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【PPIHC】第99回パイクスピークは15年ぶりにコースを短縮して開催。K20ターボを搭載するスペシャルマシンが最速に

アメリカ・コロラド州にあるパイクスピークという山を舞台に、1916年から行われているパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム。毎年5月に開催されているインディアナポリス500マイルレース(インディ500)に続く、世界で2番目に古い歴史を持つレースである。

パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライムは、その名のとおり標高4302mの高さを誇る「パイクスピーク」という山に誰が一番速く駆けあがることができるかを競うレースであり、別名「The Race to the Clouds(雲へ向かうレース)」とも呼ばれている。

そのヒルクライムは、スタート地点の標高が2862m。ゴールとなる山頂は4302mだから、標高差は1440m/全長12.42マイル(約20km)におよぶコースを、1台ずつタイムアタックすることで争われる。標高が上がるにつれて酸素が薄くなる高山での走行のため、頂上付近では内燃機の出力が30%近くダウンすると言われている。

今回で99回目を数えるパイクスピークは、現地時間6月27日(日)に決勝を迎えた。アメリカホンダの社内チームは、アキュラNSXが2台、そしてアキュラTLX Type Sが2台、計4台が参戦。そのほかにもタイムアタック仕様のシビックSiや、今回が初参戦となったS2000など、多数のホンダ車が参戦をしていた。

今年最速の一台と噂されていたのが、ロビン・シュート選手(#49 2018年式 Wolf GB08 TSC-LT/アンリミテッド・クラス)である。シュート選手は2019年の同イベントで9分12秒476を叩き出して総合優勝を達成。昨年は新型コロナウィルス感染症拡大の影響でイギリスからの渡米を諦め、参戦を見合わせていたが、今年は満を持しての参戦となった。

2019年に続き、2021年も「山の男」となったロビン・シュート選手

「家のガレージにこのマシンを置いていたら、両親に邪魔だと怒られたよ。昨年は出場しなかったけれど、インタークーラーをサイドポッドにつけたり、CADでデザインした新しいエアロを装着して計算上はダウンフォースが50%もアップしたし、リアウィングも大きくしている。エンジンはリビルトしたのみで特に加工はしていないけれど、タービンを小径にしてレスポンスを重視した仕様にしている」

シュート選手は、今年のマシンについてこのように解説してくれた。

3日間行われた予選では、シュート選手らが参戦するアンリミテッドクラスの予選日のみ雨という状況で、タイムは伸び悩んだものの、それでも総合4番手となる3分55秒149のタイムをマークした。

そして迎えた27日の決勝は、前夜に山頂に降った雪で、アッパーセクションは完全に凍結路面となってしまっていた。早朝からその除雪作業も進められたが、当初に予定されていた走行開始時刻の前に競技区間短縮が検討され、全車がスタート地点からミドルセクションの終りまで、約9.29マイルでの競技に変更となった。

とはいえ天候自体も良いとは言えず、時折雪交じりの雲がパイクスピークの山にかかり、視界が遮られるような霧に悩まされながらの各選手のアタックとなった。

午前8時5分、2021年モデルのアキュラTLX Type Sによるペースカーがスタートし、99回目のパイクスピークの幕が開けた。このペースカードライバーを務めたのは、TVタレントのアント・アンステッドである。

このペースカーによる走行に続き、エキシビションクラスなどが走行を行い、その後に予選タイムのトップから順に決勝レースがスタートした。

ホンダのK20エンジンを搭載し、2019年に最速の称号である『山の男』を得たロビン・シュート選手は、ここから4番目に出走。天気が目まぐるしく変わるなか、他の車両を大きく上回る5分55秒246というタイムでチェッカーを受けた。

「参戦した全選手が頂上まで行きたかったはずだから、今年のコースが短縮されたことはとても残念だ。雲と雪があったけれど、路面も濡れていなかったので走行自体は問題なかった。限界までプッシュして、このマシンはとても力強く走ったよ。レースウィークの前の週の水曜日にようやく完成したから、走り切れる保証はなかったけれど、チームのみんなが頑張ってくれて走ることができた」

「ギアの設定ミスがあって、アッパーセクションでは2秒くらいの遅れになってしまっていたけど、問題はなかった。ピークパワーはそれほど出ていないけど、レスポンスが良くなったのが影響したね。来年はまたダウンフォースを増やす予定。あと50%上げれば、20秒タイムが縮められるという計算だよ」

シュート選手は走行後にこうコメントしてくれた。ちなみにこの日、5分台のタイムを出したのはシュート選手のみであった。

シュート選手と同じく、アンリミテッドクラスに参戦していたカナダのウイリアム・オゥーヤン選手(#13 2012 Honda Civic)は、7分9秒960をマーク。記録は総合14位(クラス3位)となった。

「自分のできるだけの速さで走った。とてもよかったし、楽しかった。このグループの中ではそこそこいいタイムを出せたこともよかった。満足している」

オゥーヤン選手はこのように話してくれた。

この日最初の走行グループであるエキシビジョンクラスで参戦したホンダの社内チームのニック・ロビンソン選手(#173 2017年式 Acura NSX)は、7分14秒704を記録して総合16位/クラス2位となった。

「今日はロアセクションで予選よりも2秒速かった。それにミドルセクションではドライビングミスがあったり、霧のせいでプッシュすることができなかった部分はあるけれど、無事にクラス2位になることができた。それにこのクラスで一緒に走ったジョーダンもいいタイムで走ることができて、ホンダの2台が表彰台に上がることができた。これは素晴らしいことだ」

ニック・ロビンソン選手は、チェッカー後にこう話してくれた。そして今回、市販車のコースレコードを塗り替えることを狙っていたことについては、このようにコメント。

「コースが短縮したからね。でも今回2台が僕の持っているFF最速記録をブレイクすることを目指してやってきていたから、これが破られず保持することができたわけだからOKだよ」

いっぽうジョーダン・ギター選手(#735 2021年式 Acura TLX)は、7分53秒615をマーク。総合27位/クラス3位となった。

ジョーダン・ギター選手

「天気は予想しなかったものだったけれど、最善を尽くしたよ。路面温度は想定よりも低くて、それにデブリー(砂などの異物)が多かった。天候は、途中のエルクパークを過ぎたところで霧が出たくらいで、特に問題はなかった。クルマは良かったし、いいレースができた」と、ギター選手はコメントしてくれた。

タイムアタック1クラスに挑んだジェームズ・ロビンソン選手(#902 2019年式 Acura NSX)は、7分28秒766のタイムで総合20位(クラス4位)。

ジェームズ・ロビンソン選手

「路面はハーフウエットだったのだけれど、僕はドライタイヤで走行したためチョー厳しいレースだった。走行はずっとドリフトしまくってタイムは想定していたよりも遅くなってしまった」とコメント。

もう1台のアキュラ TLXでオープンクラスに参戦したジャスティン・ランバート選手(#113 2021年式 Acura TLX)は、8分0秒213で総合36位(クラス9位)。

「とても楽しかった。コースが短縮されてしまったことと、自分の出走順が遅くなってしまったのは残念だったけど、今日のレースを心から楽しめたし、タイミングが良く霧もなかったし、とてもスリッピーなドライブだったけれど車両は何の問題もなかった。とにかくドライブを楽しめて満足しているよ」と、この決勝を振り返った。

「せっかく来たのだから、最後まで走りたかったけれど、こればっかりはしょうがない。でもレースはすごく良かった」

そう語ってくれたのは、ルーキーとして参戦したブレット・ディッキー選手(#29 2000年式 Honda S2000)である。結果は7分58秒078で総合31位(クラス6位)となった。

ブレット・ディッキー選手

こうして99回目の大会も終わり、次は100回目の記念大会となる。第100回パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライムは、2022年6月27日(日)に決勝を迎える予定となっている。

(photo&text:Yoshiaki AOYAMA 青山義明)