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【K-TAI】モータースポーツはやっぱり楽しい! 年に1度のカート7時間耐久レースにホンダGX270で参戦

「ホンダGX270」というエンジンをご存じだろうか。空冷4ストロークのOHV単気筒で、270という数字は270㏄の排気量に由来。圧縮比は8.5:1で、連続定格出力5.1kW(6.9PS)、最大出力は6.3kW(8.6PS)を発生する。芝刈り機や発電機など幅広い用途に活用される、生活に根差した汎用エンジンだ。

連続定格出力時の燃料消費量は時間あたり2.4 L(使用燃料は自動車用の無鉛ガソリン)。サイズは全長355mm×全幅428mm×全高 418 mm。乾燥重量は25.8 kgとなっている。

実は、そんなGX270が使われるのは実用シーンだけに限らない。GX270を使うモータースポーツがあるのだ。レーシングカートである。

モータースポーツの入り口ともいわれるレーシングカートは、気軽に参加できるレースのひとつ。かつては「ロビン」という名称でスバル(富士重工業)も汎用エンジンを制作していて、それをカートに積む人もいるが現在は事業を終了。ヤマハ発動機、ROTAX MAX、ホンダなどのエンジンが活躍している。

最新事情をお伝えすると、これまでカートを生産していたヤマハはカート事業を終了し、それと入れ替わりにトヨタのスポーツブランドである「GR」が参入することが明らかになった。

話をホンダGX270に戻ると、そのエンジンは本来であれば3600回転付近を常用回転数とするように設計されている。スペック表に、最大出力発生回転数や連続定格出力時の回転数が「3600rpm」と書かれていることからも理解できるだろう。

3600rpmとしている理由は、発電機として使われる際にインバーター非搭載機でも交流電流の周波数を東日本の50㎐と東日本の60㎐どちらにもでも切り替えて使えるように設計されていた頃の名残りなのだという。

しかし、カートで使うにはもっともっとパワーが欲しい。能力を引き出したい。そこでキャブレターをはじめ周辺補器類を強化し、5000回転以上まで回る仕様としているのがポイントだ。

すなわち、カートに搭載するエンジンは本来の姿である実用機ではなく、性能に特化してチューニングしたGX270の究極の姿と言っていいだろう。

筆者は、そんなGX270を積むカートで「K-TAI」というレースに参加している。K-TAIはモビリティリゾートもてぎのロードコースを舞台に戦う年に1回のカートによる耐久レースで、毎年多くのチームが参加している。2025年も約100台のカート(ロビンやヤマハなどのエンジンを積むマシンもいる)が出場し、7時間の耐久レースを戦ったのだ。

レース自体は比較的気軽に参加できるものだが、あのSUPER GTやスーパーフォーミュラも開催される国際規格の本格サーキット(全長約4.8kmでコース幅12~15mもある!)を、カートで走る世界なんて想像できるだろうか?

最高速度は110km/h以上出るし(その場所が直後が直角コーナーとなる下り坂なのでちょっと怖い!)、ホームストレート後の1コーナーは(多くの人は)アクセル全開からノーブレーキで入っていく。

曲がれるとはわかっていても、ノーブレーキ&全開で入っていくなんてボクくらいのチキンだと正直いって恐怖心との戦いだ(ここだけの話だがボクは一瞬だけアクセルを抜いて曲がり始める)。

そして1~2コーナーや3~4コーナーは、リブプロテクター無しに走るとあまりの横Gで肋骨にヒビが入ることもあるという極限の世界。メインストレート手前のシケインあたりは、不用意にアクセルを踏みつけるとスピンするのだから「たった270㏄の汎用エンジン」だなんてとても侮れないのだ。

ホンダといえば多くの人はクルマやバイクをイメージすることだろう。しかし、GX270など積む草刈り機や発電機など生活に根差した、人々の生活をより豊かに、より幸せにするための道具も展開している。

さらには船用のエンジン(生活を支える船からレジャー用途まで使われており最高峰はなんとV8)、そして飛行機の「ホンダジェット」まで幅広く展開しているのがホンダのモノ作りなのだ。

世の中にモビリティカンパニーは数あれど、ホンダが扱う商品は値段にして数万円から数億円までと驚くほどふり幅が広い。こんなに販売商品の価格帯が広いメーカーは、世界中見回してもなかなかないだろう。

GX270を積んだレーシングカートでレーサーを気取ってもてぎのだだっ広いコースを走りながら、そんなことを思った。

(TEXT:Takahiro KUDO 工藤貴宏/PHOTO:ClubRacing)