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【GT500】天候に翻弄された64号車Modulo NSX-GTの開幕戦。3番手から決勝をスタートするも10位でチェッカー

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2023 SUPER GT 第1戦(岡山国際サーキット)
#64 Modulo NSX-GT
予選:3位
決勝:10位
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いよいよ2023年シーズンのSUPER GTが開幕! 2023年初頭に開催された「東京オートサロン」で次期型車両のシビック タイプR-GTが発表されており、NSX-GTにとっては今年がラストイヤー。

2014年のNSX CONCEPT-GTから始まった、第二世代NSXをベースとしたGT500車両でのSUPER GT参戦において”有終の美”を飾るべく、ホンダ勢にとってはぜひともチャンピオンを獲得したいシーズンとなる。

もはやチームの「顔」である伊沢拓也選手(左)と、今シーズンより加入した太田格之進選手。予選3位に笑顔が弾ける

そんなホンダ勢は、2023年シーズンも5台のNSX-GTが参戦。なかでも64号車Modulo NSX-GTを走らせるModulo Nakajima Racing、現体制となって5年目となる節目の年となる。

エースドライバーである伊沢拓也選手のパートナーには、昨年GT300クラスでNSX GT3を走らせていた太田格之進選手がステップアップ。まずは早い時期にシーズン1勝を上げたいところだ。

SUPER GT開幕戦の舞台は、もはや恒例となった感のある岡山国際サーキット。岡山県といえば「晴れの国」として知られているが、2023年のSUPER GTは天候に翻弄される開幕となった。

2023年初めての公式セッションとなった4月15日(土)、前日に降り続いていた雨はいったん止んだものの、午前中の公式練習に合わせたように再び雨が降り出し、多くのマシンがスピンやクラッシュを喫するほどのウェットコンディション。

午後の公式予選を迎えても雨脚は衰えることなく、まずは伊沢拓也選手がコースイン。予選Q1突破に向けタイヤを暖めていく。コースの各所に川が見られるような、ヘビーウェットの路面状況ながら伊沢選手は巧みにマシンをコントロールし、1分29秒863を記録。むずかしいコンディションのなかで3番手のタイムでQ2進出を決めた。

Q2を託されたのは、この開幕戦がGT500デビューレースとなる太田選手。ちょうど1年前、2022年の開幕戦ではGT300で予選4位・決勝2位となっているだけに、GT500初戦とはいえトップに絡んでいきたいところだ。

Q2を迎えても路面コンディションはほぼ変わらず、難しい状況であったが太田選手は1分29秒347をマーク! Q1と同じく3番手となり、セカンドローから翌日の決勝レースに臨むこととなった。

迎えた決勝、2023年4月15日は一転して青空が広がった。朝から大勢の観客がサーキットを訪れ、コロナ禍で苦しんだ数年間が信じられないほど、グリッドウォークも以前のようなにぎわいを取り戻した。

シーズン初戦を2列目3番手という好位置からスタートできるとあって、64号車Modulo NSX-GTを駆る伊沢拓也選手、太田格之進選手もそろってリラックスした表情を見せていた。

グリッドボードを持つ2023 Moduloスマイルの 池永百合(@ikenaga_yuri )ちゃん

そしてほぼ定刻どおりのスケジュールで、82周の決勝レースがスタート。64号車Modulo NSX-GTは伊沢拓也選手がスタートドライバーを務めた。

ところでGT500では、2023年シーズンよりカーボンニュートラル・フューエル(CNF)燃料の使用が義務付けられている。エンジンパワーはもちろんのこと燃費面でも昨年に比べどれほどの違いがあるのか、各チームの戦略にも注目したいところ。

スタート直後は大きな混乱もなく、スムーズに走り始めた伊沢選手。しかし昨日のウェットコンディションとは異なりドライ路面ではタイヤの温まりに時間がかかるのか、序盤はライバルたちの先行を許す苦しい展開となってしまう。

やがてトップの車両が10周を終えること、空は一気に暗くなり、やがて雨が落ちてくる。大粒の雨はコース上をまたたく間に濡らし、さらには雹(ひょう)まで落ちてくるという荒れた天候となってしまう。

64号車Modulo NSX-GTはたまらず15周目にピットインを行うが、この時点ではまだドライバーひとりの最低義務周回数に達しておらず、ウェットタイヤへの交換のみでコースに復帰する。

64号車Modulo NSX-GTがピットアウトした翌周には、他車がコースアウトした関係でFCY(フルコースイエロー)が発動され、その後はSC(セーフティカー)先導による走行へと切り替わる。

この時点でほぼすべての車両がウェットタイヤへの交換を行っており、22周目の終わりにSCがコースアウト。23周目よりレースが再開される。

2023年シーズン最初のリスタートを、伊沢選手はスムーズにくぐり抜けて8番手を走行する。すると雨は収まりだし、30周を過ぎるころには雲の切れ間から太陽が差し込むまでに天候は回復していく。

徐々に路面が乾いていくなか、伊沢選手はウェットタイヤで粘り強い走りを見せ、ちょうど折り返しとなる41周目にピットイン。再びスリックタイヤへとタイヤを交換し、太田選手とドライバー交代を行った。

GT500の決勝レースデビューが不安定なコンディションとなった太田選手だが、ルーキーとは思えない落ち着いた走りを見せ、ピットアウト時から順位をひとつ上げて10番手を走行。その後、上空から再び雨が振り出し、またたく間にコースコンディションはフルウェットへ。

天候の変化を予想しながらスリックタイヤのまま数周は走っていたものの、コース内に留まっていることすら困難な状況となってしまい、50周目にピットイン。再びウェットタイヤへと交換し、コースに復帰する。するとアンラッキーなことに、64号車Modulo NSX-GTがピットアウトした直後にライバル車両がコースアウト! この日2回目のFCYとなる。

この間に別のアクシデントも発生し、ふたたびSCランに。雨脚はその後も強くなり、さらに岡山国際サーキット周辺で雷の情報が確認されたことで赤旗が出され、レースは一時中断となる。その後、天候がやや回復したためSC先導でレースは再開となった。

まだスリックタイヤを履いたままであった車両は、ピットオープンと同時に一斉にピットインを行い、一時はピットが大混乱となった。すでにタイヤ交換を済ませていた64号車Modulo NSX-GTは、SCに先導され周回を重ねていく。

その後ライバル車両のアクシデントなどにより、この日2度目の赤旗が出された。このまま赤旗によるレース終了は避けたい64号車Modulo NSX-GTだったが、その願いが届いたか、最大延長時間が10分後に迫る16時20分にレースが再開された。

しかしSC先導であるため前走車を抜くことはできず、この時点で11番手を走行していた太田選手にとっては歯痒い展開が続くこととなった。

しかし残念ながら天候は回復せず、むしろさらに雨脚が強くなったことで3度目の赤旗が掲示され、レースは終了。レース後にペナルティを受けた車両があったため、64号車Modulo NSX-GTは正式結果が10位となりポイントを獲得した。

中嶋 悟 総監督 コメント

「本当にいろいろなことがあって、こうやって振り返っても頭の中が混乱するほどのレースでした。最後のピットインでウェットタイヤに交換したタイミングは最高のジャッジだったと思っていましたが、直後にセーフティカーが入ったことでそのアドバンテージが消えてしまったようです」

「コンディションの悪化で、後半はまともなレースだったとは言えない内容でしたが、なんとかポイント獲得となりました。第2戦は2週間あまりでやって来るので、最善の準備をして、引き続き優勝を目指して戦っていきます。大変なレースでしたが、たくさんのご声援をいただき感謝しております」

伊沢拓也選手 コメント

「上位グリッドからのスタートで、今日のレースには期待をしていましたから、この結果はとても悔しいです。ですが、週末を通して振り返ると予選ではいいところもありました。シーズン初戦からポジティブに感じられるところも、改善点も、様々なことが分かるレースになりました。得られたものを次戦につないでいきたいと思います」

太田格之進選手 コメント

「GT500の初レースでしっかりとクルマを完走させることができ、ペースも悪くなかったので、個人的にはいいレースができましたが、結果が出せずに悔しい気持ちの方が大きいです。自分自身のマシンの習熟も進んでいると感じられる部分もあって、そういったところは次戦につなげていけると思います。ペース的に足りていないところが響いたレースになったので、チームと協力して開発も進めながら次戦に挑みたいと思います」

次戦の第2戦は、5月3-4日に静岡県・鈴鹿サーキットで開催される。レース距離は今回の1.5倍となる450kmだ。ウェット路面に手応えを感じているModulo Nakajima Racingとしては、富士の変わりやすい天気を味方につけ、ぜひとも予選ではフロントロー、そして決勝では表彰台を実現したい。

(text:Honda Style Web)