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【名車図鑑】洗練されたデザインの3ドアハッチバックにK20Aを搭載! 高い実用性を兼ね備えた「等身大のタイプR」

ホンダが誇るタイプRシリーズのうち、サブネームが与えられた唯一のモデルが「シビック・タイプRユーロ」だ。FN2の型式で呼ばれるこのモデルは、2021年現在ではタイプRとして最後の3ドア・ハッチバックであり、また自然吸気エンジンを搭載したタイプRとしても最後のモデルとなっている。

ファンの要望に応えるべく欧州仕様を”輸入販売”

シビック・タイプRユーロが日本市場に導入されたのは、2009年のこと。シビック・タイプRは1997年に初代のEK9型が発売され、2001年には2代目となるEP3型が欧州より輸入販売。そして2007年には3代目となるFD2型が登場した。

しかしFD2型では、ボディ形状が4ドアセダンへと一新されたこともあり、『タイプRといえば3ドアでしょ』というファンの声も少なくなかった。そんなファンにとって注目の存在だったのが、FD2と同時期に欧州で販売されていたFN2型である。

2000年代に入ってからというもの、日本国内市場ではミニバンやSUVの人気が加速し、反対にハッチバックの人気は停滞していた。いっぽう、ハッチバックの本場ともいえる欧州市場では人気が健在。シビック・タイプRも、EP3型の後継モデルとして同じ3ドア・ハッチバックのボディ形状を持つFN2型が、イギリス・スウィンドン工場にて生産されていた。

そのFN2型を、EP3型と同様に「輸入車」として日本へ導入したのがシビック・タイプRユーロである。日本国内では、すでにFD2型シビック・タイプRが販売されていたため、欧州生まれであることを表す「EURO」が車名に付けられた。

2010+1500=3510台が日本国内で販売された

シビック・タイプRユーロのボディ形状は3ドア・ハッチバックで、サイズは全長4270×全幅1785×全高1445mm。先代モデルにあたるEP3型は、日本でいう5ナンバーサイズであったため、車体はひとまわり大型化された。

セダンボディのFD2と比較すると、FN2は車幅こそ15mmワイドだが、全長は270mm、ホイールベースは65mm短い。FN2の車両重量は1320kgで、EP3からは130kgの増加、FD2と比べても60kgのアップとなっている。

先代EP3と比べてホイールベースは65mm延長されて2635mmとなり、室内空間はさらに拡大した

2009年に2010台限定で発売されると、FD2型に比べて約15万円アップとなる298万円という価格ながら、瞬く間に完売。この2009年モデルのボディカラーは、ミラノレッド、アラバスターシルバー・メタリック、そしてチャンピオンシップホワイトの3色が用意された。

そして翌2010年には外観の一部を変更し、2010年モデルとして1500台を追加販売。新たにクリスタルブラック・パールが設定され、ミラノレッド、チャンピオンシップホワイトは継続された。

2次バランサーを備えたK20Aユニット。海外ではK20Zの表記も見られるが、ホンダでは日本仕様を「K20A」と公式表記している

搭載されるエンジンは、2リッターDOHC i-VTECのK20A。ただしFD2やEP3、DC5型インテグラ・タイプRに搭載されたK20Aとはスペックが異なり、2次バランサーを備えた仕様。

最高出力は201ps/7800rpm、最大トルクは19.7kg-m/5600rpmで、これはK20Aを搭載するタイプRのなかでもっとも大人しい。前述のように車重はFD2と比べても増加しているため、そのパフォーマンスについては発売当時から様々な評価がなされてきたが、2次バランサーの恩恵もあってか、回転上昇のスムースさについては唯一無二といってもいい。

それもそのはず、ホットハッチの本場である欧州で絶大なる評価を受けた「タイプR」であるから、レブリミットである8000rpmまで一気に吹け上がる爽快さは格別。EK9やFD2の日本産タイプRが「サーキットベスト」を謳うなら、欧州産タイプRであるEP3やFN2のホームグラウンドは郊外のカントリーロードやワインディングといえる。

円をモチーフにデザインされたインパネまわり。EP3で採用されたインパネシフトは、やや標準的な位置へと戻された

半円形のダッシュボードが印象的なコックピットまわりは、ブラック×レッドを基調としてデザイン。プッシュボタン式のスタートスイッチやアルミ製の球形シフトノブなど、タイプRに共通する意匠でまとめられる。

シートはホンダ社内で設計されたという「R spec」シートを採用。ヘッドレスト一体式でサイドサポートが大きく確保されており、スポーツドライビング時にもドライバーの身体をしっかりと支えてくれる。足もとにはメタル製スポーツペダル&フットレストが備わる。

「タイプRの作法」というべき、RECAROシートやブレンボ製ブレーキキャリパーが備わらない点はやや寂しさを感じるものの、「Type R」のロゴが刻まれた専用キャリパーや、225/40R18サイズのブリヂストン・ポテンザRE050といった装備は、ワインディングベストを目指したシビック・タイプRに相応しい内容といえるだろう。

タイプRシリーズ中でも随一となる高い実用性

クリスタルブラック・パールの外装色は2010年モデルのみ。車内には2010年モデル専用のシリアルプレートが付属する

標準モデルをベースに、運動性能をとことん研ぎ澄ませた「タイプR」シリーズにおいて、シビック・タイプRユーロの立ち位置は少し異質だ。公道では硬すぎると評された脚まわりを持つFD2は別格としても、先代モデルであるEP3と比べて最高出力&最大トルクともにパワーダウンし、車両重量は増加している。

さらにリアの脚まわり形式はトーションビーム式となっているなど、スペックを見る限りソフト路線という印象を受けるFN2だが、その走りは「タイプR」の名にふさわしいもの。VTECが切り替わる5400rpm以降は弾けるような加速が味わえる。硬派路線のタイプRとは違う「等身大らしさ」は、FN2ならではの魅力といえる。

もうひとつFN2ならではの魅力は、実用性の高さだ。センタータンクレイアウトを採用したボディは、圧倒的な車内空間を実現しており、リアシートには大人2人が快適に座れるスペースを確保。そのリアシートはダイブダウン収納することができ、フルフラットな床面を持つラゲッジスペースを作り出すこともできるのだ。

販売終了から10年以上が経過したシビック・タイプRユーロだが、2022年現在の中古車市場では、100万円を少し超えるくらいから見つけることができる。もっとも高い個体でも280〜300万円と、中古車相場が軒並み高騰しているタイプRシリーズにおいては、比較的身近な存在といえるだろう。

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2009 CIVIC type R Euro
SPECIFICATION
□全長×全幅×全高:4270×1785×1445mm
□ホイールベース:2635mm
□トレッド(前/後):1505m/1530mm
□乗車定員:4名
□車両重量:1320kg
□エンジン型式:K20A型直列4気筒DOHC i-VTEC
□ボア×ストローク:86.0×86.0mm
□圧縮比:11.0
□排気量:1998cc
□最高出力:201ps/7800rpm
□最大トルク:19.7kg-m/5600rpm
□燃料タンク容量:50リットル
□トランスミッション:6速MT
□10・15モード燃費:11.6km/L
□ブレーキ形式(F/R):油圧式ベンチレーテッドディスク/油圧式ディスク
□サスペンション方式(F/R):マクファーソン式/車軸式
□タイヤサイズ(F&R):225/40R18
□新車時車両価格:298万円(税込)
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(text:Honda Style web)