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【名車図鑑】トールボーイスタイルを身にまとい、コンパクトクラスにおけるミニバン文化の先駆けとなった「キャパ」

モデルライフは4年足らず、しかもその間に2度のマイナーチェンジを実施するほど注力したにもかかわらず、一代限りで消滅したハイトワゴンが「キャパ」だ。しかし、クルマ自体が失敗作でないことは多くのカスタマイズパーツが発売されていたことからも明らかといっていい。早過ぎた名車の出自に、あらためて思いを馳せたい。

(ホンダスタイル92号に掲載)

力強さと安定感をもたせた台形フォルムと、大きなグラスエリアがキャパの特徴

オデッセイやCR-Vなどを生み出した、クリエイティブムーバーの第二世代「Jムーバー」として、1998年4月に誕生したコンパクトワゴンが「CAPA(キャパ)」だ。キャパシティを由来とする名前には、スペース的な収容能力だけでなく、才能という別の意味に感じる思いも込められている。

キャパが発売される前年の’97年に開催された東京モーターショーにおいて、ホンダは21世紀に向けて「Small is Smart」というクルマづくりの提案を発表。キャパはその第一弾として、「街乗りベスト」なコンパクトサイズを守りつつ、印象的なスタイルや広い車内スペース、そして楽しい走りも実現したマルチワゴンである。

紫外線を大幅にカットし、車内温度の上昇を抑える高熱線吸収UVカットガラスが全ウィンドウに採用された

一見してわかるトールボディスタイルの車体は、コンパクトカー「LOGO(ロゴ)」とぷらっとフォームの基本設計を共有しつつ、ルーフラインを上げて室内空間を拡大したもの。リアの左右ドアは一般的なヒンジ式を採用している。

ボディサイズは全長3775×全幅1640×全高1650mmというコンパクトさで、スパッと切り落としたようなテールゲートの形状が特徴的だ。グラスエリアを広げながらも、末広がりでスタンスの効いた「台形フォルム」と呼ばれたシルエットにより見た目にも走行性にも安定感を高めている。

エンジンは1.5リッターSOHC16バルブの1種類で、最高出力は98PS/6300rpm、最大トルクは13.6kgf·m/3500rpmを発生。トランスミッションはCVT(ホンダマルチマチック)で、駆動方式はFFのみ。のちにマイナーチェンジで4WDや4速ATも追加設定されている、

メカニズム面では「デュアルデッキ・パッケージ」と名付けられた新骨格二重フロア構造が注目だ。キャビンの床下にメカニズムを収めるという発想は、2001年に生まれた初代フィットが採用したセンタータンクレイアウトの原点と感じさせられる。

ボディの基本骨格には二重フロア構造を採用し、さらに縦横に直線的なメンバーを配することで、前面だけでなく側面衝突においても高い次元での衝突安全性を実現した。フロアには吸音材を敷き詰めるなど静粛性もクラスを超えた性能を誇る。

そのほか二重フロア部分に真っ直ぐなフレームを配することで、当時としてはハイレベルな安全ボディとしたことは、登録車を超える衝突安全性を誇る軽自動車・Nシリーズに繋がっている。

インテリアに目を移すと、初代オデッセイ、初代CR-V、初代ステップワゴン、S-MXなどクリエイティブムーバーの第一世代が皆コラム式セレクターを採用していたのに対し、キャパは一般的なフロア式。ただエアコンスイッチなど操作系はダッシュボードの上方に集中しており、使い勝手に優れた設計という印象だ。

フロント両席に左右SRSエアバッグが全車標準装備されるなど、安全意識も高かった

室内空間は外観から想像される通りに広く、室内高1240×室内長1750mmという広い空間を確保。ヘッドクリアランスはたっぷりと余裕がある。シートレイアウトは5名乗員で、前後シート間のタンデムディスタンスは最大で930mmを実現しており、後席の乗員にも膝まわりや足元スペースに余裕ある車内となっている。

リアシートはクラス最大級となる250mmの前後スライド量と、12段階のリクライニング、5:5分割可倒式シートバックといった機構を搭載。「マルチモードリアシート」により、多彩なシートアレンジを可能にした。

メーカーオプションの「ユースフルキット」を装着すると、助手席シートバックの前方へのフォールダウンが可能となる。助手席シートバックをテーブルとしても活用できるアイディアは、車内で休息するときなどの快適性・実用性を高めているだけでなく、リアシートも分割可倒することで長尺物を積みやすくした。

キャパ C カジュアルスタイル(スーパーソニックブルー・パール) 

キャパのデビューから半年後、最初に設定された特別仕様車「キャパCカジュアルスタイル」は、ドアミラーやウォッシャーノズルなどをボディ同色とした。スーパーソニックブルーなどの専用ボディカラーに、ブルーブラックのインテリアを組み合わせている。

キャパ tuittel(ツイッテル)ボディカラーは(ミントオパール・メタリック 

そして2000年11月には、外観を一部変更するマイナーチェンジを敢行。前後バンパーの形状変更および、新型フロントグリルを採用したことによるスタイリッシュな外観と、14インチアルミホイールやホイールキャップのデザインが変更された。そのほか、また2000年5月に追加された特別仕様車「ツイッテル」がカタログモデルへと格上げされた。

このツイッテルは、その車名の通りにCDステレオ、プライバシーガラス、ボディ同色のドアミラーやアウタードアハンドルケースなどが標準装備とされたモデル。好評だったためカタログモデルへと昇格し、そのうえで全車が内外装を一新するマイナーチェンジを受けた。

この2000年11月以降の後期型では、グレードがB/ツイッテル/Lの3モデル展開となり、エントリーグレードのBはFF/4速ATのみ。ツイッテルおよびLでは、FFと4WDの駆動方式が用意され、トランスミッションはFFが4速ATまたはホンダマルチマチックS、4WD車はホンダマルチマチックSが組み合わされた。

インテリアは2種類のセンターパネルが設定され、Bとツイッテルがメタリックセンターパネル、Lは木目調センターパネルが標準装備となった。そのほかにもフロントシート背面の形状を見直して、後席乗員の膝まわりスペースを拡大。荷室側シートスライドレバーを新採用するなど、リアシート乗員の快適性や実用性が向上した。

1998年4月に発売されたキャパだが、2001年12月には事実上の後継車であるモビリオが登場する。ただキャパのリアドアはヒンジ式、いっぽうのモビリオはスライド式と差別化が図られており、しばらくは両車が併売された。しかし市場は利便性に優れるスライド式リアドアが人気の中心となっており、2002年2月にはキャパの販売は終了となってしまう。

結果的に1代限りとなってしまったキャパだが、このクルマを構成するアイディアには、その後のヒットモデルに受け継がれたと感じる部分が少なくない。時代を先取りしすぎたゆえにユーザーの理解を得られなかった部分もあるが、だからこそいま見てもキャパは色褪せていないのだ。

1998 CAPA
SPECIFICATION
□全長×全幅×全高:3775×1640×1650mm□ホイールベース:2360mm□トレッド(F/R):1425/1420mm□車両重量:1110kg□乗車定員:5名□エンジン形式:D15B型直列4気筒SOHC□総排気量:1493cc□ボア×ストローク:75.0×84.5mm□圧縮比:9.4□最高出力:98PS/6300r.p.m.□最大トルク:13.6kg-m/3500r.p.m.□変速機:CVT□サスペンション型式(F/R):マクファーソン式/車軸式□ブレーキ型式(F/R):ベンチレーテッドディスク/リーディングトレーディング□タイヤサイズ(F&R):175/70R13□新車時車両価格:139万8000円〜155万8000円

(text:Shinya YAMAMOTO 山本晋也、編集:Kentaro SABASHI 佐橋健太郎)