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【名車図鑑】モータースポーツでも大活躍! 軽量ボディに高性能エンジンを搭載した2代目シティ【GA1/GA2】

2022年現在、ホンダのコンパクトカーといえば「フィット」だが、フィットの初代モデルが登場したのは2001年のこと。シビックやアコードといったモデルに比べれば、まだまだその歴史は短い。

では、フィット登場以前にホンダはどんな小型車をラインナップしていたのだろうか? まずは1代限りとなってしまったが「ロゴ(1996-2001)」というモデルがあった。そして、そのロゴ以前のコンパクトカーが「シティ」である。

トールボーイスタイルの車体が特徴の初代シティ。折り畳めば荷室にピッタリ入る50ccバイク「モトコンポ」も同時に発売された

ホンダ・シティといえば、独創的なCMを思い出す人も多いことだろう。1981年11月に販売が開始された初代シティは、当時のシビックが車格アップしたことに伴い、1.3リッタークラスのコンパクトカーとして登場した。

ベースモデルの車体は全長3380×全幅1570mmと、2022年の現代では軽自動車より少しだけ幅が広いサイズに抑えつつ、全高は1470mmとルーフ高をたっぷり確保。「トールボーイ」と呼ばれた独特のボディスタイルや、愛嬌たっぷりの丸目ヘッドライトなどが人気を集めた。ターボ/ターボⅡやカブリオレなど、派生モデルの豊富さでも印象に残る。

そんな初代シティがフルモデルチェンジを受け、2代目へと進化したのは1986年10月のこと。「才能のシティ」というキャッチコピーと共に登場した新型シティは、若年層をターゲットとする基本コンセプトは不変ながら、車体デザインは180度転換した。

1986年10月に登場した2代目シティ。3ドアハッチバックというボディ形状以外はガラリと路線変更。写真はGG(ダブルG)グレード

ボディバリエーションは3ドアハッチバックのみで、初代シティが「トールボーイ」スタイルを採用したのに対し、2代目ではロー&ワイドの「クラウチング・フォルム」へと路線変更。ヘッドライトも丸目から角形へと変更された。

ボディの4隅にタイヤを配置したことにより、室内長1675×室内幅1315×室内高1105mmのゆとりある車内空間を実現。ラゲッジスペースは後席使用時でも147Lを確保した

直線基調のフォルムは空力性能にも優れており、走行時の風切り音の低減や燃費性能に貢献。エンジンはD12A型1.2リッター直列4気筒SOHCが搭載され、4速AT車での10モード走行燃費は、国産小型車ではトップクラスとなる18.0km/Lを達成している。

SOHCながら各気筒に4つの吸排気バルブを持つD12A型エンジン。オートバイメーカーでもあるホンダの面目躍如だ

このD12A型エンジンは燃費性能に優れるだけでなく、SOHCでありながら各気筒に4バルブヘッドを備えるという、当時としては国産車初の機構を備えて最高出力76PS/6500rpmを発揮。トランスミッションは5速MTあるいは4速ATが組み合わされ、標準モデルで680kgという軽量な車体とも相まって高い運動性能を誇った。

2代目シティのコックピット。グレードはBB(ダブルB)、EE(ダブルE)、そして写真のGG(ダブルG)という3種類

そして2年後の1988年10月、シティはマイナーチェンジを受けて後期型GA2へと進化。外観デザインもヘッドライトまわりを中心に洗練化されたが、最大の変更点はエンジンに1.3リッターのD13C型直列4気筒SOHCが追加されたことだ。

このD13C型エンジンは、従来のD12A型をベースに排気量を1296ccまで拡大したユニットで、GA2にはキャブレター仕様と、電子制御式フューエルインジェクションのPGM-FI仕様が存在。キャブレター仕様は最高出力82ps/最大トルク10.5kg-m、PGM-FI仕様は最高出力100馬力/最大トルク11.6kg-mを発生した。

1988年、D13C型エンジンを搭載したGA2が登場。CR-iやCZ-i(写真)は100PSを発揮するPGM-FI仕様を搭載した

GA2ではグレード名も変更され、1.2リッターのD12A型シングルキャブレター仕様を搭載する「BE」、1.3リッターのD13C型シングルキャプを搭載するのが「CE」と「CG」。そして同じくD13C型エンジンのPGM-FI仕様を搭載するのが「CR-i」および「CZ-i」という構成となった。

販売上のメインとなったのはベーシックグレードである「CE」だが、クルマ好きの琴線を刺激したのはPGM-FI仕様のD13C型エンジンを搭載するCR-i、CZ-iの2グレードだった。なかでもCR-iは、CZ-iの装備を簡素化した軽量ボディが魅力で、ワインディングはもちろんのこと、ダートトライアルやジムカーナといったモータースポーツでも大活躍した。

後期型GA2、CZ-iのコックピット。基本的にGA1とデザインは共通だが、ステアリングは3本スポークタイプが与えられた

しかしモータースポーツでの活躍とは裏腹に、本来のフィールドであるストリートでは販売台数を伸ばすことができず、1989年以降はベースグレードである「CE」の特別仕様車を毎年のように販売。1989年には、装備を充実させたお買い得グレード「CITY Fit」が発売される。

1989に追加されたCITY Fitは1990年に小変更。Fitというグレード名は、シティの後継モデルであるロゴを挟み、のちに車名として復活する

CEグレードを中心に特別仕様車が発売されるいっぽう、スポーティ仕様のCR-iやCZ-iはモデルライフを通じて大きな変更はなく、1989年10月に「CR-i」をベースに上級装備が与えられた「CR-i Limited」が設定されたくらい。

1989年10月に発売されたCR-i Limited。5速MTのほか4速ATも設定された

1990年5月には、CR-iとCZ-iの違いを明確にすべくラインナップの整理が行われ、CR-iは5速MTのみとなった。同じ100PS仕様のD13C型1.3リッター直列4気筒SOHCを搭載するCZ-iは、より装備が充実した上級指向が強められ、5速MTのほか4速ATも引き続き設定された。

このように知る人ぞ知る「走りの良さ」が魅力だった2代目シティだが、先代モデルとは真逆のコンセプトとなった外観デザインや、ターボやカブリオレといった派生モデルが設定されなかったことなど、遊びの要素が多かった先代に対してマジメすぎたことも原因となり、コンパクトカーとして商業的成功を収めることはできなかった。

PGM-FI仕様で最高出力100PS/6500rpm、最大トルク11.6kg-m/5500rpmを発揮したD13C型エンジン

しかしながら、最終後期でもベースモデルCEが86万8000円〜94万8000円と100万円を切る価格設定となっていたこと、さらに随一のスポーツ性を誇ったCR-iが102万1000円で販売されていたことは、とくに若年層に向けて「スポーツハッチ」の楽しさを伝えた功績は大きい。

残念ながら、GA2以降に日本国内で「シティ」の車名を持つモデルは販売されていないが、ホンダのスポーツモデルを語るうえで欠かすことのできない1台といえるだろう。

(text:Kentaro SABASHI 佐橋健太郎)