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【S-Formula】シビック タイプR用K20Cをスーパーフォーミュラ車両に搭載!最高出力600PSオーバーの究極チューン

ホンダのモータースポーツ活動を担当するホンダ・レーシング(HRC)は、シビック タイプRに搭載されているK20C型エンジンをベースにしたレース専用エンジン「HRC-K20C」を開発、スーパーフォーミュラ用SF19シャシーに搭載してのテスト走行に成功した。

FL5型シビック タイプRに搭載されるK20C型2リッター・ターボ

K20C型エンジンは、「世界最速FF」をコンセプトに掲げて開発された第三世代シビック タイプRを象徴するユニット。2015年に登場した先々代シビック タイプR[FK2]に初搭載されると、その後に先代モデル[FK8]、そして現行シビック タイプR[FL5]へと継承され、現在も製造されている。

シビック タイプRの兄弟車である、アキュラ・インテグラ タイプS

FK2の最高出力は310PS/6500rpmだったが、FK8では320PS、現行FL5型では最高出力330PS/6500rpmを発生。シビック タイプR以外では、北米市場にて販売されているアキュラ・インテグラ タイプSのみに搭載されているスペシャルユニットでもある。

HRC-K20Cは、このK20Cをベースに開発されたレース専用エンジン。HRCによると、一般道とは異なりサーキットならではの長時間のフルスロットル走行を前提とした耐久性の確保を目指して開発された。エンジンのスペックは4種類となっており、参戦を想定するカテゴリーのレギュレーションなどにより、300馬力台のSpec Aから600馬力クラスを狙ったSpec Dまで4種類が存在しているという。

2024年のパイクスピークを走ったインテグラ タイプS TCX。INDYCARやIMSA参戦歴のあるキャサリン・レッグがドライブ

この4つのスペックのうち、Spec Bは北米市場で販売されているDE5型アキュラ・インテグラ タイプSをベースとしたツーリングカー車両、インテグラ タイプS TCXに搭載されてTC AmericaのTCXクラスに5台が参戦。また2024年6月のパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライムにも参戦した。

HRC-K20Cのシリンダーブロックは、K20Cの量産品をベースに鋳造方法を工夫して強化したもの。このSpec Bは強化ピストン、コンロッド、オイルジェット、高強度ボルト、オイルバッフル、および前述の強化シリンダーを採用している以外は、市販車用K20Cエンジンと同じだという。

生産も市販車用K20Cと同様、アメリカ・オハイオ州のアンナエンジン工場にて製造される。

ホンダのスーパーフォーミュラ開発車両『白寅』のドライバーでもある塚越広大選手がステアリングを握った

そして今回、スーパーフォーミュラの2024年シーズン最終戦を目前に控えた11月7日、このHRC-K20Cのトップグレードである「Spec D」を搭載した車両の実走テストが三重県・鈴鹿サーキットで行われた。

HRC-K20Cのうちもっともハイパワーを絞り出すSpec Dは、市販車用K20Cの部品を流用しつつ、高出力化に必要な部分には補強を加え、ドライサンプ・ミッドシップマウントに対応。今回の走行テストに使用されたのは、スーパーフォーミュラの先代シャシーであるSF19で、当然ながらHRC-K20Cもタテ置きに搭載された。

ほぼシェイクダウンと思われるため、走行内容などは明らかにされていないが、HRC関係者によると「テスト走行に成功」したとのこと。

ちなみにSF19に搭載されるHR-417Eも、K20Cと同じく1995ccの直噴ターボ・ユニットで、最高出力は550PS以上。前述のように、HRC-K20Cのもっともハイパワーな仕様は600PSオーバーを想定しているわけだから、K20Cはレース専用エンジンのHR-417を上回るほどの潜在能力を秘めた名機といえるかもしれない!?

また今回、使用した燃料についても具体的なアナウンスはなかったが、HRCではスーパー耐久シリーズにCNF(カーボンニュートラルフューエル)を使用したシビック タイプRでST-Qクラスに参戦しているだけに、HRC-K20Cには次世代のレーシングエンジンとしても注目が高まる。

異なる馬力クラスの様々なレースカテゴリーに対応可能なHRC-K20Cは、高いポテンシャルと低コストを両立させるレース専用エンジンであり、HRCでは、今後一般販売の可能性を探っていくとのこと。

(text:Honda Style Web)