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【ACURA】かつてのOEM車両「SLX」が復活!? カスタムカー大国ならではのメーカーチューンド「レストモッド」

レストアとモディファイをくっつけた造語「レストモッド(RESTO MOD)」は、ヒストリックカーの内外装を当時の姿に美しく修復した上で、ドライブトレインには最新のメカニズムを与え、快適性やパフォーマンスを一線級にするカスタム手法のこと。カスタムカー大国であるアメリカにおいて、近年は大きなトレンドになっている。

そんなレストモッド的アプローチで、なんとアキュラが公式に1台のマシンを仕立ててしまった。名付けて「スーパーハンドリングSLX」である。

(ホンダスタイル96号に掲載)

Super Handling SLX

アメリカからとんでもないクルマの情報が飛び込んできた。1980年代〜1990年代カーのイベント『RADwood Car Show』のために、アキュラが「スーパーハンドリングSLX」なるデモカーを仕立てたというのだ。

まずは外観をじっくり見てほしい。レストモッドの流儀に則り、タイヤがインチアップされているくらいで、外観はほぼ新車当時の姿を美しく再現している。とはいえ「アキュラSLX」というクルマは忘却の彼方ではないだろうか。

現行のアキュラ各車に設定されているパフォーマンスレッド・パールをメインに、シャンパンシルバーとの2トーンにすることで懐かしさと最新技術の融合を表現した

1990年代のホンダは、SUVブーム(当時はRVブームと呼んでいたが)に乗り遅れていた。初代CR-Vがデビューするまでホンダ製のSUVは存在しないという状況で、この頃のホンダは他社からOEM供給を受けることでSUVラインナップを埋めていた。

日本でいえば、ジープ・チェロキーを輸入してみたり、ランドローバー・ディスカバリーにホンダエンブレムをつけ「クロスロード」という名前で売ってみたり、いすゞミューを「ジャズ」という名前で売ってみたりしていた。

テールゲートにさり気なく「SH-AWD」のエンブレムが貼られている

そのなかフラッグシップといえるのが、ホンダでいうと「ホライゾン」、アキュラでは「SLX」の名前で販売されていた3列シートSUVだ。ベースとなっているのは、いすゞ ビッグホーン。同社からOEM供給を受けたことにより誕生したモデルである。

エンジンは2種類で、実質的にいすゞ最後の乗用車となった3.2リッターV6ガソリンと、2リッター4気筒ディーゼルターボを設定。いすゞがロータスとコラボレーションした「ハンドリング・バイ・ロータス」仕様が、ホンダ・ホライゾンには設定されていた。

1996年モデルのアキュラSLX。外観における日本仕様ホンダ ホライゾンとの違いは、キノコミラーの有無とエンブレム類くらい

そのホンダ・ホライゾンの北米仕様がアキュラSLXとなるわけだが、当時のスペックをもう少し振り返ってみよう。

いすゞ ビッグホーンには、ロング/ショートという2つのボディがあったが、アキュラSLXとして供給されたのはロングボディのほう。日本仕様の外観では、通称「キノコミラー」な大きめのサイドアンダーミラーが目立っていたが、アキュラSLXではすっきりとした外観となっている。

搭載されるエンジンにも違いがあり、アキュラSLXでは3.2リッターのV6ガソリンエンジンのみ。トランスミッションも4速ATだけとなり、グレード展開も「SLX」と「プレミアム」というシンプルな構成となった。なお両グレードの違いは装備品のみで、ドライブトレインは同じ。

プレミアムには、レザートリムシート/専用アルミホイール/電動格納ミラー/1列目シートヒーター/運転席8WAYパワーシート/助手席4wayパワーシート/木目調ドアパネル/木目調ダッシュボード/上部液晶マルチメーターなどが標準装備される。

Super Handling SLXのベースとなったのは、アメリカ在住のアキュラ愛好家が所有していた車両。ご覧のとおりオリジナルはハンドリング・バイ・ロータスのイメージカラーでもあるグリーンメタリックだった

今回のベース車となったのは、1997年式のアキュラSLX。翌’98年にはマイナーチェンジを受け後期型へと進化するから、つまり前期型の最後期生産モデルだ。

エンジンは3.2リッターV型6気筒DOHCで、日本仕様では当時のRVとしては驚異的な200馬力を発生していたが、北米仕様は190馬力にとどまる。それでもこの時代のクロカン4WDとしてはハイパワーだった。

トランスミッションは4速ATで、エンジンは縦置きのFRレイアウトを基本としたパートタイム4WDが基本。「トルクオンディマンド」と呼ばれた電子制御フルタイム4WDの設定もあった。

……などと、そんな過去をわざわざ引っ張り出してこなくてもいいような気もするが、たしかにレストモッドのベースとしてはベストな選択といえる。年式以上にクラシカルな雰囲気を持つスクエアなスタイリングは、最新テクノロジーに置き換えられた中身とのギャップでインパクト大であろうから、だ。

純正カセットデッキが時代を感じさせるが、加飾パネルを現代風にアップデートするなどディテールでレストモッドらしさを表現。ATセレクターは最新のボタン型操作パネルに置き換えられている

もったいぶってしまったが、今回制作された「スーパーハンドリングSLX」は、かつてのSLXに現行RDXのドライブトレインを移植したもの。つまりエンジンはシビック タイプR譲りといえるK20C型の2リッターVTECターボで、トランスミッションは10速ATが組み合わされている。

さらに駆動システムは、リアの左右駆動力配分を可能にしたSH-AWDとなっている。だからこそ「スーパーハンドリング」のサブネームが与えられたのだ。

エンジン横置きのパワートレインごと移植するのは大手術といえるが、もともとのボディがラダーフレームにボディシェルを載せたフルフレーム構造であり、アメリカ的カスタム思考からすれば『収めるスペースさえあればどうとでもなる』といったところだろうか。

K20C型2リッターVTECターボそして10速ATという最新のドライブトレインをRDXから移植された「スーパーハンドリングSLX」。本来、1997年式SLXのリアサスペンション型式はリジッドアクスルだが、サスペンションは前後ともRDXから移植され、フロントはマクファーソン・ストラット式、リアが5リンク式に変更。SH-AWDユニットもまるっと換装され、四輪独立懸架の脚まわりへと進化している。

またK20C型エンジンも350hp/6500rpmまでパワーアップされ、最大トルクはじつに340lbs-ft/1600-4500r.p.m.を発揮。ドライブモードもSnow/Comfort/Sport/Sport+と4種類から選択でき、その操作はRDXから移植されたロータリーコマンダースイッチでそのまま操作できるというのも、カスタムカー好きの心をくすぐる。

また大幅に高められたパワーを受け止める脚まわりもグレードアップ。1997年式SLXのオリジナルは16インチのホイールに245/70R16サイズをタイヤを組み合わせていたが、17インチへとホイール径を拡大。前後のブレーキローターもサイズアップしている。

ハブ周りもRDXから移植されているため、1997年式SLX純正の16インチ 6穴ホイールから、社外品の17インチ 5穴ホイールへと変更。245/65R17サイズのタイヤが組み合わされた。さらにパーキングブレーキも、ドラムインディスクタイプから電磁式へとアップデートされている。

もっとも、レストモッドの中身を真面目に解説するのは粋じゃない。バリっとレストアしたボディと最新メカニズムのギャップは走らせてこそ味わえるもの。こうなると日本でも、レジェンドあたりのパワートレインを移植した「ホライゾン」のレストモッドを見てみたくなる!?

(text:Shinya YAMAMOTO 山本晋也、編集:Kentaro SABASHI 佐橋健太郎)