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【NT1100】並列2気筒を搭載した新世代ツアラー、AT限定免許でも乗れるためリターンライダーには最適!【試乗】

2021年12月、ホンダから久しぶりにブランニューのバイクが発表されました。それが「NT1100」、排気量1082ccの2気筒エンジンを積んだスポーツツアラーです。

2022年は大型二輪免許にチャレンジ!! AT限定で乗れるDCT車も設定された新世代スポーツツアラー『NT1100』が登場

そのNT1100は、いよいよ2022年3月17日より日本国内での販売が開始されますが、ひとあし早くメディア向け公道試乗会が行われ、ホンダスタイル編集部も参加してきました。

排気量から連想されるように、NT1100が搭載する並列2気筒エンジンはCRF1100Lアフリカツインやレブル1100でおなじみのユニット。アフリカツインやレブルにクラッチレスのDCT(デュアルクラッチトランスミッション)がラインナップされているように、当然ながらNT1100もDCTが用意されています。

もっと正確にいえば、日本国内向けのNT1100にはDCT仕様しかラインナップされていません。つまり「AT限定免許で乗れるフレンドリーなツアラー」として開発されたモデルです。

日本仕様のNT1100は、全車がDCTと組み合わされる

「大型二輪のAT限定免許には、650ccの排気量制限があったのでは?」と思われるかもしれませんが、その排気量条件は2019年に撤廃されています。大型二輪AT限定免許でリターンライダーしようというユーザーには持ってこいの1台といえるでしょう。

実際にNT1100の人気は高く、発表から約1ヶ月で450台を受注しているといいます。年間の販売目標は800台ですから、発売開始の3月17日までには目標達成となりそうな勢いです。

たしかにコロナ禍において密かにバイクブームが盛り上がっているとはいいますが、メーカー希望小売価格168万3000円のモデルが計画よりも好調に売れているというのは、まさにユーザー的には「こういうモデルを待っていた!」ということにほかなりません。

はたしてAT限定免許で大型バイクデビューをするようなリターンライダーに向いているのか、リターンライダー3年目の目線からチェックしてみました。

一見すると大型なボディは、とくにハンドルがワイドに見えます。シート高は820mmで、筆者の身長は163cmですから尚更です。とはいえ、またがってみると意外にもしっくりきます。

両足がベタツキというわけにはいきませんが、左足で十分に車体を支えることがでるくらいの感触です。

クラッチ操作の不要なDCTを搭載するNT1100。シフトチェンジは左手で行うため、通常は左足で操作するシフトペダルも存在しない

なにしろNT1100はクラッチレバーレスのDCTですから、左足でのシフト操作は不要。左足の役割はサイドスタンドの上げ下げくらい。つまり乗降時以外に左右の足を踏みかえる必要がないわけです。それも足つきのネガが気にならない理由でしょう。

エンジンを始動すると、6.5インチの鮮やかなフル液晶メーターがライダーを迎えてくれます。非常にクリアに見えるのも、近くが見えづらくなっているリターンライダーにはうれしいポイントではないでしょうか。

NT1100には5つのライディングモード(TOUR/URBAN/RAIN/USER1/USER2)が選べるようになっていますが、メーター左上に表示されるライディングモードの部分をタッチすれば簡単に切り替えることができます。より細かい設定はステアリングスイッチで行なえますが、気軽にライディングモードを選べるのは、日常的に使い分けたくなるというものです。

メーターは感圧式のタッチパネルを採用しており、ライディンググローブを装着した状態でも直感的に操作することが可能

3タイプのメーターデザインが用意されているのも、遊び心という点では歓迎すべき部分です。個人的には、ギアポジションがわかりやすいGOLDイメージの表示が気に入りました。

いずれのモードでも、サイドスタンドインジケーターがあるのも初心者には助かる部分でしょう。このインジケーターを確認するクセをつければ、サイドスタンドを出し忘れてバイクから降りてしまい立ちゴケするという失敗も防げるというものです。

ライディングの楽しさを凝縮させたオールラウンドツアラー

AT(DCT)ですから、右手でアクセルをひねればバイクは走り出すわけですが、このDCTにはクルマのようなクリープはないので、その感覚で乗ると“ドンッ”とつながるように感じるかもしれません。基本的には右足でブレーキを踏んでおいて、アクセルを回しながらリアブレーキをリリースするという風に走り出すとスムースに発進できるでしょう。

そのままアクセルをひねれば、自動的にシフトアップ/ダウンをしてくれます。ステアリング左側に備えられたスイッチでマニュアル操作もできますが、今回は完全おまかせの「Dモード」で走ってみました。もっともベーシックな制御モードですが、その印象は基本的にスポーティです。

4輪のDCTではシームレスであることがセールスポイントで、シフトチェンジがわからないくらい滑らかにシフトアップすることが多いのですが、NT1100ではシフトアップ時の変速ショックは明確で、むしろライダーにシフトチェンジしたことを知らせようという意図を感じさせます。

逆にシフトダウンは非常に滑らかでライダーにショックを感じさせません。加速はリズミカルに楽しめ、減速ショックは最小限に抑えているというのはライディングの楽しい部分を抽出した味つけになっているといえそうです。

そうした加速の楽しさには、エンジンサウンドも貢献しています。前述したようにアフリカツインやレブル1100と共通のエンジンですが、吸排気系はNT1100専用に設計され、ジェントルかつリズミカルな排気音を味わうことができました。日常的に使っていても刺激が強すぎるということはなさそうです。

NT1100のコンセプトは『Weekday express, Weekend expedition』というもの。平日はエキスプレス(特急)のような素早い移動が可能で、週末にはエクスペディション(遠征)が可能な二面性を狙ったというわけです。

そのうえで加速感を重視したTOURモード、標準的なURBANモード、エンジン出力を絞ったRAINモードなどを選ぶことで、気分やシチュエーションに合わせることができるというのもオーナーならではの楽しみといえます。

ウィークデーでの使用を考えたときに素晴らしい機能と感じたのは、空力による快適性の追求です。ステアリング前方のアッパーディフレクターは腕まわりの、ロアディフレクターは足まわりのウインドプロテクション効果を狙ったものです。とくにロアディフレクターの効果は絶大で、足首にあたる空気の流れをしっかりと遮っていることが実感できました。

週末のツーリングであればブーツを履くこともできますが、日常の移動ではスニーカーや革靴を履いているケースも増えるでしょう。そうしたときに気になるのはズボンの裾あたりで感じる風で、とくに秋冬は寒さを感じる原因になります。

そこが標準状態でカバーされているというのは、まさに「ウィークデー・エキスプレス」というコンセプト通りの機能といえます。DCTの採用によりシフト操作が不要なのも、普段着のシューズでの運転しやすいポイントでしょう。

ハンドリングについてはスポーツモデルのようなキビキビ感はありませんが、ゆったりと乗っているときの安心感は高く、ポジションも立ち気味なので景色を楽しみながらのツーリングが楽しめそう。今回の試乗コースでも、視界が開けて海が見えた瞬間には「このまま遠くまで走っていきたい!」と思ったものです。

万能ツアラーとして高い性能を感じさせるNT1100。純正アクセサリーも豊富にラインナップされている

開発コンセプトでは、タンデムに座るパッセンジャーが「また乗りたい」と思うようなツアラーを目指したとのこと。今回は短時間の試乗でしたので、クルーズコントロールや5段階調整式ウインドスクリーンといった高速で役立つアイテムは確認できませんでしたが、そうした部分も体験してみたいと思わせるツーリングモデルがNT1100です。

(photo:Kiyoshi WADA 和田清志、Honda/text:Shinya YAMAMOTO 山本晋也)