【S耐】まもなく登場する新型シビックRSを先行展示! 開発責任者&モータージャーナリストによるトークショーも開催
2024年9月7日(土)、栃木県にあるモビリティリゾートもてぎにて「スーパー耐久シリーズ第4戦 もてぎ5Hours Race」 が開催された。
そのモビリティリゾートもてぎのエントランスには、最新モデルのFL5型シビック タイプRに加え、今秋にマイナーチェンジが行われるシビックe:HEV、そして新たに設定されるスポーツグレード「シビックRS」が展示された。
シビックにRSグレードが追加されると聞いて、思わず懐かしさを覚える人も多いかもしれない。現行のFL世代が11代目となるシビックだが、初代モデルが発売されたのは1972年のこと。この初代シビックの発売から2年後となる、1974年に追加されたのが「1200RS」だからだ。
RSというグレード名からはRacingやSportといったニュアンスを連想してしまうが、ホンダでは「Road Sailing(ロードセーリング)」と発表している。水の上を悠々と気持ち良く進む、そんなセーリングのような走りを道路の上でも再現しているというのが由来だそう。
そして初代シビックRSから50年の時を経て、2024年9月のマイナーチェンジで「シビックRS」が日本国内市場に再び登場することになる。今回はシビック タイプRも参戦しているスーパー耐久シリーズの会場で、3車の車両展示に加えてメインステージにて開発者トークショーも開催された。
スーパー耐久が開催中のメインステージに登壇したのは、シビックRSグレード開発責任者である明本禧洙(あきもとよしあき)氏と、モータージャーナリストの橋本洋平氏である。
明本氏はワンダーシビックが登場したときにホンダに入社。以来、初代インテグラに搭載されたB16A型VTECエンジン、レジェンドやプレリュードとエンジン開発を歴任し、S2000のエンジンプロジェクトリーダーを務めた。
2005年にはモータースポーツの最高峰であるF1エンジンの研究開発責任者となり、その後は市販車の開発に戻って新型ヴェゼルのパワートレーン開発責任者となり、e:HEVの開発に携わってきた。まさにホンダのパワーユニットを支えてきた存在といえる。
「今回はマイナーチェンジという位置付けですが、初代シビック以来のRSの冠がついたグレードを投入するということで、かなり多くの部分を進化させています」
「シングルマス軽量フライホイールを採用し、エンジン制御を煮詰めたことで、従来のMTモデルよりエンジン回転が50%速く下がり、30%速く上がります。さらにタイプRで採用している、変速時に目標のギアに最適となるよう自動でエンジン回転数を制御し、スムーズな変速による車両挙動の安定化を実現する“レブマッチシステム”を搭載しました」
明本氏は、シビックRSの特徴をそのように語り、MT車ならではの楽しさについて強調した、
続いて、ひとあし早くクローズドコースで試乗を行った、モータージャーナリストの橋本洋平氏は、変更されたエンジン制御やレブマッチシステムの効果について次のように語った。
「以前のMT車は少しリズムが取りにくい感じがあった。エンジン回転数の落ちが遅く、シフトアップのタイミングも取りにくかった。シビックRSではそこが変更されており、とてもリズミカルに走れるようになっていた」
エンジン回転数を”素早く落とす”ことについて、明本氏が続ける。
「実はアクセルを戻す前から燃料を噴いていますが、アクセルを戻したからと行って、不完全燃焼のまま燃料を放出して大気を汚すわけにはいきません。なので、アクセルを戻しても完全に燃焼し続けるように、アクセルオフを予測する制御を入れて綺麗に燃料を燃やしながら、エンジン回転を素早く落とせるようにしています」
環境への影響を考えながら、いかに燃料を燃やし切るかを考えた制御が入っていることを解説した。
そしてシビックRSではシャシーなどにも変更が行われているが、全世界130の国で販売しているシビックだからこそできた開発ストーリーがあるという。
「シビックは全世界130の国で販売していますが、道路環境がさまざまでその地域に合わせたモデルがあります。そんなたくさんあるパーツのなかで一番良いものを集めて今回のRSを作り上げました」
「従来のMT車からロール剛性を11%あげており、クルマの応答性が良くなっています。ステアリングシャフト先端のセンサー剛性を60%上げて、よりダイレクトな反応をするようにしています」
このように世界各地域で販売されているシビックのいいところを結集させ、日本専用のRSを仕立てているという。
「RSというネーミングについては「シビックRSは50年前に登場した初代モデルの1グレードとして付けられました。道路を『セーリング』のように悠々と走れるクルマという意味でRSロードセーリングというネーミングになっていますが、今回の車は『ロードスポーツ』というところを強調していきたい」と、新型シビックRSの車名にかける想いも語られた。
ちなみに橋本氏は、今回のトークショーのためシビック タイプRでモビリティリゾートもてぎを訪れたという。
「現行シビック タイプRは、サーキットを主眼としつつも一般道を快適に走れるクルマです。今回いろいろ650kmほど走ってきましたが、とはいえ長く乗っているとやはりハードに感じる部分もなくはないです。運転は楽しいですが、クラッチの重さやスポーティな外観ゆえ気を遣ったりなどね(笑)」
「いっぽうRSは、まだ一般道で走っていないので想像ですが、クラッチも軽くシフトフィールも良く、リニアリティに感じられるエンジンレスポンスなどは、気を使わず走れる日本の道路にピッタリなのではないかと思っています」
タイプRほど過激でなくていいけど、ほどよくコントロールできる範囲で走りが楽しめる点が、シビックRSの魅力とのこと。そこは開発責任者の明本氏が、まさに狙った部分でもある。
「以前はホンダのMT車に乗っていたけど、今は他社の自動車に乗っているという方にぜひともこのRSに乗ってもらいたいです。従来のシビックハッチバックは、若年層を中心としてMTモデルが購入者率が50〜60%と高い。RSでは専用のエクステリアやインテリアを採用しており、引き締まったカッコいいデザインは受け入れていただけると思います」と話してくれた。
「電動化やパワートレーンの変化、MT車の減少などいろいろありますが、シビックはホンダのスポーツモデルにおいて原点と言えるクルマです。スーパー耐久シリーズでは、HRCがカーボンニュートラル燃料を使って新しい環境配慮をすすめる取り組みもしています。永遠にスポーツモデルを出し続けていくのがホンダという会社だと思いますので、今後に向けてしっかり進めていきたい」
明本氏はこのように力強く語り、トークショーは終了した。
スーパー耐久シリーズでは、ST-2クラスにおいて多くのシビック タイプRが参戦しているほか、ST-Qクラスにはカーボンニュートラル燃料を使用したシビック タイプRをHRCが走らせているなど、見どころも満載。
今秋に登場するシビックRS、シビックe:HEV、そしてシビック タイプRの3台は、9月28~29日に開催されるスーパー耐久シリーズ第5戦(鈴鹿)でも展示されるということなので、気になった方はぜひサーキットを訪れてみることをオススメしたい。
(PHOTO&TEXT:Naoki YUKIOKA 雪岡直樹)