Honda好きが堪能できる、Hondaスピリッツ溢れる情報誌
  1. TOP
  2. MOTORSPORTS
  3. 【SPOON】市販車のシビック・タイプRをベースにレースカーを製作、サンダーヒル25時間レースでクラス優勝!!【FK8】

【SPOON】市販車のシビック・タイプRをベースにレースカーを製作、サンダーヒル25時間レースでクラス優勝!!【FK8】

ホンダ車用チューニングパーツの開発・販売で知られるSPOON(スプーン)は、2021年12月3-4日にアメリカ・カリフォルニア州の「サンダーヒル・レースウェイ」にて開催された『サンダーヒル25時間レース』に、FK8型シビック・タイプRで出場。全38台が参戦したレースにおいて総合10位、そしてE0クラスで優勝を達成した。

『サンダーヒルズ25時間レース』とは、アメリカのNASA(National Auto Sports Association)が運営する25時間の耐久レースで、毎年12月最初の週末にカリフォルニア州北部のサンダーヒル・レースウェイにて開催される。昨年は新型コロナウィルス感染拡大の影響で中止となり、2021年は1年ぶりのレース開催となった。

参戦車両は幅広く、プロトタイプカーやNASCARマシンといった純レーシングカーを頂点に、BMW M3(E46など)やシビック・タイプRなどのミドルクラスツーリングカー、MX-5ミアータ(マツダ・ロードスター)などのコンパクトカーと、様々な年式の車両が参加する。

参戦車両は車重やエンジンパワー、タイヤの種類やチューニングの度合いに応じ、主催者が定めた計算式を用いてクラス分けが行われる。そのため例え車種が同じシビック・タイプRであっても、別々のクラスで走ることもある。

今回、SPOONのシビック・タイプRが参戦したのは、市販ツーリングカーとしては最高位となるE0クラス。さらに上位のES/ESRは、プロトタイプカーやNASCARのストックカーなど、純レーシングカーが参戦するクラスだ。

参戦マシンは2017年式シビック・タイプRで、左ハンドルであることからわかるように現地の北米仕様。ナンバー付きの市販車両をベースに、NASAの定める規則に則ってロールケージや安全タンクなどを装備。外装はSPOON製前後バンパー、クレーンネックウィング、エアロミラーを装着し、レーシングカーに仕立て上げた。

脚まわりではKW製レース用別タンク式3Wayダンパー、HPD製調整式リアアッパーアーム、RV6製調整式リアロワアーム、トーコントロールアーム各種調整式アームを装着し、耐久性の向上とアライメントを最適化。そのほかSPOON製の試作LSD、SPOON製ドライブシャフトも装備する。

ブレーキまわりでは純正のブレンボ製キャリパーと、パラゴン製前後ベルハウジングローターの組み合わせ。ブレーキパッドはエンドレス製の長時間耐久レース用スペシャルを使用する。ホイールは市販製品のSPOON SW388で、タイヤはヨコハマA052の265/35R18を装着。

エンジンは主に耐久性の向上を目的としたチューニングを行い、HONDATA製フラッシュプロで制御する。最高出力330PS/6300rpm、最大トルクは485Nm/4200rpmとのこと。

またFK8型シビック・タイプRは、純正6MTの耐久性が低いことが事前のテストにて判明しており、長時間の耐久レースを考慮してQuaife製シーケンシャルミッションへと換装。通常であればMotecでエンジンとの協調制御を行うところ、HONDATA社の全面協力のもと、同社製フラッシュプロでシーケンシャルミッションも制御を行っているという。

今回、サンダーヒル25時間耐久レースに挑むSPOONチームのドライバーは計7名。左から順にSPOONチームからスーパー耐久シリーズに参戦経験豊富な中島保典選手、松井猛敏選手、ターザン山田こと山田英二選手、SPOONの創業者である市嶋 樹選手、アーロン・ワン選手、キャメロン・パーソンズ選手、そしてアメリカを拠点にレース活動を行っている吉原大二郎選手

SPOONでは以前にもサンダーヒル25時間耐久レースへ参戦を行っているが、今回の参戦は8年ぶり。参戦車両であるシビック・タイプRは、レースに先立って11月上旬にラスベガスで開催されたSEMAショーに出展、SPOONが日本総代理店を務めるHONDATA社のブースで展示された。

日本からもSPOON、そしてTYPEONEのスタッフが渡米してチームへ合流。温暖なカリフォルニアとはいえ、サンフランシスコ北東の山岳地域に位置するサンダーヒルの朝晩は厳しい冷え込みとなる

SEMAショーの閉幕後は、陸路でラスベガスからバトンウィロー・レースウェイへと輸送。11月12日~14日に開催された『グローバルタイムアタック』に、シェイクダウンを兼ねて参戦した。各部の動作確認やベースのセットアップを煮詰め、耐久レース車両ながらクラス4番手という好成績を収めた。

その後はサンダーヒル25時間耐久レース参戦に向け、日本からメカニックやスタッフも渡米してチームへ合流。2021年12月2日の木曜日のフリー走行から、レースウィークがスタートした。

初日のフリー走行で、さっそくミッションマウント破断というトラブルに見舞われるもメカニックがすぐに修復、順調にセットアップを進める。翌12月3日(金)の夕方16時30分より予選がスタートし、SPOONチームは山田英二選手がタイムアタックを担当。1分59秒345という、クラス2番手のタイムをマークした。

そして2021年12月4日(土)の午前11時、いよいよ決勝レースがスタート。フィニッシュは25時間後、翌日曜日の12時だ。予選に続いてスタートドライバーを担当した山田英二選手は、スタート直後のアクシデントもスムーズに避けて安定した周回を続け、松井選手に交代。スタートから2時間経過後にはクラストップに浮上した。

スタートから約7時間が経過した時点で、95号車SPOONシビック・タイプRはE0クラストップを走行。しかし日暮れと共に周辺には霧が立ち込め、濃霧による視界不良のためレースは一旦中断された。翌朝、夜が明けると霧が晴れ始め、朝5時からレースは再開。フィニッシュ時間は当初の12時から15時へと延長されることも発表された。

レース再開後も、95号車SPOONシビック・タイプRはトラブルなく周回を重ね、最終スティントのドライバーはSPOONファウンダー・市嶋選手。安定した走行を重ねて15時にチェッカーフラッグを受け、出走38台中総合10位、E0クラス優勝を果たした。

濃霧のため約8時間の中断はあったが、レースは3時間の延長を含めて計20時間。この走行中に95号車SPOONシビック・タイプRにマシントラブルは無く、給油とタイヤ交換のルーティンピット作業のみでレースを終えた。接触やコースオフも一切なし、ドライバー、メカニックともにパーフェクトなレースとなった。

優勝トロフィーを掲げる、SPOONファウンダー・市嶋 樹選手

前述のように、今回の参戦車両・95号車SPOONシビック・タイプRは、ナンバー付きのストリートカーをベースに製作されている。

アメリカでは、ホンダ・パフォーマンス・デベロップメント(HPD)がFK8型シビック・タイプRのレーシングカー「HPD CIVIC TYPE R TC RACE CAR」を市販しているが、SPOONではあえて自分たちでレース車両をイチから製作するという手法をとった。

その理由は、市販されているレーシングカーを購入してレースを行っても、ベース車両の特性(長所&短所)が理解することは難しいからだという。

今回、SPOONチームスタッフが着用したTシャツ。SPOON創業者である市嶋氏が70歳を迎えたことを記念し、サンダーヒル25時間レースの数字を足すとゼッケン95になるというスペシャルロゴと共に戦ったメモリアルレースだった

ホンダ車用チューニングパーツを開発・販売するSPOONでは、レースに参戦し続ける理由のひとつに『真にユーザーが必要とする製品を開発するための最適解を得る』ことを掲げている。レース活動とは自社のパーツ開発に繋がるものでなければ、知見を蓄えることができないし、またSPOON製品を愛するホンダ車オーナーへのフィードバックも行えないというブレない信念だ。

今回、8年ぶりとなるサンダーヒル25時間耐久レースに参戦し、そしてEOクラス優勝というすばらしい成績を収めたSPOON。FK8型シビック・タイプRはもちろん、FL1型シビックや2022年に登場する新型シビック・タイプRに向けて、今後どんなオリジナルパーツを開発しリリースしてくるのか、ますます目が離せなくなりそうだ。

(photo:SPOON text:Kentaro SABASHI 佐橋健太郎)