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【JMS23】スペシャリティクーペの元祖、プレリュードが復活! 実体は次世代スポーツHVクーペだが、日本導入は微妙!?

ホンダは、東京ビッグサイトにて開催された「JAPAN MOBILITY SHOW 2023(ジャパン モビリティ ショー)」において『Honda Dream Loop』というコンセプトを掲げてブースを出展。新型PRELUDE Concept(プレリュード コンセプト)を発表した。

2023年10月25日、一般公開に先駆けて行われたプレスデーにおいて、ホンダはメディア向けのカンファレンスを実施。本田技研工業 代表執行役社長 三部敏宏氏が登壇し、モーターサイクルに始まり、四輪車や航空機など、様々なモビリティの実現や発展に寄与してきた同社の歴史を振り返った。

そしてステージ上に展示された自動運転車両の「クルーズ・オリジン」、アクリル樹脂素材を再利用した「SUSTAINA-C Concept(サステナ・シーコンセプト)」の2台を紹介した。

さらにステージ下で黒いベールに覆われた1台に目をやり、「皆さんがホンダに期待しているものが、もうひとつあると思っています。それは、スポーツモデルです」という言葉とともに、プレリュード コンセプトが披露された。

22年ぶりに復活した「プレリュード」の車名。その歴史を振り返る

「プレリュード」という車名の懐かしさに、会場へ訪れていたメディアもざわついたが、あらためてその歴史を振り返っておこう。

初代プレリュードが登場したのは、1978年のこと。独立したトランクを持つ、伸びやかなフォルムが印象的な2+2レイアウトのFFクーペで、当時のアコードと同じ1.8リッターエンジンを搭載していた。シビックより大人なイメージのモデルとして、日本国内だけでなく北米ほか海外市場でも販売された。

リトラクタブルヘッドライトを備えた2代目モデルは大人気となった

その後、1982年には2代目モデルへとフルモデルチェンジ。電動開閉式のリトラクタブル・ヘッドライトが与えられたことで、FFとしては異例なほどボンネットの低いスタイリングを実現した。

スポーツカーのように精悍なフォルムではあるが乗り味はそこまで硬派でなく、むしろ助手席に乗った人とふたりの時間を優雅に楽しむためのクルマ。そんな「スペシャリティカー」というプレリュードの個性は、この2代目モデル以降ますます明確になっていく。

3代目モデルは大人気となった2代目プレリュードのコンセプトを継承して登場した

1987年には3代目モデルが登場。外観は2代目のスタイリングをキープコンセプトで進化させたものだが、脚まわりは4輪ダブルウィッシュボーン式サスペンションへと進化。さらに、前輪の操舵に合わせて後輪にも操舵アングルを与える機械式4WSシステムが量産乗用車では世界で初めて搭載された。

この4輪ダブルウィッシュボーン式サスと4WSシステムは、2023年時点で最終型となっている5代目モデルまで受け継がれてゆく、プレリュードのコア技術となった。

ボディ幅が1765mmへと拡大され、初めて3ナンバーサイズとなった4代目プレリュード

その後は1991年に4代目モデル、1996年には5代目モデルへと進化を続けたものの、若年層のクルマの関心は徐々にステーションワゴンやミニバンへと移っていき、プレリュードは2001年に販売を終了する。

そして2023年10月、約22年ぶりにプレリュードの車名が表舞台へ復活することとなった。 

プレリュード最後のモデルとなった5世代目。SiR・Sスペックは2.2Lの排気量から220PSを発揮するH22Aを搭載

パワーユニットは2リッターe:HEVが有力、展示車両は左ハンドル

今回コンセプトモデルではあるものの、22年ぶりにプレリュードの車名が「復活」。このプレリュード コンセプトは、ホンダが次世代電動車両として開発している車両の1台だ。2022年4月に行われた「四輪電動ビジネス説明会」において、ホンダは次世代スペシャリティスポーツモデルの存在をアナウンスしていたが、このプレリュード コンセプトがその車両となる。

しかし同時に発表されたSUSTAINA-C Concept(サステナ・シーコンセプト)と見比べてみると、同じ「コンセプト」モデルとはいえ、2台のリアリティには大きな隔たりがある。

ちなみに展示されていた車両のウィンドウには濃いフィルムが貼られていたものの、車内を覗き込んでみるとステアリングの位置は左だった。

プレリュード コンセプトの車両諸元や運動性能といった具体的な数値についてはいっさい発表されていないが、実車を目の前にすると、このまま市販車両と言っても納得できそうな完成度だ。コンセプトモデルというより、生産型のプロトタイプに近い。

プレリュード コンセプトの詳細なスペックは未発表ではあるものの、よく目を凝らしてみると未来の新型プレリュードの立ち位置というか、目指している姿がなんとなく見えてくる。

ボディサイズは意外にコンパクトで、おそらく現行シビックと同じくらい。キャラクターラインの少ないシンプルな面構成と、流れるようなルーフラインが印象的だ。運転席とリアタイヤの位置関係からすると、プレリュードの伝統だった2+2レイアウトは継承されていそうだ。

リアのエンブレムは大文字と小文字を組み合わせた「Prelude」となっているのは4世代めモデルへのオマージュか

リアまわりはヘッドライトと同様に、真一文字状としたテールレンズが特徴的。バンパーの中央に車名エンブレムが備わり、その上からトランクが開くようになっている。

残念ながら今回は開けてみることは叶わなかったが、トランクリッドの形状を見るかぎり、ハッチバックではなく独立したラゲッジルームを備えるクーペであることは間違いなさそうだ。

そのトランクの上には、カーボン製のリアスポイラーが装着される。流麗なボディデザインを崩すことなく、さりげなく存在感をアピールする様子はいかにもスペシャリティクーペらしいところ。

ただスポイラーの左右幅はボディいっぱいとなっており、現状の形状だとトランクを開けた際にスポイラーの左右端が大きくはみ出ることとなるため、市販時にはなんらかの形状変更があるかもしれない。

パワーユニットについては、フロントノーズにはロアグリルが存在し、その奥にはラジエターらしき部品も見えることから、フルEVではなくハイブリッド(e:HEV)であることはほぼ確実。もうひとつのアイコンである「低いボンネット」という特徴が薄れているのは残念だが、新世代のプレリュードは、ハイブリッドユニットを搭載したスペシャリティクーペとして登場するだろう。

新型プレリュードは、北米仕様シビック ハイブリッドのクーペ版か

プレリュード コンセプトのホイールは10×2スポークデザインを採用した20インチ。その奥にはブレンボ製ブレーキキャリパーが装着されていた。

タイヤはコンチネンタル製スポーツコンタクト6で、サイズは前後とも同じ245/20ZR20となっていた。このことから駆動方式はFFであると見て間違いないだろう。

従来のプレリュードが搭載してきた4WSシステムは「プレシジョンオールホイールステア」へと進化・発展しているが、プレリュード コンセプトに搭載されているかは不明

そして展示車両が左ハンドルであることも、シビックとの関連性を感じさせる要素のひとつ。北米市場には、2024年モデルとして「シビック ハイブリッド(e:HEV)」が新たに導入されるが、新型プレリュードはシビック ハイブリッドとシャシーを共有する兄弟車だと予想する。

そう書くと「えっ、現行シビックにはすでにe:HEVが設定されているじゃん」と思う人がいるかもしれない。じつは世界戦略車であるシビックは、各市場ごとに異なるパワーユニットを搭載したモデルが販売されており、FL型シビックe:HEVは欧州市場および日本市場で販売されていたものの、これまで北米市場へは導入されていなかった。

満を持して北米市場に導入される2024年モデルのシビック ハイブリッドには、ハッチバックのほかセダンも設定されている。パワーユニットは、2リッター4気筒に2モーターを組み合わせた最新世代のe:HEVユニット。なお北米仕様は「e:HEV」ではなく「ハイブリッド」を名乗るのは、すでに販売中のCR-Vやアコードと同様だ。

ハッチバックはアメリカ・インディアナ州の工場で、セダンはカナダ・オンタリオ州の工場で2024年春から生産が開始される。

2023年モデルのシビック セダン。北米仕様のシビック ハイブリッドはセダンとハッチバックが用意される

この新型シビック ハイブリッドは、2024年モデルとして導入されることは発表されたものの、まだプロトタイプや生産車両の姿が披露されていない。おそらく2023年11月17日より開幕する『LAオートショー(通称ロサンゼルスショー)』において実車が展示されると思われるが、その際、シビック ハイブリッドのクーペ版としてプレリュード コンセプトを同時に発表するというのが、当初の予定だったのではないだろうか。

つまり新型プレリュードのメイン市場は北米市場であり、それを「なんらかの理由」のため、LAオートショーの約1ヶ月前となるジャパン モビリティ ショーに急遽持ち込んで発表した…というのが筆者の予想だ。

「市販に向けて開発を進めている」とは言うものの、日本市場とは限らない

『ホンダは、いつの時代もスポーティなクルマづくりに拘ってきました。プレリュードという車名は「前奏曲・先駆け」を意味しており、このプレリュード コンセプトは、本格的な電動化時代へ「操る喜び」を継承する、ホンダ不変のスポーツマインドを体現するモデルの先駆けとなります』

『プレリュード コンセプトは、どこまでも行きたくなる気持ちよさと、非日常のときめきを感じさせてくれる、スペシャリティスポーツモデルです。ホンダだからこそできる「操る喜び」を皆さまにお届けすべく、現在、鋭意開発を進めています。ぜひご期待ください』

プレスカンファレンスにおいて、本田技研工業 代表執行役社長 三部敏宏氏はプレリュード コンセプトをこのように語ったが、本当に市販予定はあるのだろうか? 会場ではそれなりの盛り上がりを見せていたものの、北米市場はともかく、日本国内におけるスペシャリティクーペの人気は決して高いとはいえない。

新型プレリュードが本当に販売されるとしたら、500万円級の2+2クーペとなるだろう

2023年現在、ホンダは日本国内に2ドア/3ドアのモデルをラインナップしていない。普通車でいうと、偶然にも同じハイブリッドスポーツであるCR-Zが最後だ。新型プレリュードの販売計画や時期については(当然ながら)明らかにされなかったが、ブースにいた関係者に話を伺うと、2024〜25年に市販化を「目標としている」という。

いっぽうでホンダ車の販売を行うホンダカーズ関係者によると、通常であれば中期販売計画として発売予定の車両が伝えられるが、プレリュードに相当するようなスペシャリティカーの存在は聞いたことがない、という話もある。

もし新型プレリュードが発売された場合、シビックe:HEVと車体を共有するスペシャリティカーであると考えると、シビックe:HEVの車両価格(398万800円)を超えるプレイスボードを掲げることは、まず間違いない。むしろシビック タイプRの車両価格(499万7300円)との兼ね合いに悩むところだろう。

かつて一世を風靡したスペシャリティクーペは、はたして日本市場に復活するのだろうか。もともと海外市場専用車として開発された新型プレリュードを、国内市場へ導入するかどうか判断するためにジャパン モビリティ ショーへ出展したのであれば、今回の反響が大きければ大きいほど実現の後押しになるはず。今後の展開に期待したい。

(text:Kentaro SABASHI 佐橋健太郎)