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【新城ラリー2023】「ホンダ学園」の学生たちが作り上げた名車S800のラリーカーが疾走! 2台のCR-Zも登場

2023年も3月を迎え、今シーズンのモータースポーツシーンが各地で開幕しています。ひと足早く2月のスノーラリーからスタートした全日本ラリー選手権は、3月最初の週末となる3月3日(金)~ 5日(日)にかけ、シリーズ第2戦「新城ラリー2023 supported by AICELLO」が、愛知県新城市および岡崎市で開催されました。

今シーズンからは各クラスのクラス区分が変更となり、トップカテゴリーであるJN-1クラスは、ラリー出場のため特別ナンバー取得したFIA公認車両、JAFによるASN公認/承認車両というクラス区分となり、仮ナンバーを装着した車両で争われることとなりました(国内を走行できるナンバー付き車両はJN-2クラス以下となります)。

この大きく様変わりをした今季の全日本ラリー選手権では、久しぶりに複数のホンダ車が参戦するようです。1800cc以下のハイブリッド車両と電気自動車のAE車両に限定されることとなったJN-6クラスへは、昨年のJN-6クラスでタイトルを獲得している海老原孝敬/遠藤 彰組が、トヨタ・ヴィッツからホンダ・フィットHYBRID へマシンを変更して参戦。同クラスには、2台のCR-Zも参戦しています。

そして今回、この全日本ラリー選手権の賞典外となるオープンクラスに、一台のヴィンテージカーが参戦しました。勝田啓輔/持谷 岳組がドライブするホンダ・S800です。車両に「ホンダテクニカルカレッジ関東」とある通り、学生たちがレストアで仕上げた車両となります。

このレストア作業、もともとは東京大学とホンダテクニカルカレッジ関東が過去10年以上にタッグを組んで進めてきた「インターナショナル・ヒストリックカー・ラリー・チャレンジ」というプロジェクトで進められてきたもの。東京大学とのプロジェクトが終了したことで、ホンダテクニカルカレッジ関東の単独の「S800 レストア プロジェクト」としてリスタートし、そして出来上がった車両だということです。

1級整備士免許を目指す学生たちのプロジェクトとして、昨年4月よりS800の再生計画がスタート。譲り受けた時点では全バラ状態でしたが、走行できるまで組み上げて車検を通し、昨秋には実際にツーリングを実施。学校のある埼玉から、なんと北海道の鷹栖まで実走! 鷹栖ブルーピンググラウンドの高速周回路も走行したそうです。

このラリーでステアリングを握る勝田選手は、この「学校法人ホンダ学園 ホンダ テクニカル カレッジ 関東」の校長先生です。以前は鷹栖ブルーピンググラウンドのテストドライバー等も経験してきたそうですが、現在はステアリングを握る黒子役に徹しているとのこと。

「1年間のカリキュラムで完全レストアをして、第一ステップは北海道まで独自にコマ図を使ってラリーキャラバン形式で4日間、一般道を1700km走らせてきました。今日の場はプロジェクトの最終到達点でありアクシデントは許されないので、攻め込んで走ったわけではありませんけどいいラリーができました」

「この全日本選手権で、トラブルなどがあれば対応するということを学生たちには身をもって体験してもらい、成長の場として欲しいと思っています」とコメントしてくれました。

そしてもうひとりカギを握る人物が、このプロジェクトを指導する豊田 剛先生です。

「4月にスタートして、授業だけでなく、放課後や土日を使いながら10月に車検を取得し、厳しいスケジュールの中で学生たちが仕上げてくれました。ボディもシャシーも全バラして、エンジンもミッションもデフも全部やったという感じです。塗装を剥がすとどんどんアラが出てきて、下はほとんどすべて鉄板を作り変えてました」

「大きなプロジェクトを時間通りこなすというのは、すごく大変で行き当たりばったりでは無理です。計画をどう立てて、いつまでに何をやるという関所を立てるんですが、そういうところでメチャクチャ鍛えられます。無理だよ~というところもひとつひとつクリアしていって、と学生たちもものすごく成長しています」

無事に一年のプロジェクトを終え、感慨深そうに話してくれました。

今回の新城ラリー出場をもって、S800のプロジェクトは終了となりますが、校長先生によるとはやくも次のプロジェクトは動き始めているようです。

「S800のプロジェクトとしては終了となりますが、ここまで仕上げたクルマをここで終わらせるのはもったいない。何らかの形で次へ引き継げればと思っています」

「次のプロジェクトの課題車両はNコロ、N360です。Nなんで今回のような全日本選手権出場ではなく、冬の北海道一周ラリーでもやろうかと思っています」

N360とは、ホンダが1967年に発売した軽自動車。学生たちにしてみれば、自身の年齢はおろか親よりも年上となるであろうヴィンテージカーだ。次世代のモータリゼーションを担う若者たちが手がけるN360のプロジェクト、今後ともぜひ注目していきたい。

(photo&text:Yoshiaki AOYAMA 青山義明)

ホンダの自動車大学校 ホンダ テクニカル カレッジ
https://www.hondacollege.ac.jp