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【ホンダアクセス】純正アクセサリー「Modulo」が30周年! 新時代を牽引する湯沢峰司氏に訊く(後編)【実効空力】

――純正アクセサリーの役割というか、立ち位置が明確になったところで「Modulo」の乗り味というか世界観は、どのように感じられていましたか? 

湯沢:Moduloの世界観、私たちはフィロソフィと呼んでいますが、それは「四輪で舵を切る」そして「実効空力」ということです。ただどちらも数値で計測できるところではない。でも、人間にはハッキリと感じ取れる部分の乗り味です。しかしModuloを牽引していた玉村 誠さんも福田正剛さんも、こうだよと教えてくれるタイプじゃない。ふたりの背中を見て、言葉を聞いて、クルマの助手席に乗って自身で体感するしかないという感じでした」

――なんだか職人の世界のようです。

湯沢:まさにそんな感じです。はっきり言葉にして言われたわけではありませんが、身体で感じて覚えろと教わりました。もちろんテスト走行では様々な計測機器を車両に装着して数値化しますが、その数値には表れない感覚を大切にしろということだと理解しています。この速度域でこういう動きを感じるだろ、と。

――まさに受け継がれる伝統の味、ですね。

湯沢:とはいえModuloの世界観は、決して「こうでなきゃいけない」という限定的なものではありません。かつて玉村さんから福田さんへバトンが渡されたときも、そして先日まで一緒に仕事をしていた福田さんからも、Moduloの世界観に納まってさえいればユーザーには必ず伝わるし、そのなかで担当者それぞれの個性はあっていいと言われています。

――つまり『湯沢味』ですよね。コンパクトカーでもミニバンでも、SUVでも、Moduloとしての軸は大事にしつつ湯沢さんなりの個性は出していくと。

湯沢:もちろん時代にも則していかなければいけません。Moduloの核心となる部分は守りつつ、新しいことに挑戦する。実効空力は常に進化していますし、現在はシェブロン形状がもたらすエアロ効果に大きな可能性を感じているところです。もっともっと進化させていきたいですね。

――そしてModuloといえば、ホンダアクセス社内エンジニアの継承だけでなく、開発アドバイザーとして土屋圭市さんが長く参画されています。土屋さんの存在はやはり大きいですか?

湯沢:とても大きいと思います。ドライビングテクニックにおける引き出しが多いのは言うまでもないですが、そもそも圧倒的に経験値が大きいんです。「この人、乗ったことのないクルマってあるのかな?」と感じるくらい(笑) Modulo Xの開発においても、土屋さんの豊富な試乗経験などもあり、ベンチマークというほどではありませんが「目標とするクルマ像」みたいなものを具体的に感じることができましたね。

――土屋さんがModuloの開発に加わったのはいつごろからですか。

湯沢:4ドアのシビック タイプR(FD2型)用のスポーツサスペンション装着車に乗って頂いたのが最初なので、2006年ぐらいですね。当時は開発というより、セッティングのアドバイスをお願いしたという感じと記憶しています。

――5段階の減衰力調整機構付きサスペンションですね。現在でも多くのタイプRオーナーが装着されており、中古パーツの価格は高騰気味なくらい人気のアイテムです。

湯沢:ベース車両より明らかに乗り心地がいいのに、鈴鹿サーキットではベース車両より速かったのです。当時の私はサスペンション開発ではなかったのですが、傍らで見ていて驚きましたね。先ほどの話ではありませんが、なにも犠牲にせず、速さと快適性の両方を引き上げることができるんだと。私も乗ってみたら、きちんと「味」も感じられましたから。

――それから開発アドバイザーとして参画していくわけですね。土屋さんといえばレーシングドライバーであり「ドリキン」として知られていますが、純正アクセサリーの開発に関わるうえで視点の切り替えというか、軸足の置き方をどのように感じられていますか。

湯沢:私たちが仕事をご一緒させていただくときは、レーシングドライバーやドリフトキングという観点はまったくなく、純正アクセサリーの開発アドバイザーという立ち位置からいっさいブレない。そこが本当にすごいと思っています。

――コンプリートカーのModulo Xを開発していくうえで、土屋さんからの言葉で印象に残っているものはありますか?

湯沢:土屋さんは、常にお客さんの立場、目線で物事を見ていると感じます。Modulo Xの開発においては、鷹栖プルービンググラウンドや群馬サイクルスポーツセンターのような場所でも走行テストを重ねていますが、実際にはS660 Modulo Xはともかく、フリードやステップワゴンのModulo Xでタイムアタックをするオーナーさんはいないと思います。それでもあのような場所で走行テストを行うのは、飛び抜けたスピード領域であってもドライバーを裏切らないクルマを作りたいという想いからです。開発メンバー全員がそれを理解してはいますが、それでもクローズドコースを高い速度域で走行していると、つい速さを重視した方向に行ってしまいそうになるときがあります。

――開発メンバーの方々がエンジニアとしての強い拘りを抱いているからこそ、ついついユーザーさんの望むものと乖離が生まれてしまいそうになるのは、想像できる気がします。

湯沢:実際には、誰もがレーシングドライバーのような技量を持っているわけじゃないし、誰もがサーキットを走るわけじゃない。「俺たちが作りたいのはタイプRじゃない、Modulo Xなんだ」という土屋さんの言葉には、開発メンバーは皆ハッとしたと思います。Modulo Xが目指すところを見失わないという意味で、非常にバランス感覚が優れている人だと感じています。

――今後、湯沢さんが率いる新世代のModuloにおいても、土屋さんとのタッグというか関係性は、変わらずに続いていくということですね。「実効空力」をはじめとした純正アクセサリーのModuloはもちろん、Modulo Xシリーズの新型車発売にも期待したいです。

湯沢:ありがとうございます。2023年秋は「Modulo X 10周年記念オーナーズミーティング」、そして「BEAT&S660ミーティング」に参加し、とても多くのオーナーさんとお話しさせていただきました。自動車メーカーで開発に従事していると、お客様と直接コミュニケーションを図れる機会はそれほど多くないのですが、開発メンバー一同、励みになる言葉を多くいただきました。現時点で今後の展開について発表できることがなく、期待してお待ちくださいとしかお伝えできないのが心苦しいですが…。

――そのModulo X生誕10周年記念オーナーズミーティングでは、S660 Modulo Xの参加者がもっとも多かった。軽オープン2シーターという趣味性の高さもあり、もっとも「Modulo Xらしさ」が伝わりやすい存在かもしれませんね。

湯沢:S660 Modulo Xについては、新車発売と同時にリリースした純正アクセサリーを開発していたときから、コンプリートカーへの発展も想定していました。その後、正式にModulo Xの開発が決定したときは、開発メンバーでもとことんやろうという話になって、鷹栖プルービンググラウンドにも足繁く通いました。コンプリートカーとしての完成度を高めつつ、クルマの性格上チューニングを楽しむオーナーも多いだろうからと、あえてスピードリミッターをカットしてのテスト走行も行って開発しました。我々も「やりきった」という想いが強い1台なので、ぜひ末長く楽しんでいただきたいです。

――記念すべき年という部分でいうと、2024年はModuloブランドの生誕30周年でもあります。そしてちょっと気が早いですが、2025年にはS660が生誕10周年を迎える。これまでホンダアクセスでは、NSXやビート、S2000のアニバーサリー・イヤーに特別なアイテムをリリースしてきました。ModuloファンやS660オーナーは、今年からのホンダアクセスにきっと注目していると思います。

湯沢:私自身も期待しています。というと他人事のようですが、次代・次々代のModuloを担う世代には会社からの指示を待つのではなく、自ら動くことが成長に繋がると思うからです。そういう情熱を感じさせるメンバーはいます。だからこそ期待しています。「どうしてもやりたいんだ!」と手を挙げれば、必ず誰かが引っ張ってくれる。ホンダはそういう会社だよと囁いています。

(photo:Kiyoshi WADA 和田清志、text:Kentaro SABASHI 佐橋健太郎)

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