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【ホンダアクセス】『ホンダファンを裏切ってはいけない』フィット e:HEV Modulo Xのすべてがこの言葉に【後編】

現行フィットに追加された待望のスポーティグレード、フィット e:HEV Modulo X。Modulo Xとはホンダアクセスが開発を手がけるコンプリートカーシリーズであり、単に純正アクセサリーパーツを装着しただけでなく、車両トータルでの「走りの質感」を高めたモデルとなっている。

そのメディア向け試乗会は、東京・青山の本田技研工業から群馬サイクルスポーツセンター(郡サイ)への高速および一般道、そして群サイ内でのクローズドコース試乗という2本立てで行われた。

7月某日の朝に東京・青山を出発、郡サイへの道中ではベース車両の現行フィットと乗り比べることもできたが、主に高速道路で感じられたのはフィットe:HEV Modulo Xの「硬質さ」だった。もちろんその乗り味はスポーティと言い換えることもできるが、これまでのModulo Xと比べても、その性格の強調具合が高いように感じられたのだ。

そのあたりを、パフォーマンス全般を見ているホンダアクセスの湯沢峰司さんにぶつけてみると、意外な回答が返ってきた。

【ホンダアクセス】待望のフィットe:HEV Modulo Xを公道試乗。実効空力が生み出したスタイリングにも注目【前編】

【ホンダアクセス】フィット e:HEV Modulo Xの走りを公道でチェック。開発陣が拘り抜いた「Moduloらしさ」【中編】

土屋さんに『ホンダファンを裏切ったらダメだよ』と言われたのです

土屋さんというのは、Moduloの開発アドバイザーを務める土屋圭市さんのことである。フィットe:HEV Modulo Xにおいても、ユーザー目線でのアドバイスをするなど開発におけるキーマンのひとりだ。湯沢さんによれば、もっと高速巡行での乗り心地をよくするようなセッティングも可能だし、当初はそうした方向でフィットe:HEV Modulo Xの開発は進められていたという。

「ある意味でオールマイティな方向にしていました。でも、そこで土屋さんにお灸を据えられたんです」

その言葉が支えとなり自信となって、開発陣は”ホンダファンが期待するスポーツ性”を重視した方向に舵を切った。多少、固さは感じたとしても実際に乗員が感じる揺れを抑え、本当の意味での快適性を狙った。

「これまでModulo Xは、クルマ酔いしづらいという評価がありました。その評価を数値化すると、不快な共振を抑えるという風に定量化できます。今回は、そうしたノウハウもしっかり投入しています」

湯沢さんはそう話してくれた。実際、段差を超えたときの『トン』といった入力は、ベース車両に比べてやや大きめにも感じられるフィットe:HEV Modulo Xだが、そこからは一瞬で収束が収まる。しばらく揺れが残るベース車両とは対照的だ。本当の意味での「快適な走り」を考えたセッティングといえる。

そして、しっかりとしたハンドリングとマイルドさの両立においてポイントとなったのが、フィットe:HEV Modulo X専用にデザインされたアルミホイールだ。

スポークデザインはSUPER GT・GT500クラスを走るModulo NSX-GTのそれを踏襲しているものだが、決して剛性を高めること一辺倒の設計となっているわけではない。ホイール設計エンジニア自身もテストコースで開発中のマシンに乗りこみ、ハンドリング面においてホイール設計がやれることを感じ取った。スポークの厚みを適切にコントロールすることにより、しなるホイールを生み出したのである。

感覚的にいえば、削りたての鉛筆の先端のようなシャープな走りをダンパーや実効空力と呼ばれるエアロパーツで生み出し、アルミホイールで先を少し丸めているといったイメージだろうか。ベース車両であるLUXEの純正ホイールと比べ、1本あたり2.9kgも軽量化している点は、このホイールの機能面におけるトピックだ。

ずいぶんと前置きが長くなってしまった。いよいよ群サイを走らせてみよう。ここでもベース車両と乗り比べることができたが、群サイ特有のギャップのある路面での追従性やいなし、コーナリングの素直さなど、すべての面においてフィットe:HEV Modulo Xはベース車両とは比べ物にならない走りを見せてくれた。

ステアリングに対する反応は明らかにシャープで、それでいてリアの接地性が高いから安心して旋回できる。ストロークスピードを上手くコントロールしていることで、後輪のアウト側でしっかり踏ん張り、さらに内輪の接地性も高いと感じられた。

トラクション性能も高く、上りのコーナーでのアクセルを踏み込めるポイントが早くなっていた。切り返しで一瞬フワっと浮き上がるようなコーナーでも、標準車ではアクセルを踏めない空走区間があるのだが、Modulo Xならばすぐにアクセルを入れて加速体勢に入れる。

フィット e:HEV Modulo Xのメーカー希望小売価格は、286万6600円。フィットとしては高価に思えるかもしれないが、群サイで見せた身のこなしを考えればコストパフォーマンスは非常に高いと思える。この走りでいえば、300万円級の価値はあるといえる。

フィットe:HEV Modulo Xの内装は、ボルドー×ブラックのほかブラック一色もラインナップされる

ところで、群サイまでの道のりを試乗したフィット e:HEV Modulo Xと、群サイで試乗した車両は別の個体だった。あまりにもコーナリングが楽しいものだから、じつは群サイ用のフィット e:HEV Modulo Xだけは違うタイヤを履いているんじゃないか?とさえ思った。

怒られるかもしれないと思ったが、Modulo Xの走りを統括するホンダアクセスの福田正剛さんに、そんな感想を述べたところ『ああ、土屋さんも同じことを言っていましたよ。そう4回くらい確認したかな』とのこと。土屋圭市さんでさえ、ブラインドテスト的に試乗したときにはタイヤを変えたと感じるくらいグリップ感が上がっている。

装着されていたのはヨコハマ・ブルーアースAというエコ系タイヤだが、その性能をしっかりと引き出しているからこその走りなのだろう。ABSの介入もほとんど感じられなかったのは、四輪の荷重バランスを実効空力で整えた効果でもある。

試乗当日の天候は雨で路面はウェット、濃い霧が出ていて場所によってはコーナーの先が見えないほどだった。そんな悪コンディションにおいてスピードメーターが100km/hを超えても、何の不安も感じなかった。それほどの信頼関係が結べるパートナーとして、フィット e:HEV Modulo Xは仕上がっていたのだ。

そして福田さんは「Modulo Xは常に進化しています」とも語ってくれた。かの有名なスポーツカー・ブランドは、昔から「最新は最良」と評されることが多い。Modulo Xにおいても、最新モデルには最高に知見が注入された最良の仕上がりとなっているということだ。

昔からのホンダファンが、コンパクトハッチのスポーティモデルに期待するキビキビ感と、現代的な要求を満たすスタビリティ。それらを両立しているのが、フィット e:HEV Modulo Xなのである。

(text:Shinya YAMAMOTO 山本晋也)

FIT e:HEV Modulo X 製品サイト
https://www.honda.co.jp/Fit/modulox/