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【現地レポート】ミッドオハイオでスコット・ディクソンが今季2勝目、ホンダが1−2−3フィニッシュ!

全17戦で行われる、今シーズンのインディカー・シリーズもすでに終盤戦。第13戦「Hondaインディ200アット・ミッドオハイオ」が、オハイオ州コロンバスに近いミッドオハイオ・スポーツカーコースで行われた。

ここは適度なアップダウンがある、全長2.248マイルのサーキット。とてもテクニカルなレイアウトは、ドライバーには挑戦のしがいがあるものとして、ファンには見応えのあるものとして人気が高い。

週末は3日間とも快晴だった。3回のプラクティス、予選、そしてファイナルプラクティスを走った23台の出場マシンは、ドライコンディション用のマシンセッティングをハイレベルにチューンアップしてレースに臨んだ。

ポールポジションはシボレー・エンジンを使用するチーム・ペンスキーのウィル・パワーで、昨年のミッドオハイオで圧勝を飾ったアレクサンダー・ロッシ(アンドレッティ・オートスポート)がホンダ・ユーザー勢トップの予選2位。予選3位、4位はチャンピオン争いの真っ只中にいるジョセフ・ニューガーデンとシモン・パジェノー(どちらもチーム・ペンスキー)が続いた。

ドライバー紹介ラップでコースサイドのファンにポーズを見せるグレアム・レイホール

ミッドオハイオ・スポーツカーコース近隣にメアリーズビル工場などのあるオハイオ州中部は、ホンダにとってアメリカ第二の故郷。今回も10,000人近いホンダ関係者がレース観戦に訪れるレースウィークエンドとあって、ホンダのレーススタッフは是非とも好成績を挙げたい。ドライバーたちも期待に応えたいと考えていた。

ポールポジションこそシボレーユーザーが獲得したが、ホンダ勢は3人が予選ファイナルに進んで2位、5位、6位を獲得し、予選7〜11位までも占めた。

ランキング4番手のスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)は予選8位。今回優勝かそれに近い成績を挙げて6度目のタイトル獲得に望みを繋ぎたいところだった。

ディクソンは予選上位5人とは異なる作戦でレースに臨んだ。ハードコンパウンドのブラックタイヤでスタートを切ったのだ。チームメイトで予選6位だったフェリックス・ローゼンクビストも同じ作戦だった。

そして、この作戦が見事的中した。1回目のピットストップを30周目近くまで引っ張った二人は1、2位に浮上。次にソフトコンパウンドのレッドタイヤを装着すると、ライバル勢をさらに突き放して見せた。

ローゼンクビストはレッドタイヤでのパフォーマンスが今ひとつだったため、ピットストップ2回の作戦を3ストップにスイッチした。相性の良いブラックタイヤをレース終盤に2連投する事で活路を見出そうと考えたのだ。

ディクソンは新品レッドでの走りがダントツで、2位以下に15秒以上の大差をつけた。それで最後のピットストップでもレッド装着をリクエストした。ただし、彼らに残されていたのは予選で4周のフルアタックを行なっているユーズドのセットだけだった。

大量リードのあるディクソンは、ゴールまでクルージングモードかと思ったら、チップ・ガナッシ・レーシングはルーキーのローゼンクビストに「勝ちに行って良い」とのお墨付きを与えた。「ただし、相手がチームメイトであることは忘れないように」と同士討ちは絶対避けるよう忠告もしたが……。

ディクソンは必死に逃げ続けたが、ゴールまで残り10周を切ると、ラップタイムはベストの時より2〜3秒も遅くなっていた。彼を追いかけるローゼンクビストは、周回を重ねても性能劣化の少ないブラックタイヤを履いており、最終ラップを前に、とうとう先輩チームメイトに背後に追いついた。

残り時間は少なく、ローゼンクビストはすぐさま攻撃した。ターン2で相手のインを狙う。しかし、ディクソンがインサイドに思い切り寄らなかったのは自分のコーナリングスピードを最大限に保つため。ローゼンクビストにスペースを与える気は無く、2台は接触!

あわや2台揃ってリタイアか! というシーンになったが、どちらも走り続けることができ、0.0934秒という僅差でディクソンが優勝した。今季2勝目、ミッドオハイオでの6勝目は、キャリア通算46勝(歴代単独3位)となった。

そして何より重要なのは、53点を稼いでポイントリーダーのニューガーデンとの差を98点から62点へ大きく縮めたことだ。AJ・フォイトの持つ歴代最多タイトル=7回に迫る6度目のチャンピオンシップを、今年のディクソンは獲得することとなるかもしれない。

チップ・ガナッシのチームメイト同士によるバトルの後方では、ライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポート)が3位フィニッシュ。ホンダ・ドライバーたちが1、2、3位で表彰台を独占した。今シーズンの第2戦サーキット・オブ・ジ・アメリカス以来となるシーズン2回目の快挙がなったのだ。

「最後は凄いバトルになっていた。フェリックスがチームメイトでなかったら、僕はコースから弾き出されていたと思う。彼は本当にフェアに戦ってくれた」

レース後、スコット・ディクソンはこうコメント。そして最後にユーズド・レッドを投入したことについても教えてくれた・

「少し無理があったね。私の判断ミス。なんとか最後までグリップが持ってくれてよかった」

ローゼンクビストは今回2位となって初表彰台。『彼は素晴らしい才能の持ち主。若いのに経験も豊富で、僕より多くのメジャーカテゴリーで戦って来ている。今後、彼は多くの勝利を重ねて行くことになる』と、スコット・ディクソンは若きチームメイトをたたえた。

ポイントリーダーのニューガーデンは、最終ラップにハンター-レイにアタック。それが失敗してコースアウトし、4位フィニッシュを棒に振っての13位。ディクソンの活躍で焦りが生じてしまったか。このミスは後に大きく後悔するものになるかもしれない。

ポールポジションからスタートしたパワーは4位。ポイントランキング2番手のロッシは粘り強く走り抜いて5位。ポイント3番手のパジェノーは6位だった。

佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)は、17番手スタートから19位でゴール。スタート直後にマーカス・エリクソン(アロウ・シュミット・ピーターソン・モータースポーツ)と接触してタイヤがパンクし、大きく後退してしまう。

そこからトップグループを凌ぐハイペースで走り続けたが、1周の接触後にコースオフした時に飛び込んだ石などが燃料給油システムにトラブルを引き起こした。

「給油をしても90パーセントぐらいまでしか燃料が入らなかった。レースは去年と同じでフルコースコーションが一度も出ず、僕らは助けに恵まれることもなかった。ゴール目前に短い給油が必要になって、僕らは19位に。苦しい週末になった。次のポコノは毎年良い入りができているコース。今年はインディ500、テキサスと高速コースで速さを見せているから、ポコノでもマシンは速いという期待ができる。今度こそ良いレースを戦い、好成績を挙げたい」

佐藤琢磨選手は、このように意気込みを新たにしていた。目標はシーズン2勝目だ。

(text:Hiko AMANO 天野雅彦)
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