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【S-Formula】決勝直前に突然の雨。ウェットレースでも野尻選手は安定した走りを披露。笹原選手は大きく順位をアップ

2022 SUPER FORMULA 第7戦(モビリティリゾートもてぎ)
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#1 野尻智紀(TEAM MUGEN)
予選:4位
決勝:3位

#15 笹原右京(TEAM MUGEN)
予選:12位
決勝:7位
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2022年8月20-21日、全日本スーパーフォーミュラ選手権・第7戦&第8戦が栃木県・モビリティリゾートもてぎにて開催された。シリーズもいよいよクライマックスを迎え、終盤の4戦は土日それぞれに予選・決勝を行うダブルヘッダーとして開催される。

8月20日(土)に予選および決勝が行われた第7戦では、急変した天候をものともせず、山本尚貴選手(TCS NAKAJIMA RACING)がポール・トゥ・ウィンを達成。シリーズチャンピオン争いを大きくリードしている1号車・野尻智紀選手(TEAM MUGEN)は、決勝レースではウェットタイヤを巧みにマネージメントし、一時は2位のライバル直後まで迫り猛アタック! 惜しくも攻略はならなかったが、その後も安定した走りで3位表彰台を獲得した。

チームメイトの笹原右京選手は、不運に終わった予選を吹き飛ばすかのような快走を披露し、7位でチェッカーフラッグを受けた。

予選Q1はA&B組どちらもTEAM MUGENがトップ通過!

2022年7月に開催された第6戦から約1ヶ月のインターバルを挟み、今年の全日本スーパーフォーミュラ選手権はいよいよ終盤戦に突入。全10戦で争われるシーズンのうち、第7戦&第8戦、そして第9戦&第10戦はそれぞれ同じ週末にダブルヘッダー・レースとして開催される。同日の午前に予選、午後に決勝レースという忙しいスケジュールとなるため、各チームともレースウィークの「良い流れ」を早く掴みたいところだ。

そんな関係者やファンの願いを知ってか知らずか、第7戦(モビリティリゾートもてぎ)は、コロコロと変わる天候に各チームとも翻弄される結果となった。いつもより1日早い、金曜日に開催されたフリー走行は晴れ。しかし翌日午前の予選は、時おり晴れ間ものぞくような曇り空のもと行われた。

前戦の第6戦において、待望のスーパーフォーミュラ初優勝を実現した笹原右京選手(TEAM MUGEN)は、予選Q1のA組に出場。みごとにトップタイムで通過すると、ここまでシリーズランキングトップを堅守している野尻智紀選手(TEAM MUGEN)がB組をトップ通過と、チームとして好調さを見せつけた。

TEAM MUGENの2台によるフロントロー独占に期待がかかるなか、迎えた予選Q2。野尻選手と笹原選手は戦略が分かれ、野尻選手はユーズドタイヤを装着し、いちどピットインして新品タイヤへ交換後にタイムアタックを行う。いっぽう笹原選手は新品タイヤを装着してピットで待機し、最適なタイミングを待つ作戦となった。

ユーズドタイヤを履いてコースインした野尻選手は、プランどおりにタイヤ交換を行うためピットイン。新品タイヤに履き替えてタイムアタックへと向かっていく。続いて笹原選手もコースインするが、ライバル車両のタイヤ交換により当初に予定していたタイミングからやや遅れてしまい、コース上でタイムアタックを控えたライバル車両たちの隊列に引っかかってしまう。

なんとか予定どおりにタイムアタックを行えた野尻選手は、1分30秒813で4番手グリッドを獲得。いっぽう笹原選手は、なんとアタックラップに入る直前でチェッカーフラッグが振られてしまい、タイムアタックができず。12番グリッドから決勝レースに臨むこととなった。

予選Q1の走りは、ポールポジション争いの中心となるのでは?と思えるほどマシンの仕上がりの良さを見せていただけに、ドライバーやチームはもちろんファンとしても予想外の結果。12番手からのスタートとなるが、そのスピードは実証済みであるだけに、決勝レースでは後方からの追い上げが予想された。

スタート直前に降り出した雨がレースのゆくえを左右する

午前中に行われた予選では、曇り空ながら時折り日差しも顔を覗かせ、蒸し暑さを感じさせる気候だったが、決勝レースが近づくにつれ徐々に上空は暗くなり、ひんやりとした風が吹くようになる。それでも雨は降ることなくスタート進行を迎えたが、全マシンがグリッド上への整列を終えてフォーメーションラップまで残りわずかというころ、ついに大粒の雨が降り出した。

スタート直前に降り出した雨により、全車がグリッド上でウェットタイヤに交換して決勝レースがスタート

コース上はあっというまにフルウェットとなり、主催者からは「ウェット宣言」が出される。そして全マシンがグリッド上にてレインタイヤへと交換を行い、セーフティカーの先導により決勝レースがスタートした。ウェット宣言下であるため、決勝レース中におけるタイヤ交換義務はなくなった。このまま路面状況に変化がなければ、義務ピットインは行われずコース上のみのスピードバトルとなる。

セーフティカーによる先導や約3周に渡って行われ、3周目終了直前にグリーンフラッグ。とくに大きな混乱はなく、各マシンは水しぶきを上げながらスタートどおりの順位で1コーナーへと飛び込んでいく。4番手スタートの野尻選手もしっかりとポジションをキープした。いっぽう12番手スタートの笹原選手は、不完全燃焼に終わった予選の鬱憤を晴らすかのように前方のライバルたちへアタックを仕掛けていく。

予選1-2番手の山本尚貴選手と、サッシャ・フェネストラズ選手の2台が先頭を引っ張り、やがて3位の大湯選手と4位の野尻による3位争いが激しくなる。依然として雨が降ち続けるなか、2台はテール・トゥ・ノーズのバトルを演じるが、14周目に大湯選手のマシンにトラブルが発生。野尻選手は3位へとポジションを上げる。

走行を重ねて燃料が軽くなってきた野尻選手は、さらにペースを上げて2位のサッシャ・フェネストラズ選手を追走。19周目にはオーバーテイクをしかけるシーンも見られたが、ここでは惜しくもポジションアップならず。その後はいったん雨が弱くなる場面もあったが、28周目の終わりにライバル車両がコースアウトを喫したことにより、セーフティカーが導入される。

このセーフティカーの導入に合わせて新品のウェットタイヤへと交換するチームも現れたが、TEAM MUGENの野尻選手、笹原選手はいずれもステイアウトを選択。約2周のセーフティカー先導ののち、30周終わりのタイミングでグリーンフラッグとなった。

このころには再び雨脚が強くなってきて、走行するマシンの後方からは「ウォータースクリーン」の名称どおり、壁のように水しぶきが巻き上がるほど。レース再開後も上位陣の順位に変動はなかったが、中団では笹原選手が1コーナーで前を走るライバルを仕留めてポジションをアップ。最終的に野尻選手は3位、笹原選手は7位まで順位を上げてチェッカーフラッグを受けた。

野尻智紀選手 レース後記者会見でのコメント

「優勝できなかったことについては、当然ですが素直に悔しさがあります。ライバルであるチームやドライバーが優勝して喜んでいる姿を見ると、どうして勝てなかったんだろうと考えを巡らすことは当然あります。ただ今日のコンディションを考えると、シリーズチャンピオン争いという部分においては、前戦に続いて表彰台を獲得できたことは良かったです」

「今日のようなレースでは、優勝を目指して攻めることでリスクは発生しますし、ポイントランキングにおけるリードの減少幅を最小限に抑えられたことは、うまくバランスさせられたと捉えています。シリーズチャンピオンへのプレッシャーは、これから大きいものになってくるんじゃないでしょうか」

「決勝レースでは、スタート直後に大湯(都史樹)選手と争っていて、彼のマシンにトラブルが発生してしまったことは彼の悔しさを考えると残念に思います。僕もしっかりとコース上で争った結果としてポジションを上げたかったという想いはあります。自分自身のレースとしては、明日に繋がる内容で良かったとは思います。明日の第8戦、天候はどうなるか分かりませんが、チームの皆としっかり話し合い、明日に向けて最大限のいい準備をしていきたいと思います」

笹原右京選手 レース後ミックスゾーンでのコメント

「まるでジェットコースターみたいな1日でしたね(苦笑)。走り出しから調子がよく、A組で出走したQ1ではトップで通過することができました。Q2ではもちろんポールポジション獲得しか見ていなくて、新品タイヤを装着してコースインのタイミングを待っていました」

「本当はもう少し、40秒くらい早めにコースインしたかったのですが、まぁレースは自分たちの都合だけで進められるものではないですからね。コースに出てからも想定していた以上にマシンが多く、渋滞に巻き込まれたみたいになってしまって。なんとかタイヤを暖めて、チェッカーフラッグが振られるギリギリでタイムアタックに入れるようチームとも調整していたのですが、残念ながらタイムアタックに入ることなく予選Q2が終了してしまいました」

「ミスというと表現がキツいかもしれませんが、原因としてはヒューマンエラーになりますし、もったいなかったですね。マシンに仕上がりには自信があったので、決勝レースではとにかく前を走る車両を抜いてやろうと、それだけを思っていました」

「とはいえ自信があったのはドライでの話で、ウェットタイヤに履きかえて決勝レースを走り出したら、予選での手応えがまるでなくて(笑)。予選でのマシンの仕上がりを100とするなら、決勝は20くらいかな。それくらい、ウェット路面では安定感に欠けるというか、フワフワした印象でした。そんななか、なんとか自力でポジションを上げていくことができたことは、自分のベストを尽くせたと思っています」

(photo:TEAM MUGEN、text:Kentaro SABASHI 佐橋健太郎)