きている。それは2020年より欧州(EURO圏)においてCAFE規制が厳しくなるからだ。CAFE規制というのは、日本語では「企業別平均燃費基準方式」という。簡単にいうと、すべてのメーカーが一定の燃費(CO2排出量)をクリアしないといけないというもの。それも販売モデルの平均ではなく、販売台数によって計算する仕組みとなっている。

つまり、燃費に優れたクルマを多く売っていれば目標をクリアしやすいが、燃費の悪いモデルが人気だったりするとCAFE規制をクリアできず巨額の罰金を科せられることになる。しかしEVはCO2排出量をゼロとして計算される。従来通りにエンジン車を売り続けるためには一定以上のEVを売ることが必須となってくるのだ。そのため欧州メーカーは急激にEVシフトを進めている。

リア駆動を採用したフルEVの「Honda e」。ややこしいが社名のホンダとは別に「ホンダe」が車名となる

ホンダも欧州でビジネスをしている限り、CAFE規制から逃れることはできない。このタイミングで電気自動車「Honda e」を上市する狙いは、間違いなく欧州での規制をクリアするためといえる。だから、新型コロナウイルスの影響で中止となったジュネーブモーターショーで量産バージョンを発表する予定だったのであり、ローンチは欧州からスタートする。

ボディカラーはプラチナホワイト・パール、ルナシルバー・メタリック、モダンスティール・メタリック、クリスタルブラック・パール、プレミアムクリスタルブルー・メタリック、プレミアムクリスタルレッド・メタリック、チャージ・イエローの全7色。すでに販売されている欧州市場の一番人気は、このプラチナホワイト・パールとのこと

そんなHonda eの日本仕様に、一足早く触れることができた。すでにティザーサイトが公開されているのでご覧になった方も多いと思うが、欧州をターゲットに開発されたホンダの小さなEVがついに日本でも発売される。今回、メディア向けに公開されたのは「静的確認」、つまり停止状態でのファーストタッチのみだったが、このHonda eからは本気で“ホンダらしいEVを作ろう”という意図がビンビンに感じられた。

あえて水平基調のデザインを積極的に取り入れ、リビングのような雰囲気を目指したというインテリア

すでに2019年の東京モーターショーでも披露されているように、Honda eはボディはもちろんプラットフォームからEV専用となっているモデルだ。どこか初代シビックを思わせるエクステリアは、けっして懐古主義でデザインされたものではないが、「他の模倣をしない」というホンダのDNAを示している。実際に車体の中身を見ても、駆動モーターをリアに置いた後輪駆動として、四輪ストラットのシャシーにするなど独自性に溢れている。

Honda eの開発コンセプトは「シームレス・ライフ・クリエイター」。ビークルでもカーでもなく「クリエイター」という言葉をあえて使っているのは、従来の自動車的価値では測り切れない魅力を目指すという意思を感じさせる。

例えば従来的価値観でいうと、EVといっても多量のバッテリーを積んで、航続距離を伸ばすことが正義だが、ホンダはそうは考えなかった。「小ささも磨けば、きっと大きな魅力になる」という。タブレットとスマートフォンに例えると、バッテリーをたくさん積んだEVは前者の価値観で、Honda eが目指しているのはスマートフォンのようなクルマというと、そのコンセプトを理解するヒントになるだろうか。

よりわかりやすい開発キーワードは「街なかベスト」。ホンダファンであれば、タイプRシリーズが「サーキットベスト」を旗印に掲げてきた歴史はよく知っているだろう。ホンダがベストを目指すときは、本当に徹底している。

街なかでの使い勝手に大きく影響するのは小回り性で、そのためにはステアリングの切れ角を大きくしたい。そのためにフロントから駆動系をなくし、タイヤハウスを最大限にとることで切れ角を確保する必要がある。じつはHonda e、当初は前輪駆動レイアウトで設計されていたというが、「街なかベスト」を目指したためにプラットフォームから新設計され、後輪駆動に変更されたという。

また、すれ違い性に影響するのがミラー・トゥ・ミラーと呼ばれるドアミラーまで含めた全幅だが、Honda eは全車にサイドカメラミラーシステムを標準装備することで、ミラーの張り出しを完全になくすことに成功した。さらに前後のオーバーハングもギリギリまで切り詰めることで、市街地で安心して取り回せるディメンジョンを実現している。

サイドカメラミラーシステムを前提に設計されたインパネは、端から端まで計5枚のディスプレイが並べられた未来的なもの。開発時には10年後を見据えて作ったというが、たしかに2030年代のクルマのインパネを見ているような気分になる。

「OK,Honda」と声をかけることで立ち上がる音声認識システム「Hondaパーソナルアシスタント」は、自然な会話が成り立つようAIを活用しているため、本当にクルマではなく相棒と話している気持ちになれる。なんとも不思議な感覚だった。

フロントシートはゆったりと作られ閉塞感はほとんどない。インパネと色を合わせたブラウンのシートベルトがオシャレ

従来的な価値観でいうと、ユーザーがもっとも気になるであろう航続可能距離は、WLTCモードで283km、JC08モードで308kmと発表された。こまめな充電が必要となるが、パナソニックと共同開発した新型リチウムイオンバッテリーは電気の出し入れ性能に優れたものとなっているという。急速充電を活用すれば、それなりの長距離ドライブにも対応できそうだ。このバッテリー特性からすると急加速などでのパワフルさも期待できるのではないだろうか。

リアシートは2人乗員。背もたれ部分は前へ倒して荷室を広げることができるが、分割可倒はできない

グレード展開や車両価格、発売日といった情報は後日に正式発表されるが、Honda eは全国のホンダカーズに約140台の試乗車が導入され、10月以降の稼働を予定しているとのこと。

そのほかディーラーによる車両販売だけでなく、ホンダの会員制レンタカーサービス「Every Go」にもHonda eは導入され、青山ウェルカムプラザをはじめ、東京、神奈川、大阪、福岡の各拠点に計10台が準備される。こちらは8月27日からレンタルが開始されるとのこと。

高級感ある佇まいを演出する、プレミアムクリスタルレッド・メタリック。日本仕様だけの専用ボディカラーだ

ホンダが「街なかベスト」と胸を張るHonda e、公道で試乗できる日が楽しみだ。次号ホンダスタイル(9月17日発売)では、公道試乗を含めたHonda eのさらなる詳細レポートを掲載予定。ぜひお楽しみに!

(photo:Kentaro SABASHI 佐橋健太郎/text:Shinya YAMAMOTO 山本晋也)