Honda好きが堪能できる、Hondaスピリッツ溢れる情報誌
  1. TOP
  2. NEW CAR
  3. Honda Access
  4. 【Modulo X 10周年】シリーズ初のSUV、ヴェゼルModulo Xが目指したのは「見た瞬間、座った瞬間に伝わる魅力」

【Modulo X 10周年】シリーズ初のSUV、ヴェゼルModulo Xが目指したのは「見た瞬間、座った瞬間に伝わる魅力」

ホンダ車向け純正アクセサリーの企画・開発・販売を手がけるホンダアクセスが、車両全体の開発を手がけたコンプリートカー・シリーズが『Modulo X』だ。

メーカー開発というメリットを最大限に活かし、静的にも動的にも高い質感を実現したModulo Xシリーズが誕生したのは、2013年1月のこと。初代N-BOXをベースとしたN-BOX Modulo Xが発売され、以降はN-ONE/FREED/STEP WGN/VEZEL/S660/FITの各Modulo Xが開発・発売された。

2023年に誕生10周年を迎えたModulo Xシリーズ各車を、発売当時の記事で振り返る。

(ホンダスタイル96号に掲載)

「一目惚れできるModulo Xが出来上がりました」

Modulo Xのシンボルともいえる、「X」スタイルのフロントマスクを生み出す専用エアロを装着。ポイントは床下の整流で、アンダーステアの軽減にもつながっているという

2019年11月29日に発売が開始された「VEZEL TOURING Modulo X/VEZEL HYBRID Modulo X」は、Modulo X第6弾となるモデルだ。シリーズ初のSUVというだけではなく、初めて4WDを設定したModulo Xであり、初めてオリジナルシートを与えられたModulo Xでもある。

果たして、その製品企画や開発にはどのような背景があったのか。開発リーダーである苗代圭一郎さんにお話をうかがった。

1.5リッター・ターボを搭載するVEZEL TOURING Modulo Xは、ベース車両と変わらず左右2本出しマフラーを装着する

あらためて説明すると「Modulo(モデューロ)」というのは、ホンダアクセスのアルミホイールやエアロパーツなど、スポーツ系機能部品に与えられているブランド名。純正アクセサリーメーカーとしてホンダアクセスが培ってきた走りへのこだわりが、この名前には込められている。

そうした走りへのこだわりを車両として提供しようというのが、メーカーの新車生産ラインで製造されるコンプリートカー「Modulo X」である。シリーズ第6弾のベースに選ばれたのは、人気のコンパクトSUVであるVEZEL(ヴェゼル)。

正確にはVEZEL TOURINGとVEZEL HYBRIDで、これまでのModulo Xシリーズ各車はすべて2WDだったが、SUVとしてのニーズを踏まえてついに4WDモデルが登場したのもトピックだ。

「Modulo Xに4WDを設定するというのは、非常に難しい判断でした。この商品企画として数が多く出ることを想定しているわけではありません。これまでのように2WDだけのラインナップのほうが、リスクは少ないのです」

こう語ってくれたのは、開発チームを率いた苗代圭一郎さんだ。もともとは強度に関する設計エンジニアで、北米などではSUVに欠かせないトレーラーヒッチの設計などもしていたという。

「私自身がSUVを好きでずっと乗っていますし、SUVオーナーとしての目線では、4WDの設定がないというのは考えられませんでした。そこでヴェゼル ハイブリッドのFFと4WDで開発を進めたのです。しかし開発途中で、1.5リッター・ターボを搭載するツーリングが設定されました。Modulo Xというのは、その車種の中ではトップグレードであるべきと考えています。そうなると1.5リッター・ターボを搭載したModulo Xも必要になってくる。結果として、初めて3種類のドライブトレインを設定するModulo Xとなりました」

苗代さんは、開発途中に実施したSUVの使われ方のリサーチや、自身がサーフィンなどを楽しむ中で、SUVのリアルな使われ方を肌で感じているという、根っからのSUV乗りでもある。だからこそ4WDは欠かせないという判断をしたのだ。

5連LEDフォグライト周りの形状は空力が生み出したもの。実走行テストを繰り返すことでシャープな表情に変わっていったという。ロアガーニッシュはシルバーとしてSUV的なタフさを演出している

Modulo Xといえば、「実効空力」コンセプトに基づくエアロパーツや専用開発されたサスペンションなどの相乗効果によって『すべての人が意のままに操れる』ことが上位概念として置かれている。3種類のドライブトレインに対して、そうしたバランスを取る作業はどのように進めていったのだろうか。

「まずヴェゼルModulo Xのコンセプトを『3つの喜び無限大』と定めました。具体的には『3%の熱狂的なファンを大切に』、『3秒で一目惚れするデザイン』、『3秒後の走り出しから体感できる満足感』と定義しました。ですからModulo X独自のスタイリングは重要です。しかし、我々の求める走りは空力とシャシーのセッティングにより生み出されるものです。そこで、まずはModulo Xとしてのスタイリングを作り、そこから空力を煮詰めていくというアプローチを取っています」

SUVとしての使い勝手も考慮して車高はベース車から変更なし。パワートレインごとに専用セッティングとしている

開発においては、空力担当者とサスペンション担当者が、それぞれの領域でできることを協力してModulo Xとして目指す走りを実現させていった。

「とにかく走り込むことを重視して作っています。それも開発ドライバーだけでなく、すべてのスタッフが開発車両を実際に走らせることで、課題や成果を共有するというプロセスをとっています。そのため、最初の段階では各スタッフが運転を覚えることから始めていました。正しく評価できる能力を鍛えながら、クルマも磨いていったのです」

その結果、3つのドライブトレインごとに異なるセッティングとなった。空力とサスペンションの相乗効果によって直進時・旋回時の安心感を出すという基本は共通させつつ、1.5リッター・ターボではしなやかなスポーツ性を、ハイブリッドのFF車ではエコタイヤの特性を活かしたスポーティさを、ハイブリッドの4WD車ではトラクション性能と雪上での安定感が加えられている。どのモデルにおいても、妥協はない。

「正直なところ、開発リソースを考えるとFF車は共通のサスペンションにしたいと思ったこともあります。しかし、ベースモデルの違いや開発中に乗り比べることで、すべて専用のサスペンションを与えようと決めたのです。いっぽう空力については、全モデルが共通の仕様となっています」

意匠の方向性は同一だが、FFと4WDではホイールサイズが異なる。こちらはFF用の18インチ×7.5J

アルミホイールのデザインも専用となっているが、これもModulo Xらしい走りの実現には欠かせないアイテム。剛性を高めることだけでなく、ディスク面とリム側の剛性バランスを吟味しながら走り味の調整にも利用したという力作だ。なおFFの2モデルは18インチ、4WDは17インチとなっている。

いっぽう4WDは17インチ×7.0Jを履く。それぞれのハンドリングに最適なホイールをゼロから作り上げた

ヘッドレスト一体型のスポーツシートを標準装備

もうひとつ、内装にオリジナルシートが与えられたこともヴェゼルModulo Xにおけるトピックのひとつだ。フロントシートは純正シートの骨格を利用しつつ、ヘッドレスト一体の専用スポーツシートへと改良。表皮にはフロントはプライムスムース×ラックススェードのコンビ、リアはウルトラスエード×合成皮革のコンビとしてイメージを統一している。

「操ることの楽しさに特化したのがModulo Xの目指す走りといえます。そのためには、コーナリング中でもしっかりと体を支えてくれるシートの開発は必須だと考えました。とくに重視したのは、ドライバーの身体をしっかりと支えることですね」

フロアカーペットマットもModulo X専用のプレミアムタイプを標準装備。Modulo Xのロゴが記されたアルミ製エンブレムが装着される

そしてこのシート開発においても、担当スタッフ自身がステアリングを握り、走行時のサポート性を体感したという。

「シートだけでなくサスペンションの開発を手伝うなど、自分の担当以外の部分も見ることで、視野が広がりました。その結果、単体でホールド性を求めたシートではなく、Modulo Xの求める、クルマの挙動にマッチしたスポーツシートに仕上げることができました」

そう語る自信作のシートは、表皮でしっかりと乗員を支えるため、ドライバーだけでなく助手席の乗員もスポーツシートのメリットを体感できるし、疲労軽減にもつながる。後席については形状は変わっていないが、表皮の変更によるホールド性や乗り心地の変化について様々な検討がなされたという。

「意のままのハンドリングを実現するため、ショックアブソーバーの減衰力は高めていますが、だからといって乗り心地を犠牲にするようなことは考えていません。空力によってロール軸をピシッとさせ、また接地性を高め、しっかりストロークさせることで、穏やかで上質な挙動を目指しました」

今回のボディカラーは、イメージカラーであるプラチナホワイト・パールや定番ともいえるクリスタルブラック・パールに加え、プレミアムクリスタルレッド・メタリックとプレミアムクリスタルブルー・メタリックが用意されている。

「どの色も似合っていると思いますが、鮮やかなレッドとブルーはエアロパーツの形状をさらに引き立てていると感じています。この形状は走り込みながら磨き上げていったものですが、『実効空力』を鍛えることで初期のデザインよりもシャープになっていったことは記憶に残ります。まさしく機能が生んだ美しさと自信を持っていうことができます」

すでに受注は開始されているが、実際の市場からの反応はどうなのだろうか。

「レッドとブルーの人気は予想より高くなっています。また、4WDを初設定したことで東北・北海道からのオーダーが増えているという感触があります。開発テーマとしては3秒で一目惚れすると定義しましたが、実際の仕上がりは、見た瞬間、座った瞬間に惚れ込むことのできる一台に仕上がりました。ぜひとも機会を見つけて触れていただきたいと思っています」

 (text:Shinya YAMAMOTO 山本晋也、編集:Kentaro SABASHI 佐橋健太郎) 

ホンダアクセス
http://www.honda.co.jp/ACCESS/